中量軌道輸送システム 中量軌道輸送システムの概要

中量軌道輸送システム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/18 11:22 UTC 版)

バンコク・スカイトレイン は 、シーメンス社の中量軌道輸送車両を使用している

案内軌条に従ってゴムタイヤで走行する方式や、鉄軌条鉄車輪による方式がある。無人運転(自動運転)方式も少なくない。また都市以外では大規模空港内の移動機関としても設けられる。

都市鉄道(メトロ)に比べて、建設費を抑えたシステムを目指すことが多い。ただし路面電車(トラム)、バス・ラピッド・トランジットなどに比べ、建設費は高い。

概要

ドックランズ・ライト・レイルウェイ は中量軌道輸送システムの一例とされる

鉄道の誕生以来、都市内の輸送システムにはメトロ(高架鉄道地下鉄)とトラム(路面電車)とが開発されたが、それらの短所を補う、また輸送量がそれらの中間にあたる輸送システムが新たに誕生した。それを指し示す総称が中量軌道輸送システムである。 新線を建設するにあたり、想定乗降客数に対して従来のメトロでは輸送力が供給過剰となり、トラムでは不足することが予想された際、中量軌道輸送システムが選択肢となる。従来の鉄道路線空港連絡鉄道支線にもしばしば用いられる。

定義

中量軌道輸送システムの定義は曖昧であり、世界的に統一されてはいない。それどころか、同一国の中でも見解が異なることもある。

例えば台湾の交通省は同システムを『1時間・1方向当たり6,000 - 20,000人の輸送力を持つもの』としている[1] のに対し、台北市政府捷運工程局は『1時間・1方向当たり20,000 - 30,000人』であるとしている[2]。(同単位あたり30,000人以上の輸送力を保つものが従来の鉄道[3]、12,000 - 18,000人の輸送力を持つものがライトレールとされる[3]。)そのため、台湾ではライトレールの中文訳である「軽軌」はゴムタイヤ式の新交通システム、短編成の鉄輪軌道式、モノレールを総称したものとなっている。

もっとも、輸送容量は同システムを定義するうえで用いられうる要素のうち、ほんの一例でしかない。他に定義要素としてしばしば用いられるのが、車両のタイプである。従来のメトロに比べても車体が小柄で定員が少なく、1編成あたりの車両数も2両 - 6両と少ない。それによりプラットホーム有効長・有効幅を小さくできるのでが小規模で済み、鉄輪の代わりにゴムタイヤがしばしば使用されるため、騒音が少なく急カーブや急勾配にも対応できるなど、建設用地の取得が難しい都市部に置いてもフレキシブルな敷設が可能である。

また、一般の鉄道はラッシュ時に10分以上の間隔での運行が可能である。それ以外の理由で一般の鉄道と定義される(立体交差・専用軌道で走行するなど)ものでも、単線区間があるなどして15分間隔など運行頻度が低くなり、結果輸送容量が小さいことによって、ライトメトロや中量軌道輸送システムに位置づけた方が適当な例もある。[要出典]

名称

コペンハーゲン地下鉄

中量軌道輸送システムを指す英単語 "Medium-capacity rail transport system" は、万国で通じるものではない。

ライトメトロ

同システムを表す際よく用いられる語としては『ライトメトロ』 (Light Metro) があり、ヨーロッパやインド[4][5]韓国[6]など世界中で使われている。非営利団体Light Rail Transit Association(LRTA)も、同カテゴリをライトメトロと呼んでいる。

ただしインドや韓国などでは『ライトメトロ』と『ライトレール』とを同義として使用している例も見られる。

フランスではVéhicule Automatique Léger(VAL)という言葉が使用されている(厳密な定義は異なるが、おおよそ同じものを指すと考えて差し支えない)[7][† 1][† 2]。これは、1時間1方向当たり最大30,000人の輸送力を持つ。香港馬鞍山線も同システムに近いものであるが、高い人口密度ゆえ、こちらの輸送力は従来のメトロに近い32,000人である[8]American Public Transportation Association(APTA)では同種のシステムを "Intermediate rail" と名づけている[9]


注釈

  1. ^ マトラ社よりVALシステムの開発を引き継いだシーメンス社のウェブサイトにおいて、VALシステムは「世界初の全自動運転ライトメトロ」と紹介されていた。
  2. ^ ちなみにライトメトロをフランス語に直訳した "Métro léger" は、同国ではライトレールを指すので注意されたい
  3. ^ なおこれらは、日本において狭義の新交通システム (AGT: Automated Guideway Transit) と定義されているものとほぼ同一である。
  4. ^ 山万ユーカリが丘線は、同サイトではモノレールにカテゴライズされている。また、西武山口線については記述がない。

