不死鳥と雉鳩 解釈

不死鳥と雉鳩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/24 05:34 UTC 版)

解釈

理想の結婚に加えて、この詩はルネサンスネオプラトニズムの文脈の、真実と美の関係、あるいは充実した愛の説明と見ることができる[3]。シェイクスピアは『百鳥の集い(Parlement of Foules)』(ジェフリー・チョーサー作)に関する昔の文学を引きながら、たくさんの他の鳥たちを紹介し、嘆くことしかできない理想の敗北として、恋人たちの死を描写する。

研究者たちはこれまで、恋人たちが具体的に歴史的人物の誰と関連づけられるのかを試みてきた。

John and Ursula Salusbury

チェスターが詩をSir John Salusburyとその妻Ursula Stanleyに献呈していることから、シェイクスピアのものを含むこの本のすべての詩もこの夫婦を讃えているという説である。Salusburyはエリザベス1世の廷臣だった人物で、ウェールズの有力な一族(Salusbury family)のメンバーである。しかしこの説は、夫婦には10人の子供がいて、詩は夫婦の関係を子供のいない「結婚の貞節」として言及していることを考えると疑問である。この見かけ上の「誤り」はジョン・マーストンの詩にも言われている。ちなみに、Salusbury説を最初に詳細に提起したのはカールトン・ブラウンで1913年のことだった[4]

エリザベス1世とエセックス伯

チェスターとシェイクスピアの詩はエリザベス1世と第2代エセックス伯ロバート・デヴァルーの関係を表しているという説は、1878年にA・B・グロッサートによって最初に提起され、1965年にウィリアム・マチェットが手直しした[5]。エリザベス1世とエセックス伯が恋愛関係にあったことについて否定する人の多くも、この本が出版された1601年のエセックス伯の謀反と処刑が、この詩やこの本に収められた他の詩の曖昧な象徴の中に隠されている可能性があることは否定していない[6]

カトリック殉教者

この詩は実はカトリックの追悼頌徳文だとする説もある。この説はシェイクスピアが実はカトリックのシンパだったとする説と結びついている。クレア・アスキス(Clare Asquith)は、この詩はイエズス会の殉教者ロバート・サウスウェル(Robert Southwell)とヘンリー・ウォルポール(Henry Walpole)を追悼しているのではないかと指摘した[7]

一方、ジョン・フィニスとパトリック・マーティンは、1601年にタイバーンで処刑されたカトリック教徒アン・ライン(Anne Line)についての詩だと主張した[8]。アン・ラインには若い夫ロジャーがいたが、カトリック行動主義のためロジャーは追放され、大陸で亡くなった。後にアンは非合法のミサを開き、聖職者を匿った罪で有罪判決を受け、処刑された。シェイクスピアの夫婦同様、ライン夫妻にも子供がいなかった[9]

ヒルデガルド・ハンマーシュミット=フンメルはエセックス伯とその友人第3代サウサンプトン伯爵ヘンリー・リズリー説を提起した。二人は大逆裁判の初日に死刑を宣告されたが、サンサンプトン伯は後に赦された。

こうした解釈に従うと、この詩は個人となったカップルに対する想像上のカトリックのレクイエムを含む寓話と言える。ハンマーシュミット=フンメルは、詩に登場する他の鳥たちのモデルとして、アンソニー・シャーリー(Anthony Shirley)、フランシス・ベーコンロバート・セシルジェームズ1世、そしてエリザベス1世の名を挙げている[10]。フィニスとマーティンも、「大声でさえずる鳥(bird of loudest lay)」は作曲家ウィリアム・バードで、カラスはヘンリー・ガーネット神父(Henry Garnet)だとした。




  1. ^ Oxford Anthology of Literature of Renaissance England, J. Holander, F. Kermode (eds), OUP, 1973, p.424.
  2. ^ Cheney, Patrick Gerard The Cambridge Companion to Shakespeare's Poetry, Cambridge University Press, 2007, p117
  3. ^ Zezmer, D.M., Guide to Shakespeare, 1976, New York, p.88
  4. ^ Poems by Sir John Salusbury and Robert Chester by Carleton Brown.
  5. ^ "The Phoenix and the Turtle: Shakespeare's Poem and Chester's Loues Martyr" by William H. Matchett; reviewed by Thomas P. Harrison, Modern Philology, Vol. 64, No. 2 (Nov., 1966), pp. 155-157.
  6. ^ John Finnis and Patrick Martin, "Another turn for the Turtle", The Times, April 18, 2003
  7. ^ Asquith, Clare, Shakespeare Newsletter, 50, 2001.
  8. ^ Times Literary Supplement, April 18, 2003, p.12-14
  9. ^ BBC page: Shakespeare and Anne Line
  10. ^ Hildegard Hammerschmidt-Hummel, William Shakespeare—Seine Zeit—Sein Leben—Sein Werk (Mainz: von Zabern, 2003


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