カワバタモロコ 保全状況評価

カワバタモロコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/30 05:02 UTC 版)

保全状況評価

  • 都道府県別レッドリスト[15]
カテゴリ 都道府県
絶滅危惧I類相当 静岡県 愛知県 岐阜県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 岡山県 徳島県[16] 香川県 福岡県 佐賀県
絶滅危惧II類相当 奈良県
情報不足 和歌山県

2015年4月現在、生息が確認されている府県すべてでレッドデータブックに記載されている。そのうち13府県で絶滅危惧I類相当に選定されている状況である。愛知県豊田市西尾市では、本種が市の天然記念物に指定されている。

生息数減少の要因

コンクリート三面化や水路の直線化などの河川・用水路の改修[17]、水田耕作放棄による水路の乾燥化および環境悪化[18]、宅地化の進行、ため池の埋め立てや管理放棄、アメリカザリガニ[19]オオクチバスブルーギル等の外来生物の捕食により各地で個体数が減少している。仔稚魚が小さいため、化学肥料や魚毒性の高い農薬の流入による生息環境の悪化も指摘されている[20]に従い餌となる微生物群が変化したことも影響したとみられる。

2015年4月現在、希少野生動植物保護条例に基づいて本種の野生個体の捕獲を禁じている自治体は、静岡県・三重県・岡山県・香川県・岐阜県安八郡輪之内町である。違法な捕獲行為に対してはそれぞれ罰則規定が設けられている[21]

なお、本種を系統保存している主な水族館は以下の通りである[22]

資源保全への取り組み

種の保全を目論んで人工環境下での養殖試験も行われ[23]、その一連の研究の中で仔魚期の給餌条件が明らかとなり[24]増殖に向けた取り組みが進んでいる。

また、カワバタモロコだけで無く小魚の生息に適した水路環境の整備を行っている例もある[25]が、保全に前向きな側と保全を進める事により生産性が低下する農業従事者間の合意形成には多くの困難もある[18]


  1. ^ Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2006). "Hemigrammocypris rasborella" in FishBase. April 2006 version.
  2. ^ a b c 金川・板井(1998)
  3. ^ a b c d e f 中村(1969):中村守純『日本のコイ科魚類』、資源科学研究所、1969年、254-257頁。ASIN B000JA2O82
  4. ^ 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)」に対する意見募集(パブリックコメント)について(国内希少野生動植物種の指定等)”. 環境省 (2019年12月25日). 2020年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月7日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j 川那部ほか(2001)
  6. ^ a b 中島淳、鬼倉徳雄、江口勝久ほか「九州北部におけるカワバタモロコの分布と生息状況」、『日本生物地理学会会報』第61巻、2006年、109-116頁。NAID 10018719565
  7. ^ 眼の後ろから尾鰭の付け根にかけての縦帯。
  8. ^ 赤田仁典、淀太我、「カワバタモロコHemigrammocypris rasborellaにおける外部形態の水域間変異」『魚類学雑誌』 2006年 53巻 2号 p.175-179, doi:10.11369/jji1950.53.175
  9. ^ a b 青山茂、田端友博、土井敏男 ほか、「神戸市の溜池で観察されたカワバタモロコの体長の性的二型と繁殖時の性比」、『日本生物地理学会会報』第63巻、2008年、29-33頁、NAID 10023903170
  10. ^ a b 宮本良太ほか「絶滅危惧種カワバタモロコの最適初期餌料系列」、『水産増殖』第56巻第4号、2008年、573-579頁
  11. ^ 秋山・上田・北野(2003)、33頁。
  12. ^ 田中哲夫・山科ゆみ子・三浦康弘「ため池のカワバタモロコ個体群の変動」、『関西自然保護機構会誌』第23巻第2号、2001年、99-107頁。
  13. ^ 鬼倉徳雄、中島淳「コイ科魚類の生活史:現代における記載的研究の意義」、日本生態学会編『淡水生態学のフロンティア』、共立出版、2012年、85-97頁。
  14. ^ カワバタモロコ (PDF) 環境省
  15. ^ 各府県版レッドデータブックの記載による。
  16. ^ 徳島県版レッドデータブック(2001年)では「絶滅」と記載されていたが、2004年に在来の個体群が再発見された。2014年のレッドリスト改訂によって絶滅危惧IA類に記載された。この個体群は徳島県水産研究所にて系統保存され、2012年からは徳島県が地元の企業や学校等と協定を結んで、増殖への取り組みを進めている。「カワバタモロコ 繁殖成功 絶滅危惧種の小型淡水魚、水槽を屋外に移し産卵」、『毎日新聞』(徳島版)2011年5月21日付・「絶滅危惧I種の淡水魚、カワバタモロコ繁殖 県水産研究所が成功」、『徳島新聞』2011年7月2日付・「県、試験飼育へ協定 絶滅危惧I種カワバタモロコ」、『徳島新聞』2012年6月5日付・絶滅のおそれのある小魚-カワバタモロコ
  17. ^ 有明海沿岸の水路(クリーク)における調査によると、コンクリート護岸が高く、水位が高い時季(主に夏季)であっても水面が護岸を超えないクリークでは、本種は全く出現しなかったことが明らかになった。鬼倉徳雄ほか「有明海沿岸域のクリークにおける淡水魚類の生息の有無・生息密度とクリークの護岸形状との関係」、『水環境学会誌』第30巻第5号、2007年、277-282頁に詳述。
  18. ^ a b 久米学、森誠一、「水田・水路生態系における魚類研究の発展に向けて」 『応用生態工学』 2012年 15巻 2号 p.287-291, doi:10.3825/ece.15.287
  19. ^ 吉村元貴、石田真隆、升形拓郎、石川聡子、近藤高貴、カワバタモロコ個体群に及ぼすアメリカザリガニの影響 大阪教育大学紀要 第Ⅲ部門 自然科学・応用科学 2015年3月5日, Vol.63 (2) p.1-6]
  20. ^ 木村清朗「カワバタモロコ」、環境省自然環境局野生生物課編『改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物4 汽水・淡水魚類』、財団法人自然環境研究センター、2003年、92-93頁。
  21. ^ 静岡県:1年以下の懲役または50万円以下の罰金、三重県:6か月以下の懲役または30万円以下の罰金、岡山県・香川県:1年以下の懲役または100万円以下の罰金、輪之内町:5万円以下の過料にそれぞれ処せられる。
  22. ^ 片野修・森誠一監修・編『希少淡水魚の現在と未来-積極的保全のシナリオ』、信山社、2005年、361-367頁、 ISBN 978-4797225792
  23. ^ 高久宏佑、細谷和海、『絶滅危惧種カワバタモロコの人工繁殖』 水産増殖 = The aquiculture 56(1), 13-18, 2008-03-20, NAID 10026138935
  24. ^ 宮本良太, 勝呂尚之, 高久宏佑, 細谷和海、【原著論文】「絶滅危惧種カワバタモロコの最適初期餌料系列」 『水産増殖』 2008年 56巻 4号 p.573-579, doi:10.11233/aquaculturesci.56.573
  25. ^ 松村史基、「カワバタモロコの保護と排水路改修の両立への試み 」『農業土木学会誌』 1993年 61巻 11号 p.1009-1012,a1, doi:10.11408/jjsidre1965.61.11_1009


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