ハドソン湾 地質

ハドソン湾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/29 01:35 UTC 版)

地質

氷床の消失によるリソスフェア上昇の割合(2007年の調査)

20~18億年前の原生代にこの地域でハドソン横断造山運動 (Trans-Hudson orogeny)と呼ぶ大規模な大陸衝突が生じた。その後カンブリア紀は陸地であったが、オルドビス紀に海となり、シルル紀に再び隆起運動が起こり、デボン紀には陸現物を多く含む浅海堆積物が形成された。

1960年代に地球の重力場を地図化し始めた時、ハドソン湾に広大な低重力が観測された。最終氷期ローレンタイド氷床英語版による地殻の圧縮が続いているためと当初考えられたが、GRACE人工衛星による詳細な観測で、それだけが重力異常の原因でなく、マントル対流に起因することが分かった。現在の観測では、湾を中心とした地域は年間に17mmと、氷床消失による地殻の上昇が世界でも最も大きい地域となっている。

湾の南東部には半円形の海岸線(ナスタポカ諸島弧)と、それに沿うように湾内にベルチャー諸島が並んでいる。クレーターを想起させるこの地形の成因については、月面の危難の海との比較により先カンブリア時代に起きた地球外天体の衝突の衝撃によってハドソン湾が形成されたと主張する地質学者もいたが、現在においてなお地磁気重力異常など地質学的に確実に衝突地形であるとされる証拠は発見されていない[2]

湾岸の自治体

ハドソン湾岸にはほとんど住民がいない。町村の数はわずか1ダースほどであり、そのいくつかは17世紀末から18世紀にハドソン湾会社が設立した交易所が元になっている。ハドソン湾会社の交易所や経営する店舗が20世紀後半には閉鎖されており、住民の多くはクリー諸族イヌイットである。

特に大きな町は以下の通り。

  • ケベック州プヴィルニトゥク(Puvirnituq):湾の北東部、イヌイットの1,300人弱の集落
  • ヌナブト準州ランキン・インレット(Rankin Inlet):湾の北西部、キヴァリク地域(Kivalliq Region)の中心
  • ヌナヴト準州アルヴィアット(Arviat、旧名エスキモー・ポイント Eskimo Point):湾の北西部、キヴァリク地域の町、人口2,060人)
  • マニトバ州チャーチル(Churchill):湾の西部、チャーチル川河口。名はハドソン湾会社で17世紀末に総督を務めたマールバラ公ジョン・チャーチルにちなむ。

軍事基地

東西冷戦が始まるまで、この地に軍事的重要性はなかった。1950年代、北極海を越えたソ連の攻撃に備え、ミッド・カナダ・ラインと呼ばれる防空レーダー網を構築するためレーダーサイトが北米大陸を横断するように設置され、この湾岸のいくつかの場所にもレーダーサイトがおかれた。

注釈

[脚注の使い方]

  1. ^ Higdon W.J., Ferguson H.S., 2011 Reports of Humpback and Minke Whales in the Hudson Bay Region, Eastern Canadian Arctic. Northeastern Naturalist 18(3):370-377. BioOne Online Journals.
  2. ^ Eaton D. W. and F. Darbyshire, 2010, Lithospheric architecture and tectonic evolution of the Hudson Bay region. Tectonophysics. v. 480, pp. 1–22.






ハドソン湾と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ハドソン湾」の関連用語

ハドソン湾のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ハドソン湾のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのハドソン湾 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS