フラッシュメモリ 保持期間

フラッシュメモリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 03:35 UTC 版)

保持期間

フローティングゲートに充電した電子によって情報を記憶するという構造のために、書き込まれたデータの保持期間は有限である。メーカーの公称値では、書き換えによって劣化していない状態(書き換え限度の10%以下)で3年以下(TLC/QLC)・5年(MLC)・10年(SLC)、書き換え限度まで達した状態から1年となっている[12][13][14]。これは環境の影響を受け、高温や放射線のあたる環境下においてはソフトエラー英語版が発生[15]して保持期間は通常よりも短くなる(条件次第では使用不能もありうる)。

NOR型であれば一般に20年程度の保持期間を持ち[16]、BIOSなどのファームウェアに使われている。ただし初期のフラッシュメモリ製品は既に20年以上が経過しており、保持期間が有限であることに変わりは無い。なお、これらの保持期間は最後に書き込んで以降の時間を示す[16]

寿命

フラッシュメモリの記憶素子は、動作原理上絶縁体となる酸化膜が貫通する電子によって劣化するため消去・書き込み可能回数が限られており、記憶素子単体の書き換え寿命は短命なものではQLCが数十回程度、TLCが数百回程度でそれぞれ限界、長くてもMLCの場合で数千回程度、SLCの場合で数万回程度である[17][注 2]。NOR型よりもNAND型の方が劣化が激しい。この記憶素子をそのまま記憶装置として使う場合、書き込みが特定ブロックに偏るため、未使用の記憶素子がある一方で特定の記憶素子だけが劣化によって寿命が尽きるという状況が発生する。現状の製品では、書き込みの偏り対策としてコントローラを搭載して消去・書き込みが特定ブロックに集中しないようにウェアレベリングをしている。これにより書き換え寿命は論理的には伸びる。正確な計算方法はメーカーによって複数あり、例えば製品の最大容量と書き換え可能な領域等によって寿命は変わってくる[18]

書き込み可能回数を超えると、ストレージとして認識することができなくなったり、正常な記録ができなくなったり、正常に記録することができたとしても記録内容を維持することができず、記録した内容が壊れたり消えてしまったりする確率が上昇する[19]

Intelの研究によれば、63nmから72nmのプロセスルールで製造されたMLC(2bit/セル)方式NANDフラッシュメモリ8Gbitチップの場合、1万回の書き換えでエラーの起きる確率が1ビット当たり100万分の1から1000万分の1程度(即ち8Gbitならばエラーの起きるビットは平均1000から100ビット)である[20]

フラッシュメモリは半導体製品であり、電子回路の構成部品として回路基板上に実装された形で製品化されているものが大半である。電子回路であるがゆえにフラッシュメモリそのものの故障以外に、電子回路の他の部品(コントローラチップなどフラッシュメモリ以外の実装部品も含む)の故障の影響で使用不能に陥ることもある。

ハードディスクからの転換

パソコン用デバイスとしてのフラッシュメモリは、当初ユーザーの操作で書き換え可能なBIOSを持ったマザーボードへの利用など表面に出ない用途だった。やがてUSBメモリなどによるフロッピーディスクの代替としての利用が始まり、書き換えに対する耐久性の向上(ハード的な技術向上やソフト的に書き換える部分を集中しないようにする工夫 - ウェアレベリング)、大容量化・低価格化・高速化が進み、徐々に大容量記憶装置としての役割を担うようになっていった。

2004年には、小容量ながらパソコンに内蔵してハードディスク (HDD) 同様ドライブとして使用できるソリッドステートドライブ(SSD)が登場。自作派のユーザーたちに浸透していった。2006年には、HDDを搭載しないでSSDを搭載するメーカー製小型ノートパソコンが登場した。2007年発売の『Windows Vista』からは、USBメモリをHDDのキャッシュメモリとして使用するWindows ReadyBoost機能、2009年発売の『Windows 7』からはSSDはHDDとは別の種類のデバイスとしてサポートされるようになっている。

ノートパソコンには機器の小型化および軽量化、省電力化、衝撃に対する強さが要求される。フラッシュメモリはハードディスクと比較してこれらの要素で優れており、さらに物理的な動作がないので静音化ができ、また高速にアクセスできるという利点も持つ。ただし低価格化が進んだとは言え、容量単価の点では依然としてハードディスクが有利であり、フラッシュメモリ搭載ノートパソコンはハードディスク搭載モデルと比較して割高な価格設定になりやすいが、2019年現在、その物理的に可動部が無いことによる耐衝撃性とHDDに比べ圧倒的な速度性能を考慮すれば、十分考慮できる価格帯まで落ち着いている。


