ハムスター ハムスターの概要

ハムスター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/15 04:02 UTC 版)

キヌゲネズミ亜科
ゴールデンハムスター
(Mesocricetus auratus)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネズミ目(齧歯目) Rodentia
上科 : ネズミ上科 Myomorpha
: キヌゲネズミ科 Cricetidae
亜科 : キヌゲネズミ亜科 Cricetinae

本文参照

ハムスターの戦い

語源

本来、「ハムスター」の指す動物はヨーロッパに分布するクロハラハムスターであり、ラテン語でハムスターを示す「cricetus」も属・種と共にクロハラハムスター(Cricetus cricetus)に使用されている。(なお、ゴールデンハムスターの属名「Mesocricetus」は「中ぐらいのハムスター」の意味[5]

古高ドイツ語には、hamustraという単語があり(元々1000年頃にコクゾウムシの意味で使われていた古い単語であったが)、1607年にはハムスター(クロハラハムスター)という意味で使われており[6]、ヨーロッパに広く生息していたクロハラハムスターの語源となった。しかし、実験動物用としてドイツにゴールデンハムスター(: Syrische Goldhamster)が伝来して増え、ゴールデンハムスターがHamsterの代名詞にとって変わった。

なお、語源である古高ドイツ語のhamustraにはもともと「強欲で大食い」というニュアンスがあり、一説として、その語源は古ロシア語のhoměstrǔあるいは、ペルシア語のhamaēstar(「圧迫者」)に由来していると説明されている[6][7]。ドイツ語の「買いだめする、溜めこむ」という動詞ハムスターン(: hamstern)は、hamsterの貯食の習性から相手を揶揄する言葉として派生した。

特徴

外見

地中生活に適応するため、体はずんぐりとしており、四肢も尻尾も短く進化している[8]ドワーフハムスターでも尻尾は毛皮の下に隠れてしまいほとんど目立たない。ただし、チャイニーズハムスターにはハムスター類で最も長い尾(2.8-3.1cm)があり物をつかむような機能をもつ[8]

左右にもともと口腔が陥没してできた頬袋(cheek pouch)と呼ばれる袋(盲嚢)をもつ[8]。頬袋には伸縮性がありエサを収容しておくためのものである。

ゴールデンハムスターやドワーフハムスターには臭腺がある[8]

歯式は2 (1003/1003) の16本で、犬歯は退化し、2本の切歯(門歯)が一生伸び続ける[9]。エナメル質が作られるときに銅などを取り込むため切歯の色は黄色である[8]

体重は、ジャンガリアンハムスターは30-50g、ゴールデンハムスターで80-150g。ハムスターの中で最も大型になる種はクロハラハムスターで、その体重は250g-600gに達する。寿命はジャンガリアンハムスターで2年、大型種のクロハラハムスターでも2年半ほどだが、ゴールデンハムスターに最大8年間生きた記録がある[10]

習性

頬袋に餌を詰めるハムスター

野生ではヨーロッパからアジアの乾燥地帯に分布。夜行性で地中に掘ったトンネル内を餌を探すために一晩に10km - 20kmを移動しながら生活している[8]。野生のハムスターは、1日のほとんどを巣穴の中で過ごし、捕食者を避け明け方と夕暮れの短い時間のみに餌を探しに出掛ける。ハムスターは穴掘りの能力に優れており、複数の入口に、寝床、食料の貯蔵庫などの様々な部屋が繋っている巣穴を掘ることができる。野生のゴールデンハムスターは数が少なく絶滅が危惧されている。

頬袋に餌を収納し、一杯になるとその袋は2倍から3倍にもふくれ上がることがある。ここに溜めた食料を、自分の巣穴で吐き出して貯蔵する習性がある。食性は穀食を中心とした草食性に近い雑食性で、野生状態では、木の実、穀物、野菜、果物、また昆虫やミールワームなども食べる。大型種のクロハラハムスターなどは小さいネズミ類や小鳥を食べることもある[10]。飼育時に適したエサについては下記参照。ハムスターは時に自分の糞を食べることがある(食糞)。これは、一度では消化しきれなかった養分をもう一度吸収するためであり、異常行動ではない。

ハムスターの視力はあまり良くなく、また色盲である。そのため、外界の状況の把握は聴力と嗅覚に頼っている。臭腺の臭いを周りに散布することでなわばりを主張するとされており、特に自身の臭いに非常に敏感である。また、高周波を聴くことができるといわれており、超音波で互いにコミュニケーションしているとも考えられている[11]

