アジサイ属
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 08:59 UTC 版)
含まれる可能性のある属
アジサイ属は側系統であり、アジサイ族の他の属を吸収させて単系統とすることが考えられている[11]。
- クサアジサイ属 Cardiandra - クサアジサイ Cardiandra alternifolia Sieb. et Zucc. など4種。草本で、アジサイ様の花を咲かせる。
- ギンバイソウ属 Deinanthe - 2種。
- シマユキカズラ属 Pileostegia - 4種。
- イワガラミ属 Schizophragma - イワガラミ Schizophragma hydrangeoides Sieb. et Zucc. など2種。ツルアジサイに似るが、装飾花が一弁。
- セキヘキノキ属 Decumaria - 2種。
- バイカアマチャ属 Platycrater - バイカアマチャ Platycrater arguta の単型属。
- ハワイアジサイ属 Broussaisia - ハワイアジサイ Broussaisia arguta の単型属。
- ジョウザン属 Dichroa - 12種。
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イワガラミ Schizophragma hydrangeoides
類似した群
分類上の位置は大きく異なるがレンプクソウ科(旧分類ではスイカズラ科)ガマズミ属にも低木で散房花序の周辺部に装飾花をつけるものがあり、やや様子が似ている。ムシカリ (Viburnum furcatum) やヤブデマリ (Viburnum plicatum f. tomentosum) などがその代表で、ヤブデマリではアジサイと同様に装飾花だけからなる園芸品種オオデマリ (f. plicatum) があるのもよく似ている。
毒性
アジサイ属(広義アジサイ)の一部の種では、ウシ、ヤギ、人などが摂食したことによる中毒事例が報告されている。症状は過呼吸、興奮、ふらつき歩行、痙攣、麻痺などを経て死亡する場合もある[要出典]。1920年にアメリカでアジサイの1種アメリカノリノキ Hydrangea arborescens によるウシとウマでの中毒について、下痢・体温上昇・呼吸数と心拍数の増加・骨格筋の強い収縮・足を突っ張って飛び上がるなどの症状が見られたが、対症療法により回復したと報告されている[35][36]。日本では2008年6月に、料理の飾りに使われたアジサイの葉を摂食した客が中毒する事故が発生し、嘔吐・めまい・顔面紅潮の症状を示した[36][37][38]。
アジサイ属の毒性物質は明らかにされていない[37]。1920年のアメリカでの報告[35]から、根から抽出されたヒドランギンという青酸配糖体(グリコシド)が中毒の原因であると考えられていたが[37][39]、1963年にこれは誤りであると報告されている[36]。すなわち、ヒドランギンとされた化合物は実際には窒素(青酸)を含まないウンベリフェロン(7-ヒドロキシクマリン)であった[40]。また2008年の日本の中毒例でも、つくば市の件では青酸配糖体は検出されておらず[36]、大阪では葉1グラムあたり29マイクログラムと微量であった[41]。これを受けて厚生労働省は2008年8月18日付けで「アジサイの喫食による青酸食中毒について(2008年7月1日)」の文書を廃止した[42]。
2009年に京都薬科大学の吉川らは中国産のアジサイから青酸配糖体としてヒドラシアノシド類を単離したと報告したが[43]、京都産のものには含まれないなど青酸配糖体の量や種類には品種による差があると述べている[37]。一方アジサイ科ジョウザン属のジョウザンに含まれるアルカロイドの一種、フェブリフギンがアジサイにも見られることが報告されているが[44]、この化合物が中毒の原因であるかは明らかではない[37]。
一方で毒性のないものもあり、アマチャなどは食用にされる。
注釈
出典
- ^ a b Hydrangea Tropicos
- ^ 日外アソシエーツ, ed. (2008), 植物3.2万名前大辞典, 日外アソシエーツ
- ^ あじさいの語源あれこれ(FEEL成田:成田市観光協会公式サイト)
- ^ アジサイ/紫陽花/あじさい(語源由来辞典)(語源由来辞典、株式会社ルックバイス)
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- ^ Chem-Station スタッフ 科学者のつぶやき
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