マクドネル・ダグラス MD-11
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付記
事故
MD-11は第四世代ジェット旅客機(アドテク機)の中で最も事故発生率が高かった。実際、同世代のエアバスA330、エアバスA340やボーイング777、イリューシン96に比べると墜落や全損事故の確率が多く、しかもそのうち操縦ミスが原因の事故が4件をしめている。また巡航中に乱高下する重大インシデントも発生していることから操縦系統が敏感すぎることが原因であったといわれている。操縦特性の項目でも触れているように、同等機に比べてMD-11は「操縦が難しい」機体という意見もある[16]。
全損事故
2016年現在、MD-11の全損事故は10件発生している。そのうちフェデックス・エクスプレスの事故だけでも3件を占めており、いずれも着陸時の事故である。また、機内火災1件以外の9件はいずれも離着陸時に発生しており、うち3件は横転している。
- 1997年7月31日:ニューアーク国際空港に着陸しようとしたフェデックス・エクスプレス14便(N611FE)が不安定になり、着地の後、横転して炎上、機体は全損したが搭乗していた5名は救助された。詳細は「フェデックス14便着陸失敗事故」を参照
- 1998年9月2日:大西洋を飛行していたスイス航空111便(HB-IWF)が、機内天井における機内エンターテインメント設備の不適切な電気配線のために出火、緊急着陸の途中に操縦不能となりニューファンドランド島沖に墜落し乗員乗客229名全員が死亡した。詳細は「スイス航空111便墜落事故」を参照
- 1999年4月15日:中華人民共和国の上海から韓国のソウルに向けて離陸した大韓航空6316便(HL7373)が、指示された飛行高度を誤って認識し、機長が急降下させた。降下率が高すぎたため回復できず上海郊外の住宅地に墜落し、乗員3名と地上にいた5名が死亡した。詳細は「大韓航空6316便墜落事故」を参照
- 1999年8月22日:台風の暴風雨のなか香港国際空港へ着陸しようとしたチャイナエアライン(中華航空)642便(B-150)が、不適切な操縦のため強風に煽られ着陸時に横転して地上に激突し爆発炎上した。火はすぐに消し止められたが、乗客3名が死亡した。詳細は「チャイナエアライン642便着陸失敗事故」を参照
- 1999年10月17日:上海浦東国際空港を出発しフィリピンのスービック・ベイ国際空港に着陸しようとしたフェデックス87便(N581FE)が滑走路で静止することが出来ず、オーバーランし海に突っ込んで大破し水没した。幸い死者は無かった。詳細は「フェデックス87便オーバーラン事故」を参照
- 2009年3月23日:中華人民共和国の広州白雲国際空港発、成田国際空港行きフェデックス80便(N526FE)が、成田国際空港A滑走路に着陸しようとした際、滑走路上で2度のバウンド後、左に横転して転覆、大破・炎上し滑走路脇へ停止し乗員2名全員が死亡した。同空港内における開港以来初の全損及び死亡事故となった。詳細は「フェデックス80便着陸失敗事故」を参照
- 2009年11月28日:上海浦東国際空港からキルギス行きジンバブエのアヴィエント・アヴィエーションの貨物便が離陸に失敗し爆発炎上、乗員7名中3人が死亡し1人が重傷、3人が軽傷を負った。同空港内における開港以来初の全損及び死亡事故となった。
- 2010年7月27日:フランクフルト空港からリヤド、シャールジャ経由香港国際空港行きルフトハンザ・カーゴ8460便(D-ALCQ)が最初の経由地であるリヤドのキング・ハーリド国際空港で着陸に失敗し、機体が真っ二つに折れて炎上した。乗員2名は軽傷だった。詳細は「ルフトハンザ・カーゴ8460便着陸失敗事故」を参照
- 2012年10月13日:マイアミ国際空港発ヴィラコッポス国際空港行きのセンチュリオン・エアカーゴ425便が着陸した際、左側の後輪・エンジン・主翼を損傷したが、乗員3名に怪我はなかった。
- 2016年6月6日:仁川国際空港発テッド・スティーブンス・アンカレッジ国際空港行きのUPS航空機(N277UP、元日本航空JA8587「ノグチゲラ」)が離陸する際、車輪とそのドラッグブレースが破損し、後者が機体に衝突したことでブレーキの油圧システムを損傷させ、機体を滑走路から逸脱させた[21]。
その他の事故
ほかにも墜落には至らなかったが、巡航中に不安定となって死傷者を出した事故も発生している。
- 1993年4月6日、上海からロサンゼルスに向かっていた中国東方航空583便(B-2171)が、太平洋上空を飛行中、乗組員が前縁フラップのレバーに誤って触れ、フラップが前方に稼動したため機体は上下に揺れ、下降と上昇を何度か繰り返した後、5000フィートまで高度を落とした。この乱高下事故で2名の乗客が死亡、149名の乗客と7名の乗組員がケガをした。そのうち乗客1名が両脚不随に、客室乗務員1名が頭に重傷を負った。事故による機体外部の損傷はなかったが、客室内は大きな損傷を受けた。なお、この事件を題材にアメリカ合衆国の小説家マイケル・クライトンは、『エアフレーム -機体-』(日本語版:早川書房)を発表[注釈 2]している。
