アジサイ属 含まれる可能性のある属

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アジサイ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 08:59 UTC 版)

含まれる可能性のある属

アジサイ属は側系統であり、アジサイ族の他の属を吸収させて単系統とすることが考えられている[11]

類似した群

分類上の位置は大きく異なるがレンプクソウ科(旧分類ではスイカズラ科ガマズミ属にも低木で散房花序の周辺部に装飾花をつけるものがあり、やや様子が似ている。ムシカリ (Viburnum furcatum) やヤブデマリ (Viburnum plicatum f. tomentosum) などがその代表で、ヤブデマリではアジサイと同様に装飾花だけからなる園芸品種オオデマリ (f. plicatum) があるのもよく似ている。

毒性

アジサイ属(広義アジサイ)の一部の種では、ウシヤギなどが摂食したことによる中毒事例が報告されている。症状は過呼吸、興奮、ふらつき歩行、痙攣麻痺などを経て死亡する場合もある[要出典]。1920年にアメリカでアジサイの1種アメリカノリノキ Hydrangea arborescens によるウシとウマでの中毒について、下痢・体温上昇・呼吸数と心拍数の増加・骨格筋の強い収縮・足を突っ張って飛び上がるなどの症状が見られたが、対症療法により回復したと報告されている[35][36]。日本では2008年6月に、料理の飾りに使われたアジサイの葉を摂食した客が中毒する事故が発生し、嘔吐・めまい・顔面紅潮の症状を示した[36][37][38]

アジサイ属の毒性物質は明らかにされていない[37]。1920年のアメリカでの報告[35]から、根から抽出されたヒドランギンという青酸配糖体(グリコシド)が中毒の原因であると考えられていたが[37][39]、1963年にこれは誤りであると報告されている[36]。すなわち、ヒドランギンとされた化合物は実際には窒素(青酸)を含まないウンベリフェロン(7-ヒドロキシクマリン)であった[40]。また2008年の日本の中毒例でも、つくば市の件では青酸配糖体は検出されておらず[36]、大阪では葉1グラムあたり29マイクログラムと微量であった[41]。これを受けて厚生労働省は2008年8月18日付けで「アジサイの喫食による青酸食中毒について(2008年7月1日)」の文書を廃止した[42]

2009年に京都薬科大学の吉川らは中国産のアジサイから青酸配糖体としてヒドラシアノシド類を単離したと報告したが[43]、京都産のものには含まれないなど青酸配糖体の量や種類には品種による差があると述べている[37]。一方アジサイ科ジョウザン属のジョウザンに含まれるアルカロイドの一種、フェブリフギンがアジサイにも見られることが報告されているが[44]、この化合物が中毒の原因であるかは明らかではない[37]

