元 (数学) 元 (数学)の概要

元 (数学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/28 22:42 UTC 版)

ジュゼッペ・ペアノの導入した記法[2]に従えば、対象 x が集合 E の元であることを、 「xE 」と書き表す[注釈 1]

このとき、対象 x が集合 E属する(ぞくする、: membership)、あるいは集合 E は対象 x含む[注釈 2]とも言う。また集合を空間、元をと言うこともある[6]

概要

「属する」という二項関係は、数学的対象と集合(あるいは一般にクラス)との間に定まる非対称な関係帰属関係)である。

外延性の公理により、集合はそれに属する全ての数学的対象を指定することで特徴づけられる

通常用いられる集合論 ZF においては基礎の公理が述べるところによって帰属関係は整礎、すなわち任意の集合は自身を元として含むことはない(帰属関係は反対称関係である)。

しかし、基礎の公理の代わりに反基礎の公理英語版を置く他の集合論英語版ではそのような制約を受けない超集合英語版が存在し得る。

帰属関係は推移的でない[注釈 3]。これは集合の包含関係がそうであることと対照的である。

素朴な説明

集合の歴史的な定義は、Cantor (1895, p. 481)[7] によれば

集合 M とは我々の直観や思考からくる対象(これを M の元と言う)の集まりの、その全体のことを言う

と述べられる。

このある種で漠然とした定義においても、直観的な集合論を展開することはできる。

例えば、集合 M = {1, 2, 3} に対し、1, 2, 3 は各々 M の元である。ここで、「元であること」と「部分集合であること」を混同してはならない。先の例であれば {1, 2}{3} などは M の部分集合だが M の元ではない[注釈 4]


  1. ^ これは「である」に相当するギリシャ語の動詞 ἐστί に現れる最初の文字 ε に由来するが[3] とは字形が異なる[4]
  2. ^ 「含む」「含まれる」などの語は集合の包含関係などにも用いるため紛らわしい(赤摂也は部分集合として含む、含まれるという代わりに「包む」「包まれる」とすることを提唱した[5])。包含関係は帰属関係を用いて 「集合 A が集合 B に含まれる」 :⇔A の任意の元が B の元として属す」 と定めることができる。
  3. ^ が、特定の集合からなる部分類の上に限れば推移的となり得る。よく知られる例としては順序数全体の成す類がある。
  4. ^ 少なくとも、 {1, 2} ≠ 1, {1, 2} ≠ 2, {1, 2} ≠ 3, {3} ≠ 1, {3} ≠ 2, {3} ≠ 3 などが証明できる。
  1. ^ 髙木貞治『数の概念』岩波書店、1949年8月20日。 
  2. ^ Hans Freudenthal, « Notation mathématique », Dictionnaire des mathématiques – fondements, probabilités, applications, Encyclopædia Universalis et Albin Michel, Paris 1998.
  3. ^ 山下正男『論理学史』岩波書店岩波全書〉、1983年、102頁。 
  4. ^ Toth, Gabor (2021). Elements of Mathematics. Springer. ISBN 978-3-030-75051-0. https://books.google.com/books?id=bJhEEAAAQBAJ&pg=PA2 
  5. ^ 松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年。ISBN 978-4000054249 
  6. ^ L. シュヴァルツ 著、齋藤正彦 訳『解析学 1(集合・位相)』東京図書、1970年、1頁。全国書誌番号:69022664 
  7. ^ (de) Georg Cantor, Beiträge zur Begründung der transfiniten Mengenlehre, Leipzig, Teubner,‎ 1894-1895, page 481 [Lire en ligne sur Gallica (page consultée le 14 avril 2009)]
  8. ^ Voir René Cori および Daniel Lascar, Logique mathématique II. Fonctions récursives, théorème de Gödel, théorie des ensembles, théorie des modèles [détail des éditions], chapitre 7, p. 113-114 notamment
  9. ^ (en) Felix Hausdorff, Set theory, AMS Chelsea Publishing,‎ 1957 (rééd. 2000) (1937 pour l'édition allemande) (ISBN 0821838350),
  10. ^ Ces trois suggestions sont proposées par (en) Yiannis Moschovakis, Notes on set theory, Springer,‎ (ISBN 9780387287232) p. 29.


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