出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/30 00:37 UTC 版)
性質
この節において I は可換環 R のイデアルである。
- Rad(Rad(I))=Rad(I) は常に正しい。さらに、Rad(I) は I を含む最小の根基イデアルである。
- Rad(I) は I を含む R のすべての素イデアルの共通部分である[6]。もう少し強いことが言える。I の根基は I を含む R の素イデアルのうち極小なものの共通部分である。
- 直前の特別な例として、ベキ零根基(すべてのベキ零元の集合)は R のすべての素イデアルの共通部分に等しい。
- 環 R のイデアル I が根基であるのは商環 R/I が被約であるとき、かつそのときに限る。
応用
根基を研究する主要な動機付けは可換環論で有名なヒルベルトの零点定理である。この定理の簡単に理解できるバージョンは次のようなものである。代数的閉体 k と、体 k 上の n 個の不定元 の任意の有限生成多項式イデアル J に対して、
が成り立つ。ただし、
であり
である。
これは次のようにも言える。環のイデアルの集合における合成 は実は閉包演算子(英語版)である。根基の定義から、根基をとる操作はベキ等であることは明らかである。
脚注
- ^ 直接の証明は次のように与えられる。
a と b をイデアル I の根基の元とすると、ある正整数 m と n が存在して、an と bm は I の元である。a + b が I の根基の元であることを示す。(可換性が仮定されているので)二項定理を使って (a+b)n+m−1 を展開すると、
となる。各 i に対し、次の条件のうちちょうど1つが成り立つ。
これにより、各式 aibn+m− 1 − i において、a の指数が十分大きくその a のベキが I に入るか、b のベキが十分大きくその b のベキが I の入るか、いずれかが成り立つ。(I はイデアルだから)I の元と R の元の積は I に入るので、この積の式も I に入り、(a+b)n+m−1 も I に入り、したがって a+b は I の根基に入る。
根基がイデアルであることを確認することを終えるために、根基の元 a をとり、an が I の元であるとし、さらに任意の元 r∈R をとる。すると、(ra)n = rnan は I の元なので、ra は根基の元である。したがって根基はイデアルである。
- ^ Atiyah–MacDonald 1969, Proposition 7.14
- ^ Atiyah–MacDonald 1969, Proposition 4.2
- ^ 証明: より .
- ^ Lang 2002, Ch X, Proposition 2.10
- ^ 証明。任意の素イデアルは根基なので、この共通部分は Rad(I) を含む。逆に、r を R の元であって Rad(I) の元でないとし、S を集合 {rn|n は非負整数} とする。Rad(I) の定義によって、S は I と交わらない。S はまた積閉集合である。したがって、クルルの定理の変形によって、I を含み S と交わらない素イデアル P が存在する。(prime ideal を見よ。)P は I を含むが r を含まないので、このことは r が I を含む素イデアルの共通部分に入っていないことを示している。