注釈

  1. ^ 構造からは「押し流す」=flushという感じだが、公称はflashである。
  2. ^ 製品やメーカーによってはメモリセル単体の寿命を1万回や10万回程度の保証としている(SPANSION社のフラッシュメモリデータシートによる)

出典

  1. ^ 世紀の発明「フラッシュメモリーを作った日本人」の無念と栄光(週刊現代) @gendai_biz”. 現代ビジネス. 2022年5月31日閲覧。
  2. ^ 残念な東芝で「フラッシュメモリーの父」は活かされなかった”. ダイヤモンド・オンライン (2017年5月29日). 2022年5月31日閲覧。
  3. ^ http://www.takeda-foundation.jp/reports/pdf/ant0104.pdf
  4. ^ Jonathan Thatcher, Fusion-io; Tom Coughlin, Coughlin Associates; Jim Handy, Objective-Analysis; Neal Ekker, Texas Memory Systems (April 2009). NAND Flash Solid State Storage for the Enterprise, An In-depth Look at Reliability. Solid State Storage Initiative (SSSI) of the Storage Network Industry Association (SNIA). オリジナルの14 October 2011時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111014033413/http://snia.org/sites/default/files/SSSI_NAND_Reliability_White_Paper_0.pdf 2011年12月6日閲覧。. 
  5. ^ Taiwan engineers defeat limits of flash memory”. phys.org. 2016年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月8日閲覧。
  6. ^ Flash memory made immortal by fiery heat”. theregister.co.uk. 2017年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月8日閲覧。
  7. ^ Flash memory breakthrough could lead to even more reliable data storage”. news.yahoo.com. 2012年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月8日閲覧。
  8. ^ Richard Blish. "Dose Minimization During X-ray Inspection of Surface-Mounted Flash ICs" Archived 20 February 2016 at the Wayback Machine.. p. 1.
  9. ^ Richard Blish. "Impact of X-Ray Inspection on Spansion Flash Memory" Archived 4 March 2016 at the Wayback Machine.
  10. ^ SanDisk Extreme PRO SDHC/SDXC UHS-I Memory Card”. 2016年1月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月3日閲覧。
  11. ^ Samsung 32GB USB 3.0 Flash Drive FIT MUF-32BB/AM”. 2016年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月3日閲覧。
  12. ^ (3)【フラッシュメモリー編】 長期間放置するとセル内の情報が消える《データ消失の謎》 - PC Online
  13. ^ 【福田昭のセミコン業界最前線】 NANDフラッシュメモリの信頼性を保つ技術 - PC Watch
  14. ^ (3/5)100年持たせるデータ保存術 - 【フラッシュメモリー】長期間の放置でデータが消える - ITpro
  15. ^ IEDM 2008 - フラッシュメモリにも中性子線ソフトエラーが発生
  16. ^ a b NOR FLASH FAQS - KBA222273 - Cypress Developer Community”. サイプレス (2018年3月26日). 2018年6月7日閲覧。
  17. ^ MemCon Tokyo 2007レポート(フラッシュメモリ編)”. Impress Watch / PC Watch. 2013年3月5日閲覧。
  18. ^ SSDの耐久性 - Hewlett-Packard
  19. ^ 寿命を迎えたフラッシュメモリのレポート - USBメモリの書き換え限界寿命が来ると何が起きるのか、実際に寿命が来たケースをレポート - GIGAZINE
  20. ^ IntelとMicronがマルチレベルNANDフラッシュの不良を解析 - PC Watch
  21. ^ フラッシュATAメモリーカード - Weblio辞書
  22. ^ メモリーカードの価格が大暴落中! - All About
  23. ^ 東芝、300億円の営業赤字に 08年中間決算 - 47news
  24. ^ 東芝,NANDフラッシュ・メモリの赤字は通期で390億円 - 日経BP TechOn
  25. ^ フラッシュメモリー製造 米国NASDAQ上場Spansion Inc.子会社 Spansion Japan株式会社 会社更生法の適用を申請 負債741億円 - 帝国データバンク






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