ブルークリスマス 映画化の経緯

ブルークリスマス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/30 01:00 UTC 版)

映画化の経緯

倉本聰のオリジナルシナリオは、UFOと地球人類の遭遇そのものよりも、それによってもたらされる変化を異物として排除しようとする国家の謀略に重点を置いた政治ドラマである。その謀略は、最終的には軍事力による青い血の人間根絶で達成されるが、その過程として倉本は、放送メディアを利用した政治的プロパガンダ執拗しつように描く。

倉本のシナリオは製作の前年に『キネマ旬報』に掲載されて、それを当時東宝映像の社長だった田中友幸が目に留めたことが製作の契機になっている。田中は東宝特撮映画のプロデューサーであると同時に、『マタンゴ』(1963年)の頃にはSF作家を招いた企画会議を開催するなど大のSFマニアとしても知られる人物で、そうした性格が東宝のお家芸である特撮とは縁遠い倉本の脚本を「SFとして面白ければ」として受け入れる英断につながった。

岡本喜八の起用は長年コンビを組んできた田中の要望によるものだったが、岡本自身UFOとの遭遇を常に夢見ているような性格だったという。岡本は映画の公開に併せて出版されたシナリオ本の序文で、1977年のクリスマス・イブに倉本の脚本を思いがけない「プレゼント」として喜んで受け取ったことを述懐している。また、即座にカメラマンを手配してクリスマスの実景を撮りまくった[注釈 3]。しかし「脚本の改変一切不可」という倉本の要望には岡本も相当難色を示したという。岡本は倉本の脚本を「電話帳のように分厚く、世界各地でロケ撮影をしなきゃいけない、莫大な予算と労力がかかる脚本」であり、一時は映画よりもテレビドラマでやるべきと不平をもらしたこともあった。しかし、倉本と協議した結果、アメリカ大統領国務長官が青い血の人間の処理を画策するホワイトハウスのシーンと、暴走族が特殊部隊に襲撃される北海道のシーンをカットすることで、岡本は映画を完成させる自信を得ることとなった。脚本を一言一句変えてはならないという倉本の言葉に従ってこれらのシーンを実際に撮影し、編集時にカットしたのは岡本の意地であった。なお、一般には仲代達矢主演の第一部が岡本タッチであり、第二部の勝野洋竹下景子のラブストーリーが倉本タッチと言われているが、むしろ後者の方に岡本タッチが如実に現われていると本人は語っている。


注釈

  1. ^ 書籍『ゴジラ画報』では、「1時間55分」と記述している[1]
  2. ^ 書籍『ゴジラ大全集』では、「SFの衣を被った文芸作品」と評している[5]
  3. ^ 翌年クリスマス前公開の場合は実景撮影は不可能なため。
  4. ^ 劇中では「原子力空母ミッドウェイ」と呼称されているが、現実の同艦は通常動力艦である。
  5. ^ 石上は買いの立場から必死でフォローしている。
  6. ^ 前年にピンク・レディーの楽曲「UFO」が大ヒットしたことに象徴的だが、当時は「ユーフォー」という読み方が完全に定着して久しかった。
  7. ^ 1920年代後半生まれ、岡本と倉本の中間に位置する。
  8. ^ 田中は百冊近く、最も少ない星でも5冊の訳書がある。

出典

  1. ^ a b c ゴジラ画報 1999, p. 197, 「ブルークリスマス」
  2. ^ 東宝写真集 2005, p. 112, 「ブルークリスマス」
  3. ^ ブルークリスマスコトバンク
  4. ^ ブルークリスマス - ウェイバックマシン(2018年2月5日アーカイブ分) 日本映画専門チャンネル公式ホームページ
  5. ^ a b ゴジラ大全集 1994, pp. 72–73, 「東宝特撮映画史 ゴジラ誕生 特撮復権にむけて」
  6. ^ 映画」『北海道年鑑 昭和54年版』1979年1月、346頁、doi:10.11501/9490776 






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