ノーベル平和賞 ノーベル平和賞の概要

ノーベル平和賞

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/06 19:13 UTC 版)

ノーベル平和賞
会場オスロ
 ノルウェー
主催ノルウェー・ノーベル委員会
初回1901年
最新回2023年
最新受賞者ナルゲス・モハンマーディ
公式サイトhttps://www.nobelprize.org/
ノーベル平和賞受賞者を決定するノルウェー議会
オスロ市庁舎外観
1974年のノーベル平和賞のメダル

ノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルはスウェーデンノルウェー両国の和解と平和を祈念して「平和賞」の授与はノルウェーで行うことにした。平和賞のみ、スウェーデンではなくノルウェー政府が授与主体である。ノーベル平和賞のメダルは、表面にはアルフレッド・ノーベルの横顔(各賞共通)、裏面には三位一体を表現した図案「Pro pace et fraternitate gentium」の文が刻まれている(受賞者名も刻まれる)[3]

概要

創設者のノーベルは遺言で、平和賞を「国家間の友好関係、軍備の削減・廃止、及び平和会議の開催・推進のために最大・最善の貢献をした人物・団体」に授与すべしとしている[1][2]。他のノーベル賞と異なり、団体も授与対象となっているのが特徴である[2]。政治情勢の影響を受けやすく、第一次世界大戦第二次世界大戦の時期等、受賞者がないことも見られた[2]

当時業績とされた実績が後から欠陥があったり、効果のないものと判明したりするために失望を招くことが多発している。そのため、賞の価値が批判されるなど受賞者選定や賞そのものの妥当性が度々指摘されており[4][5][6]、廃止の声も上がっているという。

また、受賞前の実績だけではなく、受賞後の政治的情勢を誘引する目的で贈られる場合もある。賞は、12月10日午後1時(現地時間)からオスロのオスロ市庁舎で授賞式が行われる。

選定方式

毎年の受賞は最高3人。選考はノルウェーの国会が指名する5人の委員と選考を取り仕切る1人の書記で構成されているノルウェー・ノーベル委員会が行う。各国に推薦依頼状(通常非公表)を送り、推薦された候補者より選ばれる。2013年には259の個人と組織(うち50の組織)の推薦があり、過去最大の数とされている[7]。受賞が決まるのは例年10月頃。候補者の名前は50年間公表されない[7]。個人の場合は生存していること、組織の場合は現存することが条件であり、物故者への追贈はない。死後この賞を受けたのはダグ・ハマーショルドのみ(存命中に授与が決定していたため)[7]

トマーシュ・マサリクウィリアム・ハワード・タフトなどの政治家、ニコライ2世ハイレ・セラシエ1世といった君主、レフ・トルストイピエール・ド・クーベルタンなどが候補となっていたことが公表されている[7]

現在では独裁者とされる人物が推薦された例もある。1939年にはアドルフ・ヒトラーが推薦されているが、これは反ファシズムの立場を取るスウェーデンの国会議員によるもので、皮肉を意図したものであったとされる[7]。しかし武田知弘によると、推薦したのはエリク・ゴットフリード・クリスティアン・ブラント英語版でこのジョーク説は第二次世界大戦後にノーベル平和賞委員会とブラントの後付けの言い訳にすぎず、1938年9月に開かれたズデーテン割譲を巡るミュンヘン会談の結果を受けて世界に平和をもたらしたとして、ネヴィル・チェンバレンが称賛されたようにイギリスとドイツに挟まれるスウェーデンは大戦回避をもたらしたヒトラーを推薦したとしている。しかし推薦を受けた直後の1939年9月にナチス・ドイツはポーランドに侵攻を開始したため推薦は取り消された[8]。他にベニート・ムッソリーニヨシフ・スターリンフアン・ペロン夫妻もノミネートされているが、受賞には至っていない[7]

