キャブレター 自動車等

キャブレター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/11 01:06 UTC 版)

自動車等

二輪車のキャブレター(矢印)
キャブレターのフロート(矢印)
オートバイ用キャブレターのメインジェットの一例
1990年式日産・マイクラのMA10Sエンジン。円盤形のエアクリーナーボックスの下にダウンドラフトキャブレターを搭載している。

ガソリンエンジンを搭載した自動車やオートバイでは古くからキャブレターが利用されてきたが、排出ガスの規制や性能への要求が高まるにつれて燃料噴射装置(フューエルインジェクション)が採用されるようになった。先進国で新規に販売、登録される自動車はほとんどが電子制御燃料噴射を採用しており、キャブレターはガソリンエンジン自動車の主流ではなくなった。日本で販売される市販車で最後にキャブレターを搭載していたのは、軽自動車ではスズキ・キャリイ(10代目最初の1年のDA52Tまで。)、(広義の)普通車では2002年12月まで生産されていた三菱・リベロカーゴ(CB1V・CB2V)だった。オートバイでは4輪自動車にやや遅れてフューエルインジェクションの採用が広がった。比較的排気量の大きな車種では燃料噴射装置が主流となったが、発展途上国向けで小排気量の車種ではキャブレターを採用する車種が少なくない。日本では、原付を含むオートバイも2006年から排ガス規制の対象となり、燃料噴射装置への移行が進んだ。

自動車やオートバイでは車両の製造時に搭載される純正のキャブレターのほかに、純正品と置き換えて利用するアフターマーケット製のキャブレターがある。アフターマーケット品は構成部品を交換してメインジェットやスロージェットなどを細かく調整できるのに対し、純正品のほとんどが車種ごとに設計されている専用品で調整用の交換部品がない場合や、あってもアフターマーケット品に比べると調整可能な項目が少なく、調整幅が狭い場合が多い。

自動車では「ツインキャブ」や「6連キャブ」などといった用語を用いて、その車種の訴求力を高めたりする場合があるが、これらは搭載されるキャブレターの数を示している。たとえば、直列4気筒エンジンにシングルステージ2バレルキャブレターを2個搭載して「ツインキャブ」と呼んだり、6気筒エンジンにシングルバレルキャブレターを6個搭載して「6連キャブ」とされる。オートバイでは各気筒に1つずつのキャブレターを搭載する車種が一般的で、訴求力のある用語としては用いられない。

メカニズム

自動車やオートバイに用いられるキャブレターは広い範囲のエンジン回転速度、あるいは広い範囲の負荷に対応するため、複雑な機能が求められる。スロットル開度に応じて適正な量の混合気を生成するだけでなく、エンジンの負荷や状態に応じて空気と燃料の混合比(空燃比)を適切に調整する機構が組み込まれる。また、排気ガス規制が適用されるようになると、排ガス中の有害成分の濃度を抑えるように補正する機能も付け加えられるようになった。

キャブレターの基本構造の1つである「ジェット」は、機能に応じて異なる位置や径のものが備えられていて、「アイドリング系統」や「スロットル系統」などと呼び分けられている。一部の機構はスロットル開度に応じて動作するように、リンク機構や吸入負圧を用いたダイヤフラムアクチュエータで作動するほか、電子制御キャブレターではサーボ機構により作動する。

メイン系統

メイン系統はスロットル系統とも呼ばれ、中速回転(部分負荷域)から高速回転(高負荷域)で燃料を送り出す経路で、メインジェット、ニードルジェットホルダ(メインエアブリードと一体)、ジェットニードル、ニードルジェットおよびメインエアジェットで構成される。ジェットニードルは細い円錐状の部品で、円筒形のニードルジェットホルダに差し込まれている。スロットルバルブの開閉に応じて、ジェットニードルが上下してニードルジェットホルダとの隙間が変化し、送り出される燃料の量が変わる。

キャブレターによっては、1個以上の小径なブースターベンチュリ(追加ベンチュリ)が、メインベンチュリの内部に設置され、スロットルバルブ微動時におけるメインベンチュリ流速変化の鈍さを補っている。

アイドリング系統

スロー系統とも呼ばれ、アイドリングなどの低速回転時に燃料を送り出す経路で、スロージェット(アイドリングジェット、パイロットジェット)、スロージェットホルダ、バイパスポート、アイドルポート、スローエアジェットで構成される。スロットルバルブが完全に閉じている位置からわずかに開かれるとき、スロットルバルブの下流に高速な気流が発生するため、スロージェットはこの位置に設けられる。   スロージェットの流路面積は変化しないが、スロットルバルブが開かれるとスロージェット付近の流速が低下して、燃料が吸い出される作用が小さくなる。すなわち、中高速回転ではアイドリング系統は働かなくなる。

スロットルバルブをアイドリングに適した開度に固定するための機構として、アイドリングアジャストスクリューと呼ばれるネジが備え付けられている。このネジを締め込むことでスロットルバルブはより開き(アイドリング回転数が上がる)、緩めることでスロットルバルブはより閉じる(アイドリング回転数が下がる)。

