エントロピー 概要

エントロピー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/29 01:58 UTC 版)

概要

エントロピーは、熱力学統計力学情報理論など様々な分野で使われている。しかし分野によって、その定義や意味付けは異なる。よってエントロピーを一言で説明することは難しいが、大まかに「何をすることができて、何をすることができないかを、その大小で表すような量」であると言える[1]

エントロピーに関わる有名な性質として、熱力学におけるエントロピー増大則がある。エントロピー増大則は、断熱条件の下でがある平衡状態から別の平衡状態へ移るとき、遷移の前後で系のエントロピーが減少せず、殆ど必ず増加することを主張する。断熱条件の下で系の平衡状態が A から B への遷移が可能な場合、系のそれぞれの平衡状態におけるエントロピーの間には

のような結晶性固体は、結晶構造に従って分子が配列される。

一方、のような液体水蒸気のような気体は、自由な分子配置をとれる。 このため、液体や気体が取り得る状態の数が固体に比べて大きく、エントロピーも大きい。

エントロピーに関する法則としてもう一つよく知られるものに、統計力学におけるボルツマンの原理がある。ボルツマンの原理は、ある巨視的な系のエントロピーを、その系が取り得る微視的な状態の数と関係づける。微視的な状態数が W のときのエントロピーは

で表される。比例係数 kボルツマン定数と呼ばれる[2]。系の巨視的な状態は、系のエネルギー体積物質量などの巨視的な物理量の組によって定められるが、それらの巨視的な物理量を定めたとしても系の微視的状態は完全には定まらず、いくつかの状態を取り得る。状態数とは巨視的な拘束条件の下で可能な微視的状態の数を見積もったものである。ボルツマンの原理から、可能な微視的状態の数が増えるほどにエントロピーが大きいことが解る(対数は狭義の単調増加関数である)。逆に、微視的状態が確定する[注 2] W = 1 の状況ではエントロピーが S = 0 となる。可能な微視的状態の数が増えるということは、巨視的な情報しか知り得ないとすれば、それだけ微視的世界に関する情報が欠如していると捉えることができ、この意味でボルツマンの原理はエントロピーの微視的乱雑さを表す指標としての性格を示している。


出典

  1. ^ 田崎 & 田崎 2010, 『RikaTan』10-12月号.
  2. ^ IUPAC Gold Book
  3. ^ 出典は情報量#歴史を参照
  4. ^ フェルミ 1973.
  5. ^ 佐々 2000.
  6. ^ 田崎 2000.
  7. ^ 清水 2007.
  8. ^ Clausius 1865.
  9. ^ 田崎 2000, pp. 16; 107-110, 1-3 本書の内容について; 6-4 エントロピーと熱.
  10. ^ 田崎 2000, p. 16, 1-3 本書の内容について.
  11. ^ Lieb & Yngvason1999.
  12. ^ リーブ & イングヴァソン 2001, pp. 4-12, 『パリティ』Vol. 16, No. 08.
  13. ^ 佐々 2000田崎 2000清水 2007などを参照。

注釈

  1. ^ 「でたらめさ」と表現されることもある。ここでいう「でたらめ」とは、矛盾や誤りを含んでいたり、的外れであるという意味ではなく、相関がなくランダムであるという意味である。
  2. ^ ここでいう「微視的状態が確定する」ということは、あらゆる物理量の値が確定するという意味ではなく、なんらかの固有状態に定まるという意味である。従って量子力学的な不確定性は残る。
  3. ^ カルノーの定理においては一般には熱効率の上限は ηmax = f(T1, T2) の形で証明されている。この表式が成り立つように、熱力学温度絶対温度T を定義する。たとえば、セルシウス度ファーレンハイト度を使った場合には、熱効率の式はやや複雑な形になる。
  4. ^ a b d'は状態量でない量の微小量ないし微小変化量を表す。文献によってしばしば同様の意味でδが用いられる。
  5. ^ 古典系の場合は状態を可算個として扱えない。したがって、例えば自由度fの古典系であれば、位相空間上の一点をΓ = (Q1, Q2, …, Qf, P1, P2, …, Pf)と表し、ここに一様な確率測度dΓ/hfを導入する(ここでP, Q正準変数hプランク定数)。こうすることにより、積分

    でエントロピーを定義できる。

  6. ^ ボルツマン定数を1とする単位系を取れば、エントロピーは情報理論におけるエントロピー(自然対数を用いたもの)と完全に一致し、無次元量となる。簡便なので、理論計算などではこの単位系が用いられることも多い。なお、この単位系では温度は独立な次元を持たず、エネルギーと同じ次元となる。
  7. ^ 量子系では厳密には、エネルギーが量子化されているため、ほとんど至るところEにおいてE = Eiは満たされない。そのため、その間に十分多くのエネルギー固有状態が入るエネルギー間隔ΔEを定義し、条件を|EEi|< ΔEと緩めることにする。





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