サイドワインダー (ミサイル) 第4世代

サイドワインダー (ミサイル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/23 14:28 UTC 版)

第4世代

AIM-9X

AIM-9X
種類 短距離空対空ミサイル
製造国 アメリカ合衆国
性能諸元
ミサイル直径 12.7cm(5in)
ミサイル全長 302cm(119in)
ミサイル全幅 翼幅(後部動翼):44.45cm(17.5in)
翼幅(前部固定翼):35.31cm(13.9in)
ミサイル重量 85.3kg(188lb)
弾頭 9.4kg(20.8lb)WDU-17/B
射程 40+km(22+nm)
推進方式 Mk.36固体燃料ロケット
誘導方式 中途航程:INS+COLOS
終末航程:赤外線画像(IIR)
飛翔速度 マッハ2.5+
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当初、サイドワインダーの開発は第3世代で終了し、その後継としては、北大西洋条約機構(NATO)諸国で共同開発したASRAAMが採用される計画であった。しかしアメリカは1980年代のうちにこの計画から脱退し、サイドワインダーの最終発達型をその代役とすることにした。これがAIM-9Xであり[15]、1986年より、秘密裏に開発が開始されていたとされている[1]

AIM-9Xは、弾体設計から一新され、操向性能向上のために大きな変更が行われた。操舵翼は前翼から後翼に変更され、固定化された前翼に代わって小型化された後部翼で操舵を行う。このため、後部の操舵装置への配線を通すため、弾体の下部にカバーが設置された。また、XAAM-N-7に用いて以来、AIM-9Mに至るまで採用されていたローレロンが廃されている。推力偏向制御方式も導入された。また、最大射程は40km程度まで延伸されている。

赤外線センサの受光素子は第3世代サイドワインダーと同じアンチモン化インジウム(InSb)だが、AIM-9Xでは面素子 (focal-plane array, FPAとされており、赤外線画像(IIR)誘導方式となる。このFPA型赤外線センサの解像度は128x128ピクセルであり、感度はAIM-9Mのそれと比して400倍に向上しているとされる。赤外線センサの冷却機構には、第3世代機のジュール=トムソン効果から、-9Xではクライオエンジンと呼ばれるスターリング冷凍機に変更されているため、ガスタンクを必要とせず電力供給のみでシーカー部の冷却が行えるようになり、冷却時間による制約を受けることが無くなった。なお、この赤外線センサはヒューズ社によって開発されたものであり、基本的に、同社がASRAAMに提供しているものと同じ技術に基づいている。

また、赤外線センサーの追尾可能角を大幅に拡大するとともに中間慣性誘導(INS) も導入し、限定的な発射後ロックオン(LOAL)およびオフボアサイト発射機能を備えている[18]ヘッドマウントディスプレイによってロックオンするシステム(JHMCS:Joint Helmet Mounted Cueing System)を使用することによって真横を飛行する敵をロックオンすることが可能となった。

性能を最大限生かすには、MIL-STD-1553B デジタルデータバスが必要となるが、それを持たない旧式の機体でもAIM-9Mとして認識され使用可能である。

AIM-9X-2(AIM-9XブロックII)

改良型。信管をDSU-41Bに換装、固体燃料ロケットの点火用バッテリーを新たに装備し、点火安全装置も新しくして自動化した。処理プロセッサが新しくなり、ブロック1では限定的だった発射後ロックオン(LOAL)が拡張されてフルに使えるようになった[18]。また、母機からミサイルに対するデータリンク(AIM-120Dに装備されたものと同じもの)が装備されており[19]、レーダーで誘導が行える。射程は約2倍に延伸されており、ほぼBVR兵器といえる[20]。しかし、ブロックIと比べHMDを使わないときのオフボアサイト能力が低下しているとされており、ソフトウェアのクリーンアップが計画されている[21]2008年にテストが行われ、2014年にIOCを獲得、2015年8月17日に完全量産に移行した[22]。また、レイセオンではブロックIIにブロックIの空対地能力付与ソフトウェアの追加を行うことを検討している[23]

左右180度、真後ろの敵もロックすることができる。

AIM-9X-3(AIM-9XブロックIII)

研究が進められていた改良型。PBXN-122弾頭と新型ロケットモーターの装備により、射程の60%延伸と破壊力向上を図る。2016年にエンジニアリングと製造開発(EMD)、2018年に運用テストを行い、2022年の初期作戦能力獲得を目指していたが[24][25]2015年2月3日にキャンセルが発表された。ただし、ブロック3が装備する弾頭の研究は継続される[26]

同世代機


注釈

  1. ^ 当初、海軍ではAAM-N-7、空軍ではGAR-8と称されていたが、1963年の三軍共通命名規則の導入によって現在の名称となった。
  2. ^ また、1956年2月に発生した事故への対応の不備も、サイドワインダーの導入を後押ししたと言われている。このとき、海軍のA3D-1が事故を起こして乗員が脱出した後も機体が飛行を続けていたことから、空軍のF-100が緊急発進して撃墜しようとしたものの、20ミリ機銃のみではほぼダメージを与えられなかったことから、より強力な武装を既存の戦闘機に搭載する必要性がクローズアップされた[10]
  3. ^ ただし空軍はより悲観的で、0.285と見積もった。なおベトナム戦争時の452発のサイドワインダーの発射記録から算出されたSSKPは0.18であった[1]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l Friedman 1997, pp. 427–430.
  2. ^ a b Westrum 2013, ch.3 The Problem Takes Shape.
  3. ^ a b c Westrum 2013, ch.4 The Wrong Laboratory.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Westrum 2013, ch.14 Early Generations.
  5. ^ Westrum 2013, ch.5 Struggles with Infrared.
  6. ^ a b c d Westrum 2013, ch.7 Systems Engineering.
  7. ^ Westrum 2013, ch.8 The Painted Bird.
  8. ^ a b Westrum 2013, ch.9 Crunch Time.
  9. ^ a b c d e Westrum 2013, ch.10 To the Fleet.
  10. ^ Westrum 2013, ch.11 Selling the Air Force.
  11. ^ a b c d e f g h Kopp 1994.
  12. ^ Westrum 2013, ch.16 In Combat.
  13. ^ 関賢太郎 (2018年9月24日). “空対空ミサイル60年、台湾に始まるその歴史とは ガラリと変わった「戦闘機のあり方」”. 乗りものニュース. https://trafficnews.jp/post/81423 
  14. ^ 技術研究本部 1978, pp. 145–146.
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m Westrum 2013, ch.15 Later Generations.
  16. ^ Gordon 2005, p. 24.
  17. ^ ATK Launch Systems - Sidewinder Propulsion System
  18. ^ a b AIM-9X Air-to-Air Missile Upgrade
  19. ^ 航空ファン2011年5月号
  20. ^ Upgrades Keep Navy Air-to-Air Weapons on the Cutting Edge
  21. ^ AIM-9X Block II performing better than expected
  22. ^ 発射後ロックオン可能なAIM-9X Block II 、完全量産へ移行
  23. ^ Raytheon plans to add more capability to AIM-9X Block II as USN boosts missile buy
  24. ^ 世界の名機シリーズ F-35 ライトニングII P.41
  25. ^ US Navy hopes to increase AIM-9X range by 60%
  26. ^ F-35Cs Cut Back As U.S. Navy Invests In Standoff Weapons





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