ヒーザーン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/02/23 02:44 UTC 版)
ヒーザーン Heathern |
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著者 | ジャック・ウォマック |
訳者 | 黒丸尚 |
イラスト | 小阪淳 |
発行日 | 1990年 |
発行元 | Unwin Hyman(現在はGrove Press)、日本語版は早川書房 |
ジャンル | スペキュレーティブ・フィクション、ディストピア、風刺 |
国 | |
言語 | 英語(日本語) |
形態 | ペーパーバック、文庫 |
ページ数 | 213(Grove Press版ペーパーバック)、355(日本語版) |
前作 | テラプレーン |
次作 | エルヴィシー |
コード | ISBN |
題名は、異教徒を意味する "Heathen" がなまったもの。作中で登場人物が口にする。
目次 |
概要
シリーズ全体をつらぬく創世の核心が明かされる。語り手が女性の企業人であるため、語り口が前2作とは大きく異なる。これまでの物理的な暴力にかわり、言葉による傷、不況による失業、セクシャル・ハラスメント、心理的な拷問などが前面に出る。また、登場人物の数人がユダヤ系であり、ホロコーストについての言及がある。
1998年が舞台であり、地の文は『アンビエント』に比べて読みやすい。しかし、推理小説や企業小説仕立てのプロットがからみ合っており、筋立てはシリーズ中もっとも複雑である。イディッシュ語、日本語、ラテン語などが時折見られる。
シリーズ6部作を時系列に並べると2番目にあたる作品。最初にあたる『ランダム・アクツ・オブ・センスレス・ヴァイオレンス』の約半年後が想定されている。前作『テラプレーン』でのSF的な面に対して神秘的な面が描かれており、本作品でおぼろげながらシリーズの結末が提示されている。
注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
キーワード
- ドライコ(Dryco)
- アメリカを支配する多国籍企業。麻薬売買の会社だったが、経済危機とキリスト教の失墜を機会に急速に業績を伸ばしている。本作品の時代は、ウォール街に本社があり、創業者のサッチャー夫妻が経営の舵取りをしている。
- 善神(Godness)、神(God)
- レスターの説く神々。創世が困難だったため、創造主は善神と神のふたつに分裂してしまった。今の世界は失敗作であり、ふたつが結びついて再びひとつになるとき、世界は終わるという。善神は、悪からできるだけの善を引き出そうとし、細部を神にまかせる。『アンビエント』においては、善神は女性なるもの、神は男性なるものとされていた。グノーシス主義におけるソピアーとデミウルゴスの関係と共通点がある。
- ロングアイランド(Long Island)
- マンハッタンの東に位置する広大な島。住人とアメリカ政府の間で衝突が起き、内戦が始まっている。ニューヨークの荒廃の一因であり、本作品の事件の真相にも関係している。
主な登場人物
- ジョアナ(Joanna)
- 本作品の語り手。ドライコ社で新規プロジェクト担当副社長の地位にあるが、仕事らしき仕事を与えられず、飾り物扱いをされている。ユダヤ系の出自で祖父はラビ。両親は通貨引き上げのあとに自殺をとげている。ドライコに雇われてからは努めて心の動揺を抑えてきたが、レスターとの出会いにより変わってゆく。
- レスター・マキャフリイ(Lester Macaffrey)
- ロイサイダに住む教師。ケンタッキー州出身の29歳。救世主として、ドライコの新規事業に組み入れられる。世界の成り立ちとその行く末について、ジョアナに語り伝える。身体に大きな銃創が残っているが、理由を明かさない。
- サッチャー・ドライデン(Thatcher Dryden)
- ドライコの経営者。南米で麻薬ビジネスを行なっていたが経済危機を機会に財を成した。リンカーンが40ポンド太り、顎髭がなく、髪の毛をポニーテイルにしたような姿。エルヴィス・プレスリーが今も生きていると信じている。新規事業として、レスターに目をつける。
- スージイ・ドライデン(Susie Dryden)
- ドライコの経営者で、サッチャーの妻。サッチャーの兄が死んだのち、彼と共に経営を受け継いだ。現在は大規模なバーター貿易などいくつかのビジネスを仕切っており、時折怒りを激発させ部下を自殺に追い込む。白を異常なまでに好む。
- バーナード(Bernard)
- ドライコの事業計画担当副社長。二重焦点メガネをかけている。45歳でジョアナの3歳年上。ドライコ社に移る前はジョアナの上司であり、旧ドルで何百万も稼いでいたが、破産してドライコに雇われた。レスターの存在をうとましく思っている。妻の名はマーサ。1人息子を亡くしている。
- ガス(Gus)
- ドライコの保安部長。60歳代で、ジェイクの師匠にあたる。大統領を3人暗殺したといわれており、うちひとりはケネディ。ジェンスンの殺害事件を調査する。
- エイヴィ(Avi)
- ドライコの保安部員。ジョアナの元恋人。父親は第二次世界大戦中にマイダネックの強制収容所にいた。ドライコにつとめることで人々を迫害する側にいる点をジョアナに非難された経験がある。いくつもの信仰を渡り歩き、今では特定の宗教は信じていない。給料の半分をユダヤ人街へ送っている。
- ジェイク(Jake)
- ガスに拾われて保安部に入った少年。テーブルマナー、文芸批評、保安部員としての心得などをガスから学んでおり、仕事でミスを犯すこともある。シェイクスピア作品では『テンペスト』のエアリアルを好む。
- ジェンスン(Jensen)
- ドライコの社員。秘密の取引に関わっていたのが原因で、フグ毒により命を狙われる。祖母が強制収容所にいた。
- ドライデン・ジュニア(Dryden Jr.)
- サッチャーとスージイの息子。その言動がサッチャーの不満の種だが、スージイは彼に経営を任せようと考えている。
- マージ(Marge)
- レスターの教え子。歳に似合わない受け答えをする。ロングアイランドからの移住者。
- オーツカ(Otsuka)
- 日本人の大企業家。非常な高齢で、バーナードの説明によれば、日本においてサッチャーと同等の人物。マンハッタンにオフィスを構え、ドライコと契約を結ぶためにサッチャーと会う。
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