大陸軍 (フランス)
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工兵
騎兵、歩兵、砲兵に戦闘の脚光が及ぶ影で、軍隊にはさまざまなタイプの工兵がいた。
大陸軍の架橋工兵(Pontonniers)はナポレオンの軍隊維持機構の重要な役目を果たした。特に艀(はしけ)をつなぎ合わせた簡易橋梁を構築して水の障害物を越える際の貢献が大きい。架橋工兵の技術によって川を敵が予想していない意外な地点で渡って敵の虚を突いたり、あるいはモスクワからの撤退時のベレジナ川渡河では全滅の危機から自軍を救うことができた。
工兵が脚光を浴びることはなかったが、ナポレオンは架橋工兵の価値を明らかに認め、その軍隊に14個中隊を配備し、その指揮は輝かしい経歴を持つジャン・バプティスト・エーブレ工兵将軍に任せた。彼の道具や装置を使った訓練によって、素早く橋のさまざまな部品を造り、組み立てさらに後に再利用できるようになった。必要な資材、工具、部品は中隊の荷車で運ばれた。もし部品などが不足する場合は、即座に荷車に積んである鍛造機などの装置で製作された。1個工兵中隊で80杯のはしけの橋(長さは120mから150m)を7時間以下で組み立てた。これは今日の基準から見ても驚異的である。
橋梁に加えて、敵の防御施設に対応するための土木工兵(Sapeurs)の中隊もあった。橋梁技師よりは意図した役割に添って使われる頻度は少なかった。皇帝がアッコ包囲戦 (1799年)など初期の方面作戦の経験をもとに、固定された防御施設には正面から攻撃するよりもできれば回避し孤立化させた方がよいと考えるようになったため、土木工兵中隊は通常他の任務に回された。また、都市攻城戦でのトンネル掘りを専門に行う坑道工兵(Mineurs)の中隊もあった。
ジニーと呼ばれる異なったタイプの技師中隊が大隊や連隊内に作られた。ジニーとは大陸軍内部の通り言葉で技師を指していたが、元々の意味は今日でも使われる「言葉遊び」(jeu de mot)と願いことを受け入れて魔法の力で現実にしてくれる精霊(Genie)にも掛けていた。現在のフランス語で工兵が Génie militaire と呼ばれるのはこの名残と思われる。
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- ^ 青銅砲とされる場合もあるが、いわゆる青銅(銅と錫の合金)に加え、真鍮(銅・亜鉛合金)、砲金(ガンメタル、銅・錫・亜鉛合金)製のものも含め青銅(ブロンズ)と呼ぶことがあるためである。
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- ^ 帝国元帥(仏:Maréchal de l'Empire)は階級ではない。師団将軍で傑出していると認められた者の名誉称号であり、それに応じた高い給与と特権が与えられた。ナポレオン軍の最高階級は実際には師団将軍(仏:General de division)である。 Elting, John R.:"Swords Around A Throne.", page 124. Da Capo Press, 1997.
- ^ 各兵科最先任の将官に対する名誉称号(『華麗なるナポレオン軍の軍服 134頁、上級大将として記述。』 マール社 リシュアン・ルスロ著 辻元よしふみ、辻元玲子監修翻訳 2014年10月20日。)であり階級ではない。帝国元帥にもなった者を除いてはルイ・ボナパルト(Louis Bonaparte)、ジュノー(Jean Andoche Junot)、ディリエ(Louis Baraguey d'Hilliers)などが叙任された。
- ^ 軍団長としての地位であり階級ではない。1812年廃止。その後1814年に復活するも、1848年に再び廃止された。但し階級章(四つ星)自体は軍団長たる師団将軍(仏 : Général commandant de corps d'armée)のものとして使用された。 Général または General-in-chief 参照。
- ^ 旧体制及び1814~1848年は中将(仏:Lieutenant-Général)
- ^ アメリカ軍では少将が公式の最高位の階級であり、中将および大将は役職に付随する地位とされる。
- ^ 旧体制及び1814~1848年は陣地総監(=少将)(仏:Maréchal de camp)
- ^ 将軍付き幕僚としての地位であり階級ではない。大佐(仏:Colonel)または中佐(仏:Major)が任じられた。序列は少将(仏:Général de brigade)と大佐(仏:Colonel)の間とされる事が多かった。
- ^ 1793~1803年は半旅団長(仏:Chef de brigade)
- ^ Chef d'escadronは騎乗部隊(騎兵、騎乗砲兵、憲兵、砲車牽引および輜重)の大隊長
- ^ a b c 後者は騎乗部隊(騎兵、騎乗砲兵、憲兵、砲車牽引および輜重)の呼称
- ^ フランス軍の Caporal および Brigadier は、上等兵であることが多いが第一帝政では下士官であり、その後1818年までは下士官である。
- ^ Todd Fisher & Gregory Fremont-Barnes, The Napoleonic Wars: The Rise and Fall of an Empire. p. 36-54
- ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 54-74
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- ^ Insects, Disease, and Military History: Destruction of the Grand Armee
- ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 145-171
- ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 271-287
- ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 287-297
- ^ Fisher & Fremont-Barnes p. 306-312
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