出典

  1. ^ Transportation term definition” (Chinese). Ministry of Transportation and Communications (MOTC). 2008年6月30日閲覧。
  2. ^ Comparison between high capacity and medium capacity systems” (Chinese). Taiwan Department of Rapid Transit Systems, TCG. 2013年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年6月30日閲覧。
  3. ^ a b Great Britain: Parliament: House of Commons: Transport Committee, ed (2005). Integrated Transport: The Future of Light Rail and Modern Trams in the United Kingdom. The Stationery Office. p. 216. https://books.google.co.jp/books?id=cVfnWO9pC8oC&dq=30,000+PPHPD&q=216&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false 2014年2月22日閲覧。 
  4. ^ Kerala opts for light metro, not monorail”. business-standard.com (2014年10月24日). 2014年11月29日閲覧。
  5. ^ BJP promises light metro in Bhopal and Indore”. dnaindia.com (2014年11月21日). 2014年11月29日閲覧。
  6. ^ a b Korean city opens automatic light metro”. Rail Journal.com. 2014年11月24日閲覧。
  7. ^ シーメンス社"VAL208"のパンフレット
  8. ^ MTR train frequencies of railway lines in different periods, number of cars on each train, train carrying capacity, train loading rates and number of seats” (pdf). MTR. 2014年8月23日閲覧。
  9. ^ a b APTA Ridership Report - Q2 2013 Report”. American Public Transportation Association (APTA) (via: http://www.apta.com/resources/statistics/Pages/RidershipArchives.aspx ). p. 32 (2013年8月). 2013年9月26日閲覧。
  10. ^ Michael Taplin (2013年3月). “Index of Countries + Totals for each Country”. Light Rail Transit Association (LRTA). 2014年11月28日閲覧。[リンク切れ]
  11. ^ Toulouse”. urbanrail.net (2004年). 2014年11月29日閲覧。
  12. ^ Rapid MetroRail Gurgaon opens”. Railway Gazette (2013年11月15日). 2014年12月28日閲覧。
  13. ^ Simon Crompton-Reid (2013年11月18日). “Rapid MetroRail Gurgaon launched”. Total Rail. 2014年12月28日閲覧。
  14. ^ Gurgaon automated metro”. 2014年12月28日閲覧。
  15. ^ a b Metros: Keeping pace with 21st century cities”. uitp.org. International Association of Public Transport (フランス語: L’Union internationale des transports publics (UITP)). 2014年8月7日閲覧。
  16. ^ Minimetrò, oltre 10 mila persone al giorno nel 2013. Ecco il piano triennale della società, (2011-10-28), http://www.umbria24.it/minimetro-10-mila-persone-giorno-2013-ecco-piano-triennale-societa/66231.html 2014年11月30日閲覧。 
  17. ^ About Us - Background”. Metro Rail Transit. 2014年5月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月8日閲覧。
  18. ^ Busan”. urbanrail.net (2007年). 2014年11月30日閲覧。
  19. ^ Busan-Ginhae Light Rail Transit Archived 2012年3月28日, at the Wayback Machine.
  20. ^ Uijeongbu Light Rail Transit, South Korea”. Railway-technology.com. 2014年2月22日閲覧。
  21. ^ “Malaga metro problems - before work's even started”. EuroweeklyNews. (2014年3月27日). https://www.euroweeklynews.com/news/costa-del-sol/item/119588-malaga-metro-problems-before-work-s-even-started 2014年7月30日閲覧。 
  22. ^ Puente, Fernando (30 July 2014). “Malaga light metro network opens”. International Railway Journal. http://www.railjournal.com/index.php/metros/malaga-light-metro-network-opens.html?channel=525 2014年11月28日閲覧。. 
  23. ^ Mallorca Rail Development, Spain”. Railway-Technology.com. 2014年5月16日閲覧。
  24. ^ Robert Schwandl (2012年). “Valencia”. UrbanRail.net. 2014年8月7日閲覧。
  25. ^ Robert Schwandl (2013年1月4日). “Valencia”. UrbanRail.net. 2014年8月7日閲覧。
  26. ^ TEKNİK ÖZELLİKLER” [TECHNICAL SPECIFICATIONS] (Turkish). Ankaray LRT. 2014年5月24日閲覧。
  27. ^ American Public Transportation Association - A MULTIMODAL TOUR OF THE DELAWARE VALLEY”. American Public Transportation Association (APTA) (2013年6月1日). 2013年11月10日閲覧。
  28. ^ LRTAのホームページ
  29. ^ 新しい公共交通システム調査 報告書”. 京都市. p. 6-7. 2014年12月4日閲覧。
  30. ^ 環境的視点から見た自動車交通代替交通機関の選定1”. 日本大学都市計画研究室. p. 15-16 (2006年12月). 2014年12月4日閲覧。
  31. ^ LRT 整備前の中心市街地における回遊行動調査* A Questionnaire Survey of Stroll Activity in Central City before Development of Light Rail Transit*”. 大阪産業大学. p. 1 (2006年5月18日). 2014年12月4日閲覧。
  32. ^ 菅原 操 (2011年7月). “日本の中量軌道システムの海外進出”. 一般法人建設コンサルタンツ協会. p. 28. 2014年12月5日閲覧。


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