古代ギリシア医学 古代ギリシアの医師

古代ギリシア医学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/09 05:25 UTC 版)

古代ギリシアの医師

古代ギリシアの医師たちは、病気を超自然的なもの、すなわち神々の不満や悪魔の憑依からもたらされるものとはみなしていなかった。「ギリシア人は経験的・合理的なアプローチに基づく医学の体系を発達させた。そのようにして彼らは、それまで以上に自然主義的な観察に恃み、それは実践的な試行錯誤の経験によって強化されていった。それとともに人間の身体的機能不全を魔術的・宗教的に正当化することを放棄した」[10]。しかしながら、場合によっては病気の責任は依然として患者に求められ、医師の役割は祈りや呪文や生贄によって神々と和解したり悪魔を祓ったりすることだった。

古代ギリシアの医療における女性

もともと古代ギリシアでは、女性が医師になることは許されていなかったが、女性医師が医療を行ったという記録はいくつか残っている。そのひとつが女性医師アグノディケー英語版 (Ἀγνοδίκη, Agnodikē) の話である。アグノディケーの物語の妥当性は学者によって議論されてきたが、伝説によるとアグノディケーは古代ギリシアの女性で、医学を学び医師になるために男性に変装していたという。彼女はそのために髪を切り男装していた[11]

アグノディケーは男性のふりをしつつ、当時の医師で婦人科医であったヘロピロスに師事し、みずから医療を行うのに必要な技術を学ぶことができた。信じられているところによれば、アグノディケーは患者に安心感を与えるため、女性の患者には自分が女性であることを証明するために自分の体をさらけ出すこともあったという。最終的に彼女は、女性でありながら医療行為を行っていたことが発覚し、裁判にかけられることとなった。そこでふたたび彼女は、医療を行う女性としての自己の存在を証明するために、法廷で自分をさらけ出した。その結果は、とりわけ女性が医学を習得することが可能であるということに反して、彼女は法律を犯しているものと判断されたのだった。しかしながら、彼女にかかった女性患者たちはアグノディケーを擁護し、男性医師にはできなかった点で助けてくれたと証言した。アグノディケーは無罪放免となり、その後まもなくアテナイでは法律が改正された。この裁判以後、自由人の女性は誰でも医療行為を行うことが法的に許可されるようになった[12]。判決と法改正の後、アグノディケーは、アテナイで誰からも尊敬される医師となった。

アグノディケーは古代ギリシアにおける女性医師としてもっとも有名だが、他にも医師をしていた者たちはいたようである。しかしながら彼女らに関する情報はほとんどない。概して古代ギリシアの女性は教育を受けることを許されなかったので、多くの女性が医師になることができたとは考えがたい。ただし、裕福な家の娘など、教育を受けることができる例外はあったと考えられている[13]

アグノディケーのほかにも古代ギリシアには、正式な医師としての訓練を受けてはいないが、相当程度の医学的知識を持っていた女性の治療者たちがいた。これらの女性は、患者を助けるために薬草その他の自然的治療法を使用していた。彼女たちは現在の助産師や看護師と同様に、出産その他の女性の健康問題に関して補助するために呼ばれることが多かった。彼女たちはその時代に正式に医師として認められてはいなかったが、古代ギリシアの健康管理の機構において重要な役割を果たした[13]

全体としては、古代ギリシアの医療における女性の役割は限定的であった。しかしながらアグノディケーのように、障壁を突破して尊敬される医師になることのできた若干の例外もいた。古代ギリシアのほかの女性医師たちについてはほとんど情報がないが、他にも医療行為を行っていた者がいた可能性はある。加えて、古代ギリシアの健康管理機構において、たとえ正式に医師として認められていなかったとしても、女性の治療者たちは重要な役割を担っていた。







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