ニフティサーブ
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トラブル
ニフティサーブ現代思想フォーラム事件
ネット上での書き込みが名誉毀損となるか、また、ネット管理者に書き込みを削除すべき管理責任があるかについて、日本で初めて問われた裁判として注目されたのが、いわゆるニフティ訴訟である(その後提起された他のニフティサーブに関連して起こされた裁判と区別するために「ニフティサーブ現代思想フォーラム事件」とも言われる)。1994年に提訴され、1997年5月27日に一審判決、2001年9月5日に二審判決が出された。発端は現代思想フォーラム(FSHISO:えふしそ)に設置された「フェミニズム会議室[13]」であった。フォーラム名からすると高尚な話題を扱っているようであるが、実際には思想・信条・宗教を異にする者が激しい議論を繰り広げ、しばしば互いに罵倒しあうような光景もみられた。
事件の概要は以下の通りである。運営スタッフでもあった女性会員に対して、新規に加入した男性会員は、批判的な意見をもち、挑発的ともいえる文体での書き込みを繰り返していた。他方、女性会員は男性会員の勤務先などプライバシーを詮索したり、リアルタイム会議室(RT)でのチャットから男性を排除したりした。男性会員は挑発を繰り返し、女性会員が自ら寄稿していた離婚をめぐる私記の中で触れられた2度の中絶と流産の体験について、「胎児殺し」「嬰児殺し」と非難した。さらに男性会員の非難はエスカレートし、誹謗中傷の域に達した。ただ中絶の体験については、他の会員からも女性会員に対する批判的意見がなげかけられた。このような経緯の中で、女性会員はフォーラムでの書き込みをほとんどしなくなった。他方で、女性会員は、シスオペへのメールで、男性会員の発言を削除することを要求し、この際、自分の依頼があったことは伏せるよう条件を付した。シスオペは、「自己責任の原則の下で、フォーラム内での民主的な議論を進めるべきであるから、シスオペの独断、または対象者の依頼があったことを伏したままでの発言の削除は、基本的に行わない」という運営方針をとっていた。このため、当事者間での話合いとフォーラム内での公開での議論をするよう促した。しかし、これを不服として、女性が男性に対して名誉毀損による不法行為責任を、またシスオペ、ニフティ社に対して削除義務違反(監督義務違反)による債務不履行責任を追及するために、民事訴訟を起こしたものである。一審判決[要曖昧さ回避]では、シスオペ、ニフティ社の監督責任を含め、被告3者に賠償を命じた。二審判決ではフォーラムの性格上シスオペの運営方針は妥当であったと判断され、シスオペ及びニフティ社の責任は否定された(ただし男性の名誉毀損は肯定、確定)。なお、男性会員は、女性会員に対して、RT会議室での排除(スクランブル)が、いわゆる「村八分」にあたり、不法行為(名誉毀損)にあたるとして反訴提起を行った。反訴に対して裁判所は、女性会員が行ったスクランブルについて、「反対意見に対する寛容の必要性についての基本的な理解に欠けることを窺わせる行動」(二審判決)と評価しながらも、1度のチャット中に一時的に排除したに過ぎないことを理由に、法的には、「村八分」と同視するほどの違法性が認められないとして、この反訴請求を棄却した。[14]
ニフティサーブ本と雑誌フォーラム事件
ニフティサーブの本と雑誌フォーラムの会議室とパティオ上で起った「論争」をめぐる事件である。裁判所が、対抗言論の法理を認めた判決として、注目された。
会員であった原告Xの主張によれば、別の会員AがXに対して、侮辱または名誉毀損にあたる違法な発言を繰り返し行っていたにもかかわらず、ニフティはそれらの発言を放置して違法な状態を黙認し、Xの求めにもかかわらずAの住所氏名を公開しなかったとして、ニフティに対する損害賠償請求と、Aの住所氏名を開示するよう求めた訴訟である。この請求に対して、被告となったニフティは、会議室内での発言の一部分だけをことさらに取り上げて侮辱や名誉毀損と判断するのではなく、相手方の反論によって、やりとり全体やその流れを見たときに、単なる「言い争い」に過ぎない場合、名誉毀損や侮辱にはあたらず、不法行為にはならないと主張し、全面的に争った。
裁判所は、Aの発言がXに対して侮辱的であったことを認めながらも、Xによる反論がXの社会的評価の低下を阻止する効果をもたらしていることなどを理由に、Aの発言の違法性を否定し(対抗言論の法理)、Xの請求を全て退けた[15][16]。
この事件に関する論評は、『メディア判例百選』(有斐閣ジュリスト別冊)などに収載されている。
Mちゃん事件
1994年8月14日、掲示板「教えてください/教えます」である掲示がされた。内容は、卑猥な単語を並べ男性からのメールを募るというもので、IDのパスワードを不正に得た他人が掲載したものであった。IDの名義が女性名であったため、これを真に受け呼応しメールを送ってしまった会員がいた。メールはその日の内に同じIDによって掲示され、本名とともに晒し者になってしまった。翌日には晒された会員の一部がそれに気づいてダミーの発言を大量に掲示し問題の発言を押し流す形で消去したが、ログは既に他のネットにまで広まった後であった。不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)の施行前であり、犯人は明らかになっていない。このことは新聞で報道されるなど注目を集めた。後には模倣事件も何度か起きた。
