同時履行の抗弁権 留置権との違い

同時履行の抗弁権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/26 17:08 UTC 版)

留置権との違い

同時履行の抗弁権に類似するものに留置権がある。留置権も同時履行の抗弁権と同様に公平を図るという原理に基づき、履行拒絶の権利を持つ。したがって、同じ場面で同時履行の抗弁権と留置権のどちらも主張し得る場合もある(その場合はいずれを主張しても同じ引換給付判決が得られる)。しかし、同時履行の抗弁権は債権法において認められる権利であるのに対し、留置権は物権法において認められる権利であり、両者ではその取扱いが異なる点も多い。以下に主要な相違点を挙げる。

  • 行使の原因
同時履行の抗弁権は、当該契約上の反対債権あるいはそれに準ずる債権のみに限られる。留置権は物に関して生ずれば契約に限定されない(事務管理不当利得不法行為に基づく債権であってもよい)。
  • 拒絶できる内容、権利の目的
同時履行の抗弁権は、債務の履行を拒絶するものであるから制限がない。留置権は物(動産不動産)の引渡しのみ拒絶できる。
  • 行使可能な相手方
同時履行の抗弁権は当該契約の相手方にのみ主張できる。留置権は全ての第三者に対して主張できる。
ただし同時履行の抗弁権も、債権譲渡で譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるとき、債務者は譲受人からの履行の請求を拒絶することが可能である(468条2項)。
  • 代担保の提供による消滅
同時履行の抗弁権は不可。留置権は可。
  • 不可分性
同時履行の抗弁権は給付が可分な場合には不履行部分に応じた抗弁権が存在することになる。留置権には常に不可分性がある。
  • 競売申立権
同時履行の抗弁権は不可。留置権は可(民事執行法195条)。

  1. ^ a b c d e f g 松尾弘『民法の体系 第6版』慶應義塾大学出版会、267頁。ISBN 978-4766422771
  2. ^ a b c d 松尾弘『民法の体系 第6版』慶應義塾大学出版会、268頁。ISBN 978-4766422771


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