ロシア語アルファベット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 01:49 UTC 版)
外来音の扱い
ロシア語は歴史的に他言語から音を借用することがあったため、現在のロシア語では使用されていない音を扱った様々な慣習が存在する。例として、ロシア語アルファベットには[h]の音はないが、英語やドイツ語からの借用語にはこの音が含まれており(特に固有名詞に多い)、日常的に使用される単語にこの音が含まれている。表記は年代によって異なり、比較的早く取り入れられたгаллюцинация [gəlʲutsɨˈnatsɨjə] (hallucination) といった単語ではhの音に ⟨г⟩ を当て/g/と発音するが、近年になって使用されるようになった単語、例えばхобби [ˈxobʲɪ] (hobby) では⟨х⟩を用い、/x/と発音する[9]。
似たような例として、元の言語では[θ]で発音していた単語を借用語として取り入れる際、Тельма (Thelma) のように/t(ʲ)/)で発音するが、Фёдор (Theodore) や Матве́й (Matthew) のように早期に入ってきた単語に対しては/f(ʲ)/や/v(ʲ)/の音で発音している。
また、借用語には一定の傾向がある。例として、フランス語やドイツ語からの借用語に関しては、硬口蓋子音や軟口蓋子音は/u/の前で弱く発音する。例えば、ドイツ語のKüchelbeckerはロシア語ではКюхельбе́кер [kʲʉxʲɪlˈbɛkʲɛr]となる[10]。
数記法
数記法で用いられる単語は古代ギリシアの数記法と似ており、⟨ѕ⟩はディガンマ、⟨ч⟩はコッパ、⟨ц⟩はサンピという名前で使用されていた。このシステムは1708年に廃止されたが、教会スラヴ語では現在も使用されている。
ダイアクリティカルマーク
ロシア語のスペルには多くのヨーロッパで使われているダイアクリティカルマークはあまり用いられていない。本来の意味での唯一のダイアクリティカルマークはスペイン語でも用いられているような、母音に強勢の記号を付加するアキュート・アクセント ⟨◌́⟩ (ロシア語: знак ударения、強勢記号)である。ロシア語の単語の強勢はしばしばラテン文字使用言語で見られる強勢の位置とは異なり、ダイアクリティカルマークは特殊な用途にのみ使用されている。辞書や児童書、外国人ロシア語修得者のための教本では、ミニマル・ペアは強勢によってのみ区別されている(例: за́мок 城 vs. замо́к 錠前、му́ка 苦しみ・試練 vs. мука́ 小麦粉 など)。稀に、一般的でない外来語の強勢を置く箇所を示すために使用されたり、詩の音韻に合わせるため通常とは異なる位置に強勢を置く場合などに用いられている。
⟨ё⟩は⟨е⟩と近縁関係にあり、ロシア語の表記では区別しないこともあるが、ウムラウトのような上部の記号は他のロシア語アルファベットでは用いられていない。この文字に関しては、外来語を除き常に強勢が置かれるため、強勢記号はつかない。
⟨ё⟩の場合とは異なり、⟨й⟩ は⟨и⟩とは全く異なる文字であり、母音ではなく、ダイアクリティカルマークを付加されて生まれた文字でもない。
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- ^ 北緯五十度 No. 3 日露国境標の北面京都大学貴重資料デジタルアーカイブ、2022年1月14日閲覧
- ^ живете Толковый словарь русского языка Ушакова(ドミトリー・ウシュコフのロシア語辞典、; еとёの違いについても解説している。 cf.: ёлка).
- ^ мыслете, Толковый словарь русского языка Ушаковаより。(ドミトリー・ウシュコフのロシア語辞典)
- ^ ФЭБ
- ^ Benson (1960:271)
- ^ “Spelling rules”. webhome.auburn.edu. 2021年8月19日閲覧。
- ^ Vasmer (1979); ロシア語のмирの語源は露英オンライン辞書を参照。
- ^ Smirnovskiy (1915:4)
- ^ Dunn & Khairov (2009:17-18)
- ^ Halle (1959:73)
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