会員個人情報の漏洩
1996年頃、フォーラムの一つで、ネットでのルール・マナーを逸脱した書き込みを繰り返したとかいう会員の個人情報につき、その会員の勤務先等の情報が割り出されて全国報道された、ということがあった。当時は個人情報保護の重要性への認識は一般的な反面、個人情報保護法は施行前であり、そのフォーラムのシスオペは、個人情報を割り出したこと等の経緯につき、マスコミ上やネットで度々公言している。なお、フォーラム名、出典は省略とする。
東芝クレーマー事件
別名「ニフティサーブ最後の事件」。量販店にて普及型ビデオデッキを購入した福岡の会社員Akkyが、東芝のクレーム処理をめぐり興した一連の騒動である。インターネット時代の企業と消費者のあり方の事例として、各所で取り上げられる本件だが事の発端はニフティサーブである。
先進的なAV機器マニアを自称するAkkyは、ニフティサーブ内のオーディオビジュアルフォーラム(FAV)に参加し、情報収集と活発な意見交換を行っていた。発端となったベスト電器での製品購入も、その日のうちに会議室上に書き込みを行っている。以後、販売店、修理センター、東芝とのやり取りも逐一会議室に書き込み記録を残していた。しかしながら、Aの言動については会議室の常連参加者との対立を生み、システムオペレーターによる発言の削除を行わしめるに至った。
この発言削除が端緒となり、AkkyはFAV運営陣と対立し、会議室内での発言を停止、その前年に開始されたばかりのニフティサーブ会員向けホームページサービス「member.nifty.ne.jp」(会員は無料で2Mバイトの領域が利用できた)に自身のサイトを構築。過去ログをLZHの圧縮テキストとして掲載すると同時に、事件の核心ともいえる音声ファイルを公開した。その結果、東芝製品の不買運動が2ちゃんねる等の匿名掲示板で展開されるに至った。
詐欺
広く報道され、耳目を集めたものとして、1996年4月から同一犯によりパソコンのCPUやメモリーを売るなどと称して連続発生した詐欺事件がある。この事件は、いわゆる裏情報をもとに架空口座を作成の上第三者になりすまし、これらの口座に振り込んだ購入者を騙して現金を搾取した典型的な詐欺事犯である。1997年5月9日、会社員だった当該被告人は京都地裁111号法廷で、懲役2年・執行猶予3年の有罪判決を受けている(ニフティサーブ電子掲示板詐欺事件 - 京都地裁 平成8年(わ)1226号・1312号・平成9年(わ)、判例時報1613号156ページ掲載)。
注釈
出典
- ^ “NIFTY-Serve、会員200万人を達成”. PC Watch (1996年9月19日). 2012年5月9日閲覧。
- ^ “ニフティサーブをWWWから見られる「ニフティインターウェイ」がサービス拡大”. INTERNET Watch (1997年9月25日). 2012年9月3日閲覧。
- ^ “パソコン通信「NIFTY-Serve」が限定復活?! ニフティ創立25周年記念サイト”. インプレス. (2011年4月15日) 2012年5月25日閲覧。
- ^ “新「NIFTY-Serve」提供開始、昔のハンドルで“フォーラム”に出入り可能”. インプレス. (2012年5月24日) 2012年5月25日閲覧。
- ^ 松林庵洋風「日本のネットワーク20年を振り返る~スペシャルセッションレポート」(Internet Watch、2004年7月1日)
- ^ 国立国会図書館サーチ:R100000002-I000000082514
- ^ OLTJ、OPEN KITCHEN - 2023年10月5日閲覧。
- ^ a b 新入社員はNIFTY-Serveを知らぬ世代、30周年記念の「社史」で共有するニフティの歴史・我々の歴史、INTERNET Watch、2016年2月16日。
- ^ 国立国会図書館サーチ:R100000002-I000000103910
- ^ ニフティ SUPER INTERNET、@nifty - 2023年10月5日閲覧。
- ^ 国立国会図書館サーチ:R100000002-I000000108276
- ^ a b 国立国会図書館サーチ:R100000002-I000004054679
- ^ “(原審・東京地方裁判所平成6年(ワ)第7784号,同第24828号損害賠償・反訴請求事件 (原審言渡日平成9年5月26日))” (PDF). 裁判所 - Courts in Japan. p. 4. 2022年6月9日閲覧。
- ^ 平成9年(ネ)第2631号・第2633号・第2668号 損害賠償・反訴各請求控訴事件、第5633号 付帯控訴事件 (東京高等裁判所 平成13年9月5日判決)
- ^ 平成11年(ワ)第2404号 損害賠償請求事件 (東京地裁 平成13年8月27日判決)
- ^ 判例時報1778号90頁、判例タイムズ1086号181頁
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