一方で毒性のないものもあり、アマチャなどは食用にされる。


注釈

  1. ^ ラテン文字翻字:hydro
  2. ^ ラテン文字翻字:angeion

出典

  1. ^ a b Hydrangea Tropicos
  2. ^ 日外アソシエーツ, ed. (2008), 植物3.2万名前大辞典, 日外アソシエーツ 
  3. ^ あじさいの語源あれこれ(FEEL成田:成田市観光協会公式サイト)
  4. ^ アジサイ/紫陽花/あじさい(語源由来辞典)(語源由来辞典、株式会社ルックバイス)
  5. ^ a b c d 山本 (1981)、15頁。
  6. ^ a b マレー (2009)、240頁。
  7. ^ 山本 (1981)、15–16頁。
  8. ^ マレー (2009)、240–241頁。
  9. ^ a b c d e 河原田、三上、若林 (2010)、9頁。
  10. ^ 佐藤嘉彦「アジサイ(広義)の葉の解剖学的研究」『横浜国立大学理科教育実習施設研究報告』第5巻、1989年、15–26頁、NAID 110006151494 
  11. ^ a b c d e f g h i j k Samain, Marie-Stéphanie; Wanke, Stefan; Goetghebeur, Paul (2010), “Unraveling Extensive Paraphyly in the Genus Hydrangea s. l. with Implications for the Systematics of Tribe Hydrangeeae”, Systematic Botany 35 (3), http://www.researchgate.net/publication/232273406_Unraveling_Extensive_Paraphyly_in_the_Genus_Hydrangea_s._l._with_Implications_for_the_Systematics_of_Tribe_Hydrangeeae/file/9fcfd507fb68ba2371.pdf 
  12. ^ a b Haworth-Booth, Michael (1975), The Hydrangeas, Constable, ISBN 978-0094603707 
  13. ^ 河原田、三上、若林 (2010)、5頁。
  14. ^ a b c d e f g h マレー (2009)、61頁。
  15. ^ a b 山本 (1981)、17頁。
  16. ^ 北村、村田 (1979)、112頁。
  17. ^ マレー (2009)、62頁。
  18. ^ a b c 北村、村田 (1979)、114頁。
  19. ^ a b c 河原田、三上、若林 (2010)、26頁。
  20. ^ Reed, Sandra M.; Rinehart, Timothy A. (2006), “Hydrangea macrophylla and serrata – Should we Lump ‘em or Split ‘em?”, SNA Research Conference 51: 573–576, http://naldc.nal.usda.gov/download/45326/PDF 
  21. ^ a b 北村、村田 (1979)、116頁。
  22. ^ a b 河原田、三上、若林 (2010)、88頁。
  23. ^ 河原田、三上、若林 (2010)、91頁。
  24. ^ a b c d e f g h マレー (2009)、29–31頁。
  25. ^ 北村、村田 (1979)、111頁。
  26. ^ a b c d 北村、村田 (1979)、113頁。
  27. ^ 河原田、三上、若林 (2010)、18頁。
  28. ^ a b c d 北村、村田 (1979)、112頁。
  29. ^ a b c 河原田、三上、若林 (2010)、154頁。
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  31. ^ a b Spencer, Roger (2002). Horticultural Flora of South Eastern Australia. Sydney: UNSW Press. p. 28. ISBN 0-86840-660-0 
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  33. ^ 河原田、三上、若林 (2010)、6頁。
  34. ^ a b 河原田、三上、若林 (2010)、22頁。
  35. ^ a b Bruce, E. A. (1920). “Hydrangea poisoning”. Journal of the American Veterinary Medical Association 58: 313–315. 
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  37. ^ a b c d e 数馬恒平. “アジサイ”. 自然毒のリスクプロファイル. 厚生労働省. 2012年6月24日閲覧。
  38. ^ “アジサイの葉食べ食中毒 大阪市の居酒屋で”. 朝日新聞. (2008年6月30日). http://www.asahi.com/health/news/OSK200806300067.html 
  39. ^ アジサイ”. 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 (2009年12月8日). 2012年6月24日閲覧。
  40. ^ Palmer, K. H. (1963). “The structure of hydrangin”. Canadian Journal of Chemistry 41 (9): 2387–2389. doi:10.1139/v63-348. 
  41. ^ “アジサイの葉は毒?原因物質検出できず…昨年2件の食中毒”. 読売新聞. (2009年3月17日). https://web.archive.org/web/20090321032946/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090317-OYT1T00919.htm [リンク切れ]
  42. ^ アジサイの喫食による食中毒について (PDF) 厚生労働省 - 2008年8月18日
  43. ^ Nakamuraa, Seikou; Wanga, Zhibin; Xua, Fengming; Matsudaa, Hisashi; Wub, Lijun; Yoshikawa, Masayuki (2009). “The absolute stereostructures of cyanogenic glycosides, hydracyanosides A, B, and C, from the leaves and stems of Hydrangea macrophylla”. Tetrahedron Letters 50 (32): 4639–4642. doi:10.1016/j.tetlet.2009.05.111. 
  44. ^ 加藤正博, 稲葉美代志, 板鼻秀信 ほか「生薬および関連植物の抗コクシジウム活性成分の探索-1-アジサイからのcisならびにtrans-febrifugineの単離および抗コクシジウム活性について」『生薬学雑誌』第44巻第4号、288-292頁、NAID 1100089082592019年4月24日閲覧 
  45. ^ Chem-Station スタッフ 科学者のつぶやき


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