チュヂ族 チュヂ族の概要

チュヂ族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/04 22:40 UTC 版)

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語源

「チュヂ(чудь)」という名称の語源は、「不思議な・奇妙な」という意味の言葉(参照 - 現代ロシア語:чудный)とする説、フィン・ウゴル系言語の神話上の人物(参照 -サーミ語:čutte)に拠るとする説、ゴート語で人々を意味するþiudаとする説などがある。

民族

史料上の言及

(留意事項):本節では歴史的民族に対して「族」を用いている日本語文献の表記に従い、「- 族」の呼称で統一している。また、カタカナ表記は便宜上、ロシア語からの転写に統一している。

レートピシ(ルーシの年代記)等における、「チュヂ」という表記での主な言及は以下のとおりである。(ただし文脈上、明らかに他のフィン・ウゴル系部族も含めて「チュヂ」として言及されているものがある。)

上記以外にも、チュヂ族は907年980年にキエフ大公の遠征軍に加わっている[7]。10世紀末にはチュヂ族の兵士が、遊牧民ペチェネグ族に対する防衛軍としてルーシ南部に置かれた[7]。これらの記述のうち、「リューリク招致伝説」のチュヂ族については、19世紀の歴史家セルゲイ・ソロヴヨーフ(ru)によって、ヴォドスカヤ・ピャチナ(ru)(ノヴゴロド圏(ru)の区画の1つ)に住むヴォヂ族ではないかという仮説が提唱された[8]。また、キエフ大公ヤロスラフの征服したチュヂ族は、ユーリエフの位置より、エストィ族(ru)ロシア語: Эстыエストニア語ではAestii)がチュヂ族として言及されているとみなされうる。なお、より後世の年代記では、エストィ族とセツ族(ru)エストニア語ではSetud)をさしてチュヂ[要出典]、さらにはチュヂ・プスコフスカヤ(プスコフのチュヂ族)と称している。

現在

今日のウドムルト人の中には、チュドヤ(Чудъя)、チュドナ(Чудна)等の名をもつ氏族があり、また、非キリスト教徒のコミ人(ru)の中に、自身や先祖を同様の名称で呼ぶものがある[11]。ロシアでは2002年に、2002年全ロシア国勢調査に際して、独立した一個の民族の名称として「ロシア連邦の民族・言語の一覧」中のコードの1つ(No.351)にチュヂの名称が記載された[12]。地名としては、ロシアの都市チュドヴォ、チュド湖(ru)[注 4]、(また、おそらくはチュチ川(ru)も)がチュヂ族の名に由来する。


注釈

  1. ^ 「ヴォヂ」はロシア語: Водьの転写による。vaďďalaizõd
  2. ^ 「沿バルト=フィングループ」はロシア語: прибалтийско-финской группыの直訳による。
  3. ^ チュフネツは現在もフィンランド人エストニア人に対する侮蔑語として用いられることがある[9]
  4. ^ ロシアとエストニアの間にある一連の湖を、ロシア語では北から順に、チュド湖(Чудское озеро)、チョプロエ湖(ru)(Тёплое озеро)、プスコフ湖(ru)(Псковское озеро)の3湖に区分している。(エストニア語では北からペイプシ湖、レーミ湖、ピヒクバ湖。)詳しくはペイプシ湖を参照されたし。

出典

  1. ^ 田中陽兒『世界歴史大系 ロシア史 1 -9世紀~17世紀-』p75・76
  2. ^ 和田春樹編『ロシア史』p21
  3. ^ 田中陽兒『世界歴史大系 ロシア史 1 -9世紀~17世紀-』p75
  4. ^ 中村喜和訳『原初年代記』// 『ロシア中世物語集』p8
  5. ^ 中村喜和訳『原初年代記』// 『ロシア中世物語集』p9
  6. ^ 國本哲男訳『ロシア原初年代記』p23
  7. ^ a b c 田中陽兒『世界歴史大系 ロシア史 1 -9世紀~17世紀-』p76
  8. ^ Труды IV археологического съезда. Казань, 1884. Т. I.
  9. ^ 井桁貞義『露和辞典』p1266
  10. ^ Пименов В. В. Вепсы: очерк этн. истории и генезиса культуры. М.; Л., 1965.
  11. ^ Напольских В. В. Географическая привязка и этноязыковая идентификация летописной Югры.
  12. ^ АЛФАВИТНЫЙ ПЕРЕЧЕНЬ НАЦИОНАЛЬНОСТЕЙ И ЭТНИЧЕСКИХ НАИМЕНОВАНИЙ


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