ユニバーサルデザイン
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海のユニバーサルデザイン
海水浴場は障がい者や高齢者の方が自らが訪れ、海水浴を楽しめる場所ではなかった。ビーチマット(アクセスマット)と呼ばれる砂浜に設置することで車椅子ユーザーやベビーカーユーザーも砂浜を通行できるマットや水中でも適度に浮くことができる水陸両用車椅子を活用することで海のユニバーサルデザイン化、海のバリアフリー化を推進する。障がい者専用駐車場・専用更衣室・バリアフリートイレを行政側と協力して設置。社会の高齢化や海水浴利用者が減少する中、環境NPO/NGOの国際環境教育基金(FEE)が「厳しい基準を満たした砂浜、ヨットハーバー、持続可能な船観光事業」に対して贈るブルーフラッグビーチ認証とともに海岸のイメージを向上する取り組みとして評価されている。須磨海水浴場を中心に広がるユニバーサルビーチプロジェクトは2019年国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)賞を受賞し、動きは全国に広がってきている。須磨海海水浴場は、2023年の『北半球ブルーフラッグ認証におけるベストプラクティス賞』で世界51か国、5,036か所のビーチ・マリーナ・観光船舶の中から世界2位に選ばれた。
ユニバーサルデザインへの批判や誤解
ユニバーサルデザインという言葉は、1997年のグッドデザイン賞(Gマーク)において「ユニバーサルデザイン賞」が設置されたのを契機に、日本国内において使われるようになった。
グッドデザイン賞において審査委員長を務めた川崎和男は、「ハートビル法、ノーマライゼーション、バリアフリーなどの呼称は、少数派といわれてきた領域を、デザインの対象にしているようだが、実は、デザインそのものの本質を語り直しただけにすぎない。デザインの本質を浮かび上がらせるという点においては、確かに行政から市場経済に対して、一般的な認識を促すことができた。しかし、流行語となったことで、以降、現在(注:2003年ごろ)に至るまで、その本質は見失われてしまった。[11]」と日本国内におけるユニバーサルデザインの状況を批判している。
アメリカでユニバーサルデザインが誕生した社会的背景として、公民権運動の流れから施行されたADA(障害を持つアメリカ人法)という法律の存在がある。建築家であり教育者であるロナルド・メイスは、この法律の限界を踏まえたうえで、あらゆる人が快適に暮らすことができるデザインとしてユニバーサルデザインを提唱した。一方、傷痍軍人や障害者といった人々の自立と雇用を促進し、納税者へと変えることによって低コストな社会を実現して国力低下を防ぎたいアメリカの思惑とも合致したことが、アメリカ社会においてユニバーサルデザインが受け入れられていく土壌ともなった。
また、川崎和男は「彼(ロナルド・メイス)による7原則論が基本と考えられているが、それは米国中心の考え方にすぎない。日本では、1989年の世界デザイン会議で、NASAのデザイナーであった、故マイケル・カリルが初めて提唱している。元々は、WHOの国際障害者年(1980年)のための、メイスンのレポート「バリアフリーをめざして」(1970年)で登場した言葉といわれているが、一方では、カリルによる、先進国家特有の消費経済主義に偏った訴訟社会批判の意味を持った言葉であり、メイスにも影響を与えたと私は考えている。[11]」と、ユニバーサルデザインが生まれた背景について解説している。
バウハウス以来、デザインは人々の暮らしをある種の「規格」にあてはめることによって、合理主義・機能主義的で、大量生産を前提とした工業化社会と芸術のあり方を示し、自由で豊かな生活を実現してきた。反面、デザイン(とその思想を前提とした社会)は人間の持つ多様性を容認せず、規格(モジュール)に縛りつけてしまうという逆説的かつ重大な欠陥を抱えることになった。このことは、「自分の体型に合った服を既成品に見つけることが難しい」という日常的な体験に置き換えて考えると理解しやすい。こういったデザインの理想主義的な側面は、ユニバーサルデザインにおける「誰もが使いやすい」という実現不可能な幻想へとつながっている。このことを踏まえ、川崎和男は日本におけるユニバーサルデザインの問題点を次のように指摘する。
「日本では、高齢化社会を迎えるにあたって、商業的・行政的に最もふさわしい言葉として重宝されている。「誰もが使いやすいモノやコトのデザイン」という定義が一般化してしまったことは、この言葉の本質を訴求するうえでは、大きな誤用であったと指摘しておきたい。(中略)『誰もが使えるモノ』などあるわけがなく、高齢者や幼児、障害者すべてに対するデザインが、いわゆるユニバーサルデザインそのものの本質において、デザインの理想主義の確信を強調させた意味を持っているだけである。[11]」川崎和男は、「必要なのは、この流行語を、『ヒューマン・センタード・デザイン』という言葉による再定義によって、その本質をもっと訴求することである」と述べている。
なお、このようなユニバーサルデザインへの誤解、すなわち一つのものが全員に使えるデザイン、および障害者向けのデザインという誤った理解が、日本のプロダクトデザイナーの間に普及してしまったために、社会全体を、子どもからシニア、外国人や女性、左利きなど、多様な人が不便に感じない社会を作り出すというユニバーサルデザインの思想は、日本では浸透しきれていない。
また、ユニバーサルデザインという言葉の誤用によりに誤解を生じた例もある。例えばユニバーサルスプーンという名称で流通している製品は、高齢者の介護現場で使われることを意識して作られたものもあり、これが必ずしも障害者全般に使いやすいとは言えない状況である。このような、誤用から来る誤解を払拭することは容易ではない。
ユニバーサルデザインに関連する概念や用語
理論や手法
関係する用語
- カラーユニバーサルデザイン
- ユニバーサルサウンドデザイン
- 国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)
- ユニバーサルビーチ
資格等
注釈
出典
- ^ a b Ron Mace (1985). “Universal Design: Barrier Free Environments forEveryone”. Designers West 33(1): 147-152.
- ^ “The Center for Universal Design - Universal Design Principles”. projects.ncsu.edu. 2020年7月4日閲覧。
- ^ a b “行方市、全国初 UDフォント一体導入 行政・教育、文書活用に”. 茨城新聞 (2019年3月20日). 2019年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月15日閲覧。
- ^ あれ、つま先しか届かない! 地下鉄の新型車両、その座席に異論 「立ち上がりやすさ」と「座りやすさ」の両立を神戸新聞NEXT 2021年5月22日
- ^ 障がい者制度改革推進会議 ヒアリング項目に対する意見書 第20回(H22.9.27)
- ^ “長寿社会対応住宅設計指針”. www.mlit.go.jp. 建設省. 2020年7月4日閲覧。
- ^ “移動等円滑化の促進に関する基本方針”. 国土交通省. 2022年7月6日閲覧。
- ^ “オリンピック・パラリンピックを見据えたバリアフリー化の推進に関する調査研究(空港から競技会場までのシームレスな移動の実現に向けた検討)”. 国土交通省. 2020年7月4日閲覧。
- ^ “公共交通機関等における障害者等への対応に係る職員教育の充実に関する調査研究」平成30年3月”. 国土交通省総合政策局安心生活政策課. 2020年7月4日閲覧。
- ^ 障害者の権利に関する条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方に関する意見書https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1298937.htm
- ^ a b c “Kazuo KAWASAKI”. www.kazuokawasaki.jp. 2018年8月27日閲覧。
ユニバーサルデザインと同じ種類の言葉
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