大陸軍 (フランス) 組織

大陸軍 (フランス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/18 13:06 UTC 版)

組織

大陸軍の成功の最も重要な要因のひとつは、その高度に優れた組織の柔軟性であった。全体をいくつかの軍団(通常5から7個)に分けられ、1個軍団は10,000名から50,000名、平均して20,000名から30,000名で構成された。これらの軍団(Corps d'Armée)はそれぞれに、下記のような各兵種と支援部隊を持つ連合型の小軍隊であった。単独でも作戦行動ができる一方で、軍団同士は1日の行程の内にあって互いに密接な協働行動を執れた。軍団はその戦力と課された任務の軽重によって、元帥、軍団将軍(Général en chef上将)または師団将軍Général de division中将)によって指揮された。

ナポレオンは彼の軍団の指揮官を大変信頼しており、彼の戦略目標の範囲内で行動し、協働してそれを達成するのであれば、通常は広い範囲で指揮官達に行動の自由を与えた。仮に指揮官達が失敗して彼を満足させることができなかった場合は、躊躇することなく叱責あるいは解任し、多くの場合彼自身がその軍団の指揮を執った。1800年ジャン・ヴィクトル・マリー・モロー将軍がライン方面軍を4個軍団に分けたのが軍団の始まりであった。これは一時的な分け方であり、1804年までにナポレオンが恒久的な組織とした。ナポレオンは個々の軍団に騎兵を設け、歩兵によって動きが鈍くならないよう素早い離合集散を図った。

軍団 - 師団 - 旅団 - 連隊 - 大隊 - 中隊

軍団は、1812年に騎兵予備集団が分割されて騎兵軍団ができたことから、従来の軍団は歩兵軍団と呼ばれるようになった。軍団(歩兵軍団)は通常「3個の歩兵師団+1個の軽騎兵師団+軍団砲兵」とされた。騎兵軍団は通常「1個の重騎兵師団+1個の軽騎兵師団」とされた。軍団砲兵は、1個徒歩砲兵中隊+1個騎馬砲兵中隊が標準だった。

歩兵師団(4000~6000名)は通常「3~6個の歩兵連隊+師団砲兵」とされた。騎兵師団は通常「2~4個の騎兵連隊+師団砲兵」とされた。歩兵師団砲兵は1個徒歩砲兵中隊、騎兵師団砲兵は1個騎馬砲兵中隊が標準だった。歩兵連隊は2~6個大隊とされた。騎兵連隊は1~4個大隊とされた。戦場での基本行動単位は大隊である。歩兵大隊は平均500名くらいで、騎兵大隊は平均150騎くらいだった。連隊は通常の大隊管理組織であり、旅団は戦場での大隊指揮組織であった。

旅団は、実質的には師団長配下の旅団長とその副官数名であり、旅団長は、予め割り当てられた連隊の各大隊の戦場指揮をまかされる役職だった。師団は0~3個の旅団を持った。例えば歩兵師団下連隊の全大隊は、戦場では左翼旅団と右翼旅団に編制されるなどした。旅団長が各大隊を動かす場合の連隊長は、自連隊の第1大隊を率いた。旅団を持たない師団では、連隊長が配下大隊を戦場指揮した。騎兵連隊の各大隊は、従軍時の消耗による人馬の数の変動が激しかったので、会戦時は騎兵旅団というカバー単位による再編成を必要とした。騎兵大隊は2個中隊だった。歩兵大隊は1807年まで9個中隊で、1808年から6個中隊になった。中隊は100名くらいと考えてよい。


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  19. ^ 青銅砲とされる場合もあるが、いわゆる青銅(の合金)に加え、真鍮(銅・亜鉛合金)、砲金(ガンメタル、銅・錫・亜鉛合金)製のものも含め青銅(ブロンズ)と呼ぶことがあるためである。
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  24. ^ 帝国元帥(Maréchal de l'Empire)は階級ではない。師団将軍で傑出していると認められた者の名誉称号であり、それに応じた高い給与と特権が与えられた。ナポレオン軍の最高階級は実際には師団将軍(仏:General de division)である。 Elting, John R.:"Swords Around A Throne.", page 124. Da Capo Press, 1997.
  25. ^ 各兵科最先任の将官に対する名誉称号(『華麗なるナポレオン軍の軍服 134頁、上級大将として記述。』 マール社 リシュアン・ルスロ著 辻元よしふみ、辻元玲子監修翻訳 2014年10月20日。)であり階級ではない。帝国元帥にもなった者を除いてはルイ・ボナパルト(Louis Bonaparte)、ジュノー(Jean Andoche Junot)、ディリエ(Louis Baraguey d'Hilliers)などが叙任された。
  26. ^ 軍団長としての地位であり階級ではない。1812年廃止。その後1814年に復活するも、1848年に再び廃止された。但し階級章(四つ星)自体は軍団長たる師団将軍(仏 : Général commandant de corps d'armée)のものとして使用された。 Général または General-in-chief 参照。
  27. ^ 旧体制及び1814~1848年は中将(Lieutenant-Général
  28. ^ アメリカ軍では少将が公式の最高位の階級であり、中将および大将は役職に付随する地位とされる。
  29. ^ 旧体制及び1814~1848年は陣地総監(=少将)(Maréchal de camp
  30. ^ 将軍付き幕僚としての地位であり階級ではない。大佐(Colonel)または中佐(Major)が任じられた。序列は少将(Général de brigade)と大佐(Colonel)の間とされる事が多かった。
  31. ^ 1793~1803年は半旅団長(Chef de brigade
  32. ^ Chef d'escadronは騎乗部隊(騎兵、騎乗砲兵、憲兵、砲車牽引および輜重)の大隊長
  33. ^ a b c 後者は騎乗部隊(騎兵、騎乗砲兵、憲兵、砲車牽引および輜重)の呼称
  34. ^ フランス軍の Caporal および Brigadier は、上等兵であることが多いが第一帝政では下士官であり、その後1818年までは下士官である。
  35. ^ Todd Fisher & Gregory Fremont-Barnes, The Napoleonic Wars: The Rise and Fall of an Empire. p. 36-54
  36. ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 54-74
  37. ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 76-92
  38. ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 200-209
  39. ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 113-144
  40. ^ Insects, Disease, and Military History: Destruction of the Grand Armee
  41. ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 145-171
  42. ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 271-287
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  44. ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 306-312





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