マクドネル・ダグラス MD-11 付記

マクドネル・ダグラス MD-11

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/03 22:26 UTC 版)

付記

事故

MD-11は第四世代ジェット旅客機(アドテク機)の中で最も事故発生率が高かった。実際、同世代のエアバスA330エアバスA340ボーイング777イリューシン96に比べると墜落や全損事故の確率が多く、しかもそのうち操縦ミスが原因の事故が4件をしめている。また巡航中に乱高下する重大インシデントも発生していることから操縦系統が敏感すぎることが原因であったといわれている。操縦特性の項目でも触れているように、同等機に比べてMD-11は「操縦が難しい」機体という意見もある[16]

全損事故

フェデックス・エクスプレスのMD-11F

2016年現在、MD-11の全損事故は10件発生している。そのうちフェデックス・エクスプレスの事故だけでも3件を占めており、いずれも着陸時の事故である。また、機内火災1件以外の9件はいずれも離着陸時に発生しており、うち3件は横転している。

  • 2009年11月28日:上海浦東国際空港からキルギス行きジンバブエのアヴィエント・アヴィエーションの貨物便が離陸に失敗し爆発炎上、乗員7名中3人が死亡し1人が重傷、3人が軽傷を負った。同空港内における開港以来初の全損及び死亡事故となった。

その他の事故

ほかにも墜落には至らなかったが、巡航中に不安定となって死傷者を出した事故も発生している。

  • 1993年4月6日、上海からロサンゼルスに向かっていた中国東方航空583便(B-2171)が、太平洋上空を飛行中、乗組員が前縁フラップのレバーに誤って触れ、フラップが前方に稼動したため機体は上下に揺れ、下降と上昇を何度か繰り返した後、5000フィートまで高度を落とした。この乱高下事故で2名の乗客が死亡、149名の乗客と7名の乗組員がケガをした。そのうち乗客1名が両脚不随に、客室乗務員1名が頭に重傷を負った。事故による機体外部の損傷はなかったが、客室内は大きな損傷を受けた。なお、この事件を題材にアメリカ合衆国の小説家マイケル・クライトンは、『エアフレーム -機体-』(日本語版:早川書房)を発表[注釈 2]している。
  • 1997年6月8日、香港から名古屋に向かっていた日本航空706便(JA8580)が、着陸降下中であった志摩半島上空で突如乱高下し、複数の乗員乗客が負傷した。負傷者のうちの乗員1名が1年8ヵ月後に事故による昏睡状態から回復することなく死亡した。運輸省航空事故調査委員会(当時)は「機長の不適切な操縦が事故を招いた」としたが、後の刑事裁判では「事故機特有の操縦システムの不具合が原因である」として機長は無罪になった。そのため現在でも事故原因をめぐり争いがある(日本航空MD11機乱高下事故)。

主要諸元表

MD-11 MD-11F MD-11C MD-11ER
乗客数(1クラス) 410 - - -
乗客数(2クラス) 323 - 204 -
最大離陸重量 602,555 lb (273,314 kg) 630,500 lb (285,990 kg) 620,350 lb (283,700 kg) 630,500 lb (285,990 kg)
航続距離 12,633 km 7,242 km 12,392 km 13,408 km
就航マッハ数 0.87 (約1050km/h)
全長 61.21 m (200 ft 10 in)
翼幅 51.66 m (169 ft 6 in)
全高 17.60 m (57 ft 9 in)
エンジン P&W PW4460 ターボファンエンジン 267 kN (60,000 lbf) × 3、またはP&W PW4462 ターボファンエンジン 276 kN (62,000 lbf) × 3、またはGE CF6-80C2D1F ターボファンエンジン 274 kN (61,500 lbf) × 3

注釈

  1. ^ ビジネスジェット機では、フランス製のダッソー ファルコン 900およびダッソー ファルコン 7Xが現在でも生産されている
  2. ^ フィクションであるため、サスペンス仕立てになっているうえに、機種名もノートンN22となっているが、死者2名と壊滅的な客室破損を被っているなど、実際の事故と被害状況は酷似している。

出典

  1. ^ a b c 『月刊エアライン』2001年2月号 p65
  2. ^ a b c d e f g h i j イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p69
  3. ^ a b c イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p70
  4. ^ a b 『月刊エアライン』2001年2月号 p66
  5. ^ a b c d e f イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p72
  6. ^ a b c d e f g h イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p73
  7. ^ a b c d e f g h i 『月刊エアライン』2001年2月号 p67
  8. ^ a b 『月刊エアライン』2001年2月号 p69
  9. ^ a b c d e 『月刊エアライン』2001年2月号 p70
  10. ^ a b イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p71
  11. ^ a b c d e 『月刊エアライン』2001年2月号 p52
  12. ^ 『月刊エアライン』2001年2月号 p63
  13. ^ 『月刊エアライン』2001年2月号 p44
  14. ^ a b c d e 『月刊エアライン』2001年2月号 p45
  15. ^ a b 『月刊エアライン』2001年2月号 p68
  16. ^ a b 着陸失敗のMD11型機、海外でも横転事故…難しい操縦性」『読売新聞』、2009年3月24日。2023年3月1日閲覧。オリジナルの2009年3月26日時点におけるアーカイブ。
  17. ^ a b c 『月刊エアライン』2001年2月号 p53
  18. ^ a b c d e イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p74
  19. ^ a b c d e イカロス出版『旅客機型式シリーズ1 トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD-11 & L-1011』p75
  20. ^ a b 特別企画JALスペシャル・マーキング・シップス - 世界のエアライン4(ワールドフォトプレス 1994年)
  21. ^ ASN Aircraft accident McDonnell Douglas MD-11F N277UP”. aviation-safety.net. 2021年8月22日閲覧。





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