Project GENIE
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/16 15:25 UTC 版)
![]() |
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2025年9月)
|
Project GENIEは、1964年にカリフォルニア大学バークレー校で開始されたコンピュータ研究プロジェクト。主な内容は、商用化可能なタイムシェアリングシステムBerkeley Timesharing Systemの開発であり、成果はSDS 940システムとして製品化された。
歴史
当時DARPAの責任者だった J・C・R・リックライダーが組織したプロジェクトであり、規模は小さいものの、MITのProject MACに対応するプロジェクトでもある。
開発されたSDS 940システムは24ビット商用コンピュータSDS 930をタイムシェアリング用に改造したものである。プロジェクトは、ARPAの出資で Mel Pirtle と Wayne Lichtenberger が指揮した。プロジェクトには、バトラー・ランプソン、チャック・サッカー、L. Peter Deutsch も参加している[1]。完成後、940は高い信頼性を示したが、機械式の周辺機器は油圧式アームで駆動する巨大ディスク装置など実験室レベルのものであった。同時に40から50人のユーザーが使うことができ、当時としては高性能なグラフィックスシステムも備えていた。
SDS社 (Scientific Data Systems) はタイムシェアリングシステムの価値を理解するようになった。プロジェクトの成果のソフトウェアはパブリックドメインとなっていたので、SDS社はそれを製品化するための情報を収集した。SDS(後にXDS)の技術者はハードウェアの改造の詳細を理解できなかったため、彼らは930を製造して、その後にバークレーで行われた改造をそっくりそのまま施して940を製品化したという。
Project GENIEではいくつかのハードウェア技術が開発された。例えば初期の商用タイムシェアリングシステム(一般ユーザーは機械語でプログラミングする)などである。他にも分離保護されたユーザーモード、ページング方式、メモリ保護機能なども開発された。これらのコンセプトはPDP-10向けのオペレーティングシステムTENEXの開発やUNIXの開発に影響を与えた(UNIXの開発者の1人ケン・トンプソンは、バークレー校で一時期 SDS 940 をいじっていた)。SDS 940 メインフレームは、スタンフォード研究所でのダグラス・エンゲルバートのoN-Line Systemのハードウェアとして使われた。その後、SDS 940はバークレーでのCommunity Memory Projectで使われた最初のコンピュータとなった。
後継プロジェクトCalTSSではデュアルプロセッサのCDC 6400(CDC 