- 1997年6月8日、香港から名古屋に向かっていた日本航空706便(JA8580)が、着陸降下中であった志摩半島上空で突如乱高下し、複数の乗員乗客が負傷した。負傷者のうちの乗員1名が1年8ヵ月後に事故による昏睡状態から回復することなく死亡した。運輸省航空事故調査委員会(当時)は「機長の不適切な操縦が事故を招いた」としたが、後の刑事裁判では「事故機特有の操縦システムの不具合が原因である」として機長は無罪になった。そのため現在でも事故原因をめぐり争いがある(日本航空MD11機乱高下事故)。
主要諸元表
MD-11 | MD-11F | MD-11C | MD-11ER | |
---|---|---|---|---|
乗客数(1クラス) | 410 | - | - | - |
乗客数(2クラス) | 323 | - | 204 | - |
最大離陸重量 | 602,555 lb (273,314 kg) | 630,500 lb (285,990 kg) | 620,350 lb (283,700 kg) | 630,500 lb (285,990 kg) |
航続距離 | 12,633 km | 7,242 km | 12,392 km | 13,408 km |
就航マッハ数 | 0.87 (約1050km/h) | |||
全長 | 61.21 m (200 ft 10 in) | |||
翼幅 | 51.66 m (169 ft 6 in) | |||
全高 | 17.60 m (57 ft 9 in) | |||
エンジン | P&W PW4460 ターボファンエンジン 267 kN (60,000 lbf) × 3、またはP&W PW4462 ターボファンエンジン 276 kN (62,000 lbf) × 3、またはGE CF6-80C2D1F ターボファンエンジン 274 kN (61,500 lbf) × 3 |
注釈
- ^ ビジネスジェット機では、フランス製のダッソー ファルコン 900およびダッソー ファルコン 7Xが現在でも生産されている
- ^ フィクションであるため、サスペンス仕立てになっているうえに、機種名もノートンN22となっているが、死者2名と壊滅的な客室破損を被っているなど、実際の事故と被害状況は酷似している。
出典
- ^ a b c 『月刊エアライン』2001年2月号 p65
- ^ a b c d e f g h i j イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p69
- ^ a b c イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p70
- ^ a b 『月刊エアライン』2001年2月号 p66
- ^ a b c d e f イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p72
- ^ a b c d e f g h イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p73
- ^ a b c d e f g h i 『月刊エアライン』2001年2月号 p67
- ^ a b 『月刊エアライン』2001年2月号 p69
- ^ a b c d e 『月刊エアライン』2001年2月号 p70
- ^ a b イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p71
- ^ a b c d e 『月刊エアライン』2001年2月号 p52
- ^ 『月刊エアライン』2001年2月号 p63
- ^ 『月刊エアライン』2001年2月号 p44
- ^ a b c d e 『月刊エアライン』2001年2月号 p45
- ^ a b 『月刊エアライン』2001年2月号 p68
- ^ a b 「着陸失敗のMD11型機、海外でも横転事故…難しい操縦性」『読売新聞』、2009年3月24日。2023年3月1日閲覧。オリジナルの2009年3月26日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b c 『月刊エアライン』2001年2月号 p53
- ^ a b c d e イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p74
- ^ a b c d e イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p75
- ^ a b 特別企画JALスペシャル・マーキング・シップス - 世界のエアライン4(ワールドフォトプレス 1994年)
- ^ “ASN Aircraft accident McDonnell Douglas MD-11F N277UP”. aviation-safety.net. 2021年8月22日閲覧。
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