ジェーン・アダムズは1916年に初めて推薦を受けて以来、1931年に受賞するまでにのべ91回の推薦を受けた。これは推薦を受けた回数としては最多のものである[7]

賞金

賞金額は1901年当時の賞金額を、その年の貨幣価値に換算されたものが贈られる[9]。2012年以降、平和賞の賞金は一つの賞あたり、800万スウェーデン・クローナとされている[7]。このため共同受賞となった場合には、受賞金額を受賞者達で分け合うことになる。1976年に受賞したベティ・ウィリアムズマイレッド・コリガン=マグワイアの組織は、賞金の分配でもめてバラバラになってしまった[要出典]


注釈

  1. ^ 広瀬は根拠を示すために、まず当事者のイスラエル、会場の山荘を提供したen:Orkla Group、その実質的な支配者であるen:Nobel Industriesハンブローズ銀行ヴァレンベリ家、そしてロスチャイルドを家系図と役員兼任関係で纏め上げた[12]
  2. ^ ロバート・ベーデン・パウエルに決定していたが、第二次世界大戦勃発により賞自体が取り消された。
  3. ^ 遺贈
  4. ^ 受賞辞退

出典

  1. ^ a b ノーベル賞の国際政治学 -ノーベル平和賞の歴史的発展と選考過程-,吉武信彦,高崎経済大学地域政策学会,地域政策研究,vol.13-4,pp.23-40,2011-02
  2. ^ a b c d ノーベル平和賞、在ノルウェー日本国大使館
  3. ^ ノーベル賞のメダル”. アワードプレス. 2017年10月4日閲覧。
  4. ^ 2016年は誰が手にした? ノーベル平和賞なんていらない理由”. ITmedia ビジネスオンライン (2016年11月17日). 2020年11月16日閲覧。
  5. ^ a b 金大中・オバマ・スーチー…米紙が選ぶ「疑わしいノーベル平和賞」(朝鮮日報日本語版)”. Yahoo!ニュース. 2020年11月16日閲覧。 “ NYTは同日「疑わしいノーベル平和賞受賞者の増加」と題する記事で「ノーベル平和賞は過去30年間で最低でも6回、受賞前あるいは受賞後の言動に価値がない、場合によってはばかげていると見なされる人物を選んだ」と報じた。”
  6. ^ なぜノーベル平和賞の受賞者は、その後に世界の「失望」を招くのか”. Newsweek日本版 (2017年10月4日). 2020年11月16日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h Facts on the Nobel Peace Prize - ノーベル賞公式サイト(英語)
  8. ^ 武田知弘『なぜヒトラーはノーベル平和賞候補になったのか』ビジネス社、2019年10月15日、65頁。ISBN 978-4-8284-2136-0 
  9. ^ The Nobel Prize Amounts - ノーベル賞公式サイト(英語)
  10. ^ なぜノーベル平和賞の受賞者は、その後に世界の「失望」を招くのか”. アワードプレス. 2017年10月4日閲覧。
  11. ^ “今回はマララさん…「ノーベル平和賞は論争を呼ぶ賞」”. 中央日報. (2014年10月13日). https://web.archive.org/web/20141015221838/http://japanese.joins.com/article/214/191214.html 2014年10月13日閲覧。 
  12. ^ 『地球のゆくえ』 集英社 1994年 系図8 一九九三年中東和平秘密会談の内幕
  13. ^ “スーチー氏のノーベル平和賞は剥奪せず 選考委員会”. CNN (CNN.co.jp). (2018年8月30日). https://www.cnn.co.jp/world/35124851.html 
  14. ^ ノーベル平和賞はしばしば政治的に使われていた ロケットニュース24
  15. ^ Federation of Social Workers (IFSW) – IFSW supported nomination of Irena Sendler for Nobel Peace Prize. IFSW. 2010年12月10日閲覧
  16. ^ “オバマ大統領へのノーベル平和賞授与に批判-「早まった聖人化」”. ブルームバーグ. (2009年10月10日). http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=a1Yq5eJ2DR7U 2011年1月29日閲覧。 
  17. ^ クリストファー・ヒッチェンズ (2009年12月22日). “あまりに軽いオバマのサプライズ受賞”. ニューズウィーク. http://newsweekjapan.jp/stories/2009/12/post-849.php 2011年1月29日閲覧。 
