メリーランド植民地 概要

メリーランド植民地

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/06 05:46 UTC 版)

概要

メリーランド植民地は、新世界でイギリス人カトリック教徒の避難地を創りたいと願った初代ボルティモア男爵ジョージ・カルバートの領主植民地として始まった[1]。彼は当初、ニューファンドランド島の東部(アバロン半島)に入植地を築き、迫害されるカトリック教徒を入植させようとした。1623年には勅許を得て植民地にアヴァロン領と名付け、1625年には功績を讃えられ初代ボルティモア男爵に任ぜられた。しかしニューファンドランドは冬は寒い上に年中強風が吹きつける厳しい土地であり、ジョージも1629年にはアヴァロンを放棄せざるを得なくなった。彼は南の地への移転を模索することになり、その移転先として後にメリーランドとなる場所が選ばれた。ジョージはメリーランドに対する勅許を認められる前に没し、息子でありやはりカトリックであった第2代ボルティモア男爵カシラス・カルバート(セシル)1632年に勅許を得た。

こうした経緯から、イギリスの植民地の中では信教の自由について先駆け的な位置付けだった。しかし初期はイングランド国教会ピューリタン、カトリックおよびクエーカーの間での宗教的闘争が日常茶飯事となり、ピューリタンの反乱が一時的に植民地を支配したこともあった。イギリスの名誉革命の後では、ジョン・クードがプロテスタントの反乱を率い、ボルティモア卿のメリーランドにおける権力を奪った。クードの政府は不人気であり、イングランドウィリアム3世もクード自身も王室が指名した総督を置こうと考えた。結局はライオネル・コプリーが総督となって1694年のその死まで治め、その後をフランシス・ニコルソンが引き継いだ[2]。植民地は第5代ボルティモア男爵チャールズ・カルバートがプロテスタントであることを公に誓約したときに、ボルティモア家に戻された。

南に位置するバージニア植民地と初期には競合もあったが、その後はバージニア植民地と同じような方向で発展した。初期の開拓地や人口はチェサピーク湾に注ぐ川などの水系周辺に集まる傾向があった。バージニア植民地と同様にその経済は直ぐにヨーロッパに販売するタバコの農園を中心とするようになった。タバコを栽培するために安い労働力を必要とし、また後にタバコの価格が崩壊したときに発展した混合農業経済でも労働力が必要だったので、年季奉公が急速に拡大し、後にはアフリカ人の強制移民と奴隷化に繋がっていった。

植民地時代後期では、南部や東部はタバコ経済が続いていたが、革命が近付くにつれて、北部や中部は徐々に小麦の生産地となっていった。このことで内陸のフレデリックのような農業の町や主要港湾市ボルティモアの発展を促した。メリーランド植民地はアメリカ独立に繋がる出来事に積極的に関わり、通信委員会の設立やボストン茶会事件で起こった出来事に類似するチェスタータウン茶会事件を起こすなど、ニューイングランドと同じ道を歩いた。


  1. ^ 世界の歴史21, p23
  2. ^ Events that Changed America Through the Seventeenth Century By John E. Findling, Frank W. Thackeray, pp. 133-134.
  3. ^ Sparks, Jared (1846). The Library of American Biography: George Calvert, the first Lord Baltimore. Boston: Charles C. Little and James Brown. pp. 16-. https://books.google.co.jp/books?id=RBsNAAAAIAAJ&pg=PR3&dq=Leonard+Calvert&redir_esc=y&hl=ja#PPA16,M1 
  4. ^ Maryland State Manual
  5. ^ Alan Taylor, American Colonies (New York: Viking, 2001), p.136; John Mack Faragher, ed., The Encyclopedia of Colonial and Revolutionary America (New York: Facts on File, 1990), p.254.
  6. ^ John Mack Faragher, ed., The Encyclopedia of Colonial and Revolutionary America (New York: Facts on File, 1990), p.257





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