みえない雲 出版情報

みえない雲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/24 07:14 UTC 版)

出版情報

※日本語版のみ記載する。

小説

  • グードルン・パウゼヴァング『見えない雲』高田ゆみ子訳、小学館、1987年、ISBN 978-4-09-381302-0
  • グードルン・パウゼヴァング『みえない雲』高田ゆみ子訳、小学館〈小学館文庫〉、2006年、ISBN 978-4-09-408131-2

漫画

  • グードルン・パウゼヴァング原作、アニケ・ハーゲ画『コミック みえない雲』高田ゆみ子訳、小学館〈小学館文庫〉、2011年、ISBN 978-4-09-408658-4

映画

みえない雲
DIE WOLKE
監督 グレゴール・シュニッツラー
脚本 マルコ・クロイツパイントナー
製作 マルクス・ツィンマー
出演者 パウラ・カレンベルク
フランツ・ディンダ
音楽 シュテファン・ハンゼン、ディルク・ライヒャルト、マックス・ベルクハウス
撮影 ミヒャエル・ミーケ
編集 アレックス・ディットナー
公開 2006年3月16日
2006年12月30日
上映時間 103分
製作国 ドイツ
言語 ドイツ語
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ベルギーのヴェルヴィエ中央駅が、映画撮影のためにバートヘルスフェルト駅に改装された

解説

小説はまた、2006年、グレゴール・シュニッツラー監督により、パニック映画のスタイルで映画化された。2人の主要人物、エルマー(演:フランツ・ディンダ)とハンナ(演:パウラ・カレンベルク)の動向を中心に人々がパニックに陥る様が描写される。原子力発電所の名称は「Atomkraftwerk Marktebersberg」(日本公開時は「エバースベルト原発」)に変えられた。映画は本とこれ以上の類似性は持たず、独自のラストを迎える。 題は『The Cloud』である。

日本では、2006年7月16日から20日にかけて開催された「ドイツ映画祭2006」に『黒い雲』という日本語題で出品され、20日に上映された[5][6]。その後12月30日からは[7]正月第一弾ロードショーと銘打たれ[8]、『みえない雲』に改題されてシネカノン有楽町にて上映された[9]。12月からの上映に先立ち、原作小説の日本語題も『見えない雲』から『みえない雲』に改められて再出版された[10]

ドイツの鉄道会社が駅での撮影を許可しなかったため、バートヘルスフェルト駅での大群衆のパニックシーンは原作通りの舞台で撮影ができなかった[11]。 そこで、ベルギーワロン地域にあるヴェルヴィエ中央駅をロケ地に求め、看板などを取り付けてドイツ風に改装した。400人以上のエキストラが、3日間にわたって撮影されたこのシーンに参加している。[12]

映画は、ドイツ映画賞2007(de:Deutscher Filmpreis 2007)において最優秀青少年向け青春映画にノミネートされた。

主演女優パウラ・カレンベルクはチェルノブイリ原発事故の時に胎児であった。健康な外観で生まれたが、幼児期に検査をしたところ、心臓に穴が開いていること、片方のがないことが判明した。しかし彼女は体に障害あいてます思わせることはなく、疾走する場面も問題なくこなした。[13]

あらすじ

シュリッツに暮らす高校生のハンナは、母と弟ウリーとの幸せな暮らしを送っていた。同じクラスの優等生エルマーが少し気になっていた。その日、母が出張のためハンナがウリーの面倒をみることになった。午前の授業中、ハンナはエルマーから空き教室に呼び出されてキスをされる。その時ABC警報が鳴りだし、生徒達は帰宅させられた。混乱の中、ハンナはウリーがいる自宅へ戻る。警報は、母の出かけたシュヴァインフルトの近隣にあるエバースベルト原発での放射性物質の漏洩事故を知らせるものだった。警察の車が拡声器で家々に指示するのに逆らい、住民は家に残らず車で逃げ始めた。ハンナはエルマーが車で迎えに来ると言った約束を信じて家で待っていたが、母から電話が入り、2人でハンブルクの伯母ヘルガの元へ逃げるよう指示される。ハンナはウリーとともに、道路が避難者の車で渋滞する中を自転車で駅へ向かい、遅れて到着したエルマーと行き違いになってしまう。家に残されたスイッチが入ったままのラジオが、放射能を含んだ雲の接近を伝えた。

キャスト

(公式サイトによる)