パワージェット

パワージェット(パワーバルブ)は、高回転高負荷時にメインジェットからの燃料供給を補助する機構である。スロットルバルブ全開付近の領域で空燃比を濃くして出力を高くする。同時に、空燃比を高くすると混合気の比熱比が小さくなるうえ、燃料の気化熱が増えるので燃焼室の過熱を防ぐ(燃料冷却という)。これにより、プレイグニッションやデトネーションを防ぐ働きがある。パワージェットは、吸気管内の圧力とスプリングで開閉制御されるバルブで、吸気管内の負圧が強い時は閉じており、スロットルバルブが開いて負圧が弱くなると開くようになっている。

パワージェットはそのエンジンの特性に応じて補正する燃料量が厳密に設定されるため、オートバイ用キャブレターなどの場合にはあらかじめ設定が固定されており、一部の市販レーサー車両[8]を除いて調整が不可能な場合が多い。

初期の2ストロークエンジンに用いられたパワージェットの中には、4ストロークエンジンのパワージェットとは逆に、吸気管内が強い負圧状態のときに開き、弱くなると閉じる設定のものが用いられているキャブレターが存在した。これは、全開領域で混合比がやや薄めになることで、より高回転まで回転が伸びていく2ストロークエンジンの特性を活かしたものである。このような動作をするキャブレターの場合には、常用回転域では常にパワージェットから燃料が供給されるため、メインジェットはパワージェットがない同サイズのキャブレターよりもやや薄めの番手が選択される。しかし、エンジン高回転域で過度にパワージェットからの燃料供給を減らすとエンジン焼き付きのリスクが大きくなる。近年の2ストロークエンジンのパワージェットはもっとシンプルな構成であり、バルブはなく、フロート室から上流側の天井部分にバイパスが設けられているだけである。これにより、吸入負圧が大きくなったときのみ、燃料が吸い出される。

いくつかの固定ベンチュリー型キャブレターではパワージェットの代わりとなる高回転高負荷時の増量機構として、可変ベンチュリー型のジェットニードルと同じメータリングロッドステップアップロッドと呼ばれる機構を用いるものもある。メータリングロッドとは全体がテーパー状に加工されている棒であり、メインジェットにある燃料通路孔に差し込まれている。メインジェットの流路面積は不変であるため、メータリングロッドを出入りさせると燃料通路の断面積を変化させることができる。メータリングロッドは吸入負圧により上下するバキュームピストン(ダイアフラム)もしくはスロットルリンケージに取り付けられており、スロットルバルブを開くとメインジェットから強制的に引き抜かれて、メインジェットの燃料流量を次第に増量していく。

加速ポンプ

パワージェットが高回転域での全般的な燃料増量補正を行うのに対して、加速ポンプは加速時などでスロットルバルブが急速に開かれた際に補正する。

チョーク系統

スターター系統とも呼ばれ、エンジン始動時に空燃比を濃くする機構である。チョークの代わりにティクラーが用いられる場合もある。自動車用のキャブレターではオートチョーク機構が組み込まれている場合もあり、オートチョークを動作させる操作としてエンジンを始動する前にアクセルを数回踏むことがユーザーマニュアルに記載されていた。

その他

EFEヒーターを裏面からみたところ。1985年式オールズモビル・Cutlass Supreme Broughamの2バレルダウンドラフトキャブレターに用いられていたもの。

一部の車両は冷間始動時の始動性向上を目的に初期燃料気化促進装置(EFE)と呼ばれる機構を持つものがある。これはインテークマニホールドとキャブレターの間に挟み込まれる格子状の電熱ヒーターであり、燃料の気化をより促進する効果がある。

キャブレターと過給器(キャブターボ)

キャブレターに過給器を取り付ける場合には、スロットルバタフライがキャブレター本体に内蔵されている関係上、通常は過給器とインテークマニホールドの間にキャブレターが置かれる。キャブレターのフロートチャンバーにもブーストが掛かれば、ベンチュリにブーストが掛かってもフロートの動作には問題はない

V型8気筒エンジンにスーパーチャージャーを搭載する場合は過給器の後ろにキャブレターを取り付けるレイアウトに比べて構成上バックタービンが発生しないメリットがあるとされるが、過給器内部に混合気が吹き込まれ圧縮される。

1962年式シボレー・コルヴェアの「モンザ・スパイダー」キャブターボエンジン
1968年式AMC・AMXのドラッグレース仕様



  1. ^ a b Random House Dictionaryより。
  2. ^ フォード V-8 新型カーブレーターカタログ[リンク切れ]
  3. ^ Principles of Gas Carburetion”. Alternate Fuels Technologies, Inc. 2014年2月5日閲覧。
  4. ^ Ford Motercraft 2バレルキャブレターのパーツリスト
  5. ^ [1]
  6. ^ 電子制御キャブの一例であるホンダ・PGM-CARB
  7. ^ 排出ガス対策を中心にしたスバルエンジンの開発 山岸曦一 - 社団法人自動車技術会
  8. ^ HRCによる RS125R/RS250Rのパワージェット設定法の説明
  9. ^ Colortune”. Autoexpertproducts.com. 2009年9月5日閲覧。[リンク切れ]
  10. ^ Expolded view”. Lectronfuelsystems.com. 2009年9月5日閲覧。







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