  18. ^ “Obama:Nobel Peace Prize is call to action”. CNN. (2009年10月9日). http://articles.cnn.com/2009-10-09/world/nobel.peace.prize_1_norwegian-nobel-committee-international-diplomacy-and-cooperation-nuclear-weapons?_s=PM:WORLD 
  19. ^ “オバマ政権初の臨界前核実験 4年ぶり、9月中旬実施 「データ収集目的」 国際的反発も”. 日本経済新聞. (2010年10月13日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM13025_T11C10A0NN0000/ 2023年7月20日閲覧。 
  20. ^ “米が臨界前核実験 オバマ政権で4回目 核安全保障局が発表”. 日本経済新聞. (2012年12月7日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM07029_X01C12A2EB1000/ 2023年7月20日閲覧。 
  21. ^ “焦点:消極的な「世界の警察」、シリア攻撃めぐる米大統領の憂慮”. ロイター. (2013年9月2日). https://jp.reuters.com/article/l4n0gx061-analysis-obama-syria-idJPTYE98102L20130902 2023年7月20日閲覧。 
  22. ^ “アフガン病院誤爆 国連、「戦争犯罪の可能性も」”. CNN (CNN.co.jp). (2015年10月5日). http://www.cnn.co.jp/world/35071433.html 2016年4月26日閲覧。 
  23. ^ 『中国新華社「平和賞の名声損なう」と批判論評』 産経新聞2012年10月13日
  24. ^ 『授賞は「悲劇的過ち」チェコ大統領」と批判論評』産経新聞2012年10月13日
  25. ^ “「政治的」また批判の声 実績より期待感後押し”. 産経新聞. (2012年10月13日). https://web.archive.org/web/20121013013950/http://sankei.jp.msn.com/world/news/121013/erp12101300480003-n1.htm 
  26. ^ “イラン国会、「西側は、ノーベル平和賞を政治的に利用」”. イラン・イスラム共和国放送. (2012年10月13日). http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/32455-%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E3%80%81%E3%80%8C%E8%A5%BF%E5%81%B4%E3%81%AF%E3%80%81%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E5%B9%B3%E5%92%8C%E8%B3%9E%E3%82%92%E6%94%BF%E6%B2%BB%E7%9A%84%E3%81%AB%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%80%8D 
  27. ^ 「若過ぎる」と懸念も=マララさん、一躍人権のヒロインに―ノーベル平和賞 時事通信2014年10月10日
  28. ^ エチオピア軍が北部州政府と「戦争突入」 ノーベル平和賞の首相が命令”. AFP (2020年11月6日). 2020年11月26日閲覧。
  29. ^ エチオピア首相、北部勢力への「最終」攻勢を命令”. AFP (2020年11月27日). 2020年11月26日閲覧。
  30. ^ “平和賞は「軍事作戦」「政治的道具」 ロシアとベラルーシが猛反発”. 朝日新聞. (2022年10月8日). https://digital.asahi.com/articles/ASQB866KNQB8UHBI011.html?iref=pc_ss_date_article 2023年7月20日閲覧。 
  31. ^ “ノーベル平和賞 ウクライナ国内では批判的な反応も”. NHK. (2022年10月8日). https://web.archive.org/web/20221007213133/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221008/k10013852711000.html 2023年7月20日閲覧。 
  32. ^ https://www.nobelprize.org/prizes/themes/mahatma-gandhi-the-missing-laureate/
  33. ^ Nobel Media AB 2014 (2014年10月10日). “The Nobel Peace Prize 2014 - Press Release”. Nobelprize.org. 2021年4月29日閲覧。


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