スタッフ

  • 監督 : グレゴール・シュニッツラー (de:Gregor Schnitzler)
  • 脚本 : マルコ・クロイツパイントナー (de:Marco Kreuzpaintner)
  • 制作 : マルクス・ツィンマー
  • 撮影 : ミヒャエル・ミーケ
  • 編集 : アレックス・ディットナー
  • 録音 : ミヒャエル・ムラデノヴィッチ
  • 美術 : パトリック・スティーヴ・ミュラー
  • 衣装 : イヴァナ・ミロス
  • メイク : ハイナー・ニーヒュース、ルート・フィリップ
  • 音楽 : シュテファン・ハンゼン、ディルク・ライヒャルト、マックス・ベルクハウス
  • 挿入歌 : 「YOU SHINE / Duncan Townsend」「ENDSONG / Julia Hummer」「WOHIN / Mariannenplatz」
(公式サイトによる)

反響

小説『みえない雲』はドイツだけでも150万部が販売され、原発を推進する側の政治家や原子力業界の関係者にも読まれ、さらにドイツやベルギーにある学校の多くで国語教材として用いられるようになった。ドイツ国外においては、日本を含めた13カ国で翻訳された[14]

批評家は、本と映画が、架空の内容であるのに実際の事故が元になっているという印象を与えかねないと非難した。また原子力発電の推進派は、このような事故がドイツの原発で起こりうることにはっきりと異議を唱えた[15]


注釈

  1. ^ 原子力発電所と学校やシュリッツとの距離は明示されていないが、登場人物の台詞として、原発と学校とは70-80km[1]、シュリッツの主人公宅とは90-100km[2]の距離を隔てているとされる。
  2. ^ 日本でのカタカナ表記としては「グラーフェンラインフェルト」が一般的である。
  3. ^ 映画『みえない雲』パンフレットでのグードルン・パウゼヴァングへのインタビュー記事内においてパウゼヴァングが明かしたところによると、作品の主張と政府の方針が異なることから実際に授賞する家庭省内で反対意見が起こり、ドイツの原子力業界も受賞を止めようとしたものの、家庭省大臣自身が審査委員会の審査結果に沿って授賞の判断を下したという。

出典

  1. ^ 『みえない雲』(小学館文庫)20頁。
  2. ^ 『みえない雲』(小学館文庫)261頁。
  3. ^ Amazon.de 『Die Wolke: Comic』で確認した綴り。(2012年1月13日閲覧)
  4. ^ a b 『コミック みえない雲』(小学館文庫)13頁。
  5. ^ “愛に生きる女たち ドイツ映画祭2006 16日~20日・有楽町朝日ホール”. 朝日新聞東京夕刊 (朝日新聞社): p. 17. (2006年7月1日) 
  6. ^ “ヘルツォークの新作など、長短編多彩に 16日から、ドイツ映画祭2006”. 朝日新聞東京夕刊 (朝日新聞社): p. 12. (2006年7月12日) 
  7. ^ 2006年12月の公開作品 - 映画の情報を毎日更新 シネマトゥデイ”. 株式会社ウエルバ. 2011年7月18日閲覧。
  8. ^ 映画『みえない雲』パンフレット裏表紙。
  9. ^ “シネマの週末・トピックス:みえない雲”. 毎日新聞東京夕刊 (毎日新聞社): p. 11. (2007年1月12日) 
  10. ^ “文庫・新書”. 朝日新聞東京朝刊 (朝日新聞社): p. 14. (2006年11月19日) 
  11. ^ https://web.archive.org/web/20070710111031/http://www.die-wolke.com/downloads/interview_schnitzler.pdf
  12. ^ DGLIVE.BE - 34k -(2007年9月28日時点のアーカイブ
  13. ^ 映画『みえない雲』パンフレット、和久本みさこ「彼女は片肺で生まれた。だから愛の力を知っている-」
  14. ^ 川崎陽子(ベルギー) (2011年5月11日). “独で150万部売上、教材にもなった原発小説”. オルタナ. 2011年5月15日閲覧。
  15. ^ Deutsches Atomforum e. V.: Energiedebatte in Deutschland auf Basis von Fakten führen, 16. März 2006 (2007年2月18日時点のアーカイブ
  16. ^ “「舞妓はレディ」上白石萌音、周防正行監督の教えを胸に舞台初主演!”. 映画.com. (2014年10月22日). http://eiga.com/news/20141022/2/ 






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