ヴェリーキー・クニャージ 統治者としての称号

ヴェリーキー・クニャージ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/06 06:14 UTC 版)

統治者としての称号

称号の出現と統廃合

キエフ・ルーシ期の初期においては、各地(公国)の統治者はクニャージの称号を冠し、ヴェリーキー・クニャージの称号は、他のルーシ諸公を従属下に置くキエフの統治者(キエフ大公キエフ大公国の君主)に対してのみ用いられる称号だった[1]。しかし12世紀にはキエフ大公国の分裂が進み、ウラジーミル大公(ウラジーミル大公国)、ガーリチ・ヴォルィーニ大公(ガーリチ・ヴォルィーニ大公国)、リャザン大公(リャザン大公国)等がヴェリーキー・クニャージを称した。これらの大公国の成立期には、依然キエフ大公位は存在していたが、各大公国はキエフ大公に従属しない独立した政権であり、内部には自国に従属する分領公国を抱えていた。なお、これらのルーシの大公は全てリューリク朝の流れを汲む。

13世紀の半ばのモンゴルのルーシ侵攻を経てキエフ大公国は滅亡し、キエフ大公位は廃された。キプチャク平原にジョチ・ウルスが成立すると、その支配の及んだルーシのヴェリーキー・クニャージは、他のクニャージと同じく、ヤルルィクに従ってジョチ・ウルスのハーンのために貢税を徴収する立場におかれた。また、この時期の、ウラジーミル大公位をはじめとするいくつかの大公位は、その称号を得るのにジョチ・ウルスの承認が必要だった。この時期のヴェリーキー・クニャージには、ウラジーミル大公、リャザン大公、スモレンスク大公スモレンスク大公国)などがある。また、西方からリトアニアが拡張し、ルーシ西部から南部を支配下に置いた。このリトアニア・ゲディミナス朝の政権の長はリトアニア大公を名乗った(リトアニア大公国)。

14世紀のはじめから、ウラジーミル大公位に就いた者の多くは、自身の称号にフセヤ・ルーシ(全ルーシ(ru))の称号も用いるようになった。14世紀半ばのルーシ北東部には、ウラジーミル大公、ニジニ・ノヴゴロド・スーズダリ大公(ニジニ・ノヴゴロド・スーズダリ大公国(ru))、トヴェリ大公(トヴェリ大公国)が、14世紀から15世紀にかけてはヤロスラヴリ大公(ヤロスラヴリ大公国)や、リャザン大公国から分離したプロンスク大公プロンスク大公国)が存在した。また、ウラジーミル大公位は、モスクワ大公モスクワ大公国)が名目上有する称号となった。

最終的には、16世紀のはじめまでにルーシの諸公国はモスクワ大公国とリトアニア大公国によって統合され、ヴェリーキー・クニャージの称号は、モスクワ大公とリトアニア大公のみが有する称号となった。

16世紀以降

ロシアにおける変遷

1547年、モスクワ大公イヴァン4世(イヴァン雷帝)は、他のクニャージに対してモスクワの統治者の権威を高める象徴として、ツァーリの称号を正式に採用した(ロシア・ツァーリ国[1]1721年にはピョートル1世(ピョートル大帝)がインペラートル(ru)(皇帝)の称号を採用した(帝政ロシア)。ただしヴェリーキー・クニャージの称号は引き続き使用された。これらロシアのツァーリやインペラートルの完全な称号は、その支配領域を列挙したものであり、例えば、「…カザンアストラハンシベリアのツァーリ、スモレンスクトヴェリ、ヴャトカ(ru)とその他の地のヴェリーキー・クニャージ[注 1]」というようなものであった。

リトアニアにおける変遷

リトアニア大公はリトアニア大公国の長の冠する称号であり、14世紀から16世紀にかけて用いられた[1]1569年ルブリン合同により、リトアニア大公国はポーランド王国との同君連合制を採用したため、リトアニア大公はポーランド王が兼ねる称号となった[1]。なお、元来は血縁関係に基づいて相続されていたが、1573年以降は選挙によって相続されるようになった。

フィンランドにおける変遷

1581年より、スウェーデン王がフィンランド大公の称号を作成した。その後、1809年フィンランド大公国は帝政ロシアとの同君連合国家となったため、フィンランド大公位はロシア皇帝が兼ねる称号となった。


注釈

  1. ^ ロシア語表記:…царь казанский, астраханский и сибирский, великий князь смоленский, тверской, вятский и иных земель.
  2. ^ 「皇室典範」はロシア語: Учреждении об императорской фамилииの意訳による。

出典

  1. ^ a b c d Великий князь // ソビエト大百科事典


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