気温が下がった場合は種によって対応が異なり、西ヨーロッパからシベリア・イラクに生息のクロハラハムスターは冬眠はせず、活動が非常に鈍るのみだが、シリアに生息するゴールデンハムスターは冬眠する[10](ただし最長でも5日 - 6日で目覚めて餌をとる)、ジャンガリアンハムスターは疑似冬眠と呼ばれる状態になり、夜明け前から夕方ごろの日中代謝が低下し夜間になると戻る[8]。飼育下のハムスターだと冬眠や疑似冬眠からうまく目覚めることができず、そのまま死んでしまうことがある[9]

性格はゴールデンハムスターなどでは体の大きいメスのほうがオスよりも気が強く、特に繁殖期などは飼育に注意を要する[8]

ゴールデンハムスターは縄張り意識が強く、一般的には1匹で生活する。縄張りを侵すと殺し合いのケンカをすることもある。一方、ドワーフハムスターと呼ばれる小さめのハムスターは、同種で、気が合えば2匹以上一緒に生活することもありうる。

草原や川岸に生息する野生種のクロハラハムスターは、泳ぐ能力があり、頬袋に空気を貯めて浮き袋にする習性がある[9]。この習性は、元々砂漠地帯に生息していたゴールデンハムスターにも存在し、雨季の洪水などで水に落ちると、頬袋を膨らませて短時間ながら泳ぐことが確かめられている[12]

繁殖

生後間もないハムスター

ハムスターが繁殖可能になる年齢は、種類によって異なるが一般的には月齢で1か月から3か月で交配可能となる。メスのハムスターの交配可能な期間はおよそ3年であるが、オスはもっと長いこともある。規則的な発情期を持つ。4月から10月に、2週間から1か月の妊娠期間の後、10匹前後の子を生む。ゴールデンハムスターは齧歯類の中でも特に性周期が安定しており、メスは4日の周期で発情を繰り返す。発情したメスは、背中側のお尻周辺を触ったり、甘噛みされると、尾を上げ交尾姿勢を取る。

また、種の違うもの(ゴールデンハムスター×ジャンガリアンハムスター、ジャンガリアンハムスター×キャンベルハムスターなど)の交雑は、基本的に不可能であり、妊娠したとしても母体・子供に危険が及ぶ確率が高いが、ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターを交雑させたものは一般のペットショップにも出回っていることがある。


  1. ^ ウィルレム・チャンブル; ロベルト・チャンブル 編、永田健助 訳「噛歯獣類」 『百科全書』 上、丸善、1884年、484頁。NDLJP:897086 
  2. ^ グードリッチ 著、須川賢久 訳「囓歯類」 『具氏博物学』 五、田中芳男校閲、文部省、1876年、47頁。NDLJP:832262 
  3. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. “ゴールデンハムスター”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2022年1月19日閲覧。
  4. ^ 学研が1968年に発行した『原色現代科学大事典 5動物II』末の和名―学名表で「ハムスター Cricetus cricetus」とクロハラハムスターの学名に「ハムスター」の和名が記されている。なお、ゴールデンハムスターは同じページに「ゴールデンハムスター Mesocricetus auratus」と記載されている(『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年、p.606)。
  5. ^ 『標準原色図鑑全集19 動物I』、林壽郎、株式会社保育社、1968年、p.92。
  6. ^ a b [1]
  7. ^ Merriam-Webster (hamster)
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 学校飼育動物の診療ハンドブック”. 日本獣医師会. 2019年11月13日閲覧。
  9. ^ a b c d e 動物情報(ハムスターの基礎) エキゾチックペットクリニック
  10. ^ a b c d 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年、p.522。
  11. ^ Fritzsche, Peter. 2008. Hamsters: A Complete Pet Owner’s Manual. Barron’s Educational Series Inc., NY.
  12. ^ ペットいっぱい動物図鑑おもしろ問答【ゴールデンハムスターのほおぶくろは浮き袋になる?】
  13. ^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  14. ^ チャイニーズハムスター(モンゴルキヌゲネズミ) Cricetulus griseusは川田ほか(2018)にないため追加
  15. ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年、p.521-522。
  16. ^ a b ペット動物販売業者用説明マニュアル(哺乳類・鳥類・爬虫類) - 環境省
  17. ^ a b c d ゆず動物病院(ハムスター)
  18. ^ ハート動物病院(ハムスターの飼育)
  19. ^ a b c ときわ動物病院 健康管理(ハムスター)
  20. ^ a b ペットの医療総合サイト(獣医増田忠司監修)
  21. ^ ハムスターについて - 岐南動物病院
  22. ^ ハムスターを共食いに導いた原因はトウモロコシだった Sputnik日本 2017年01月30日 17:40 (2017年12月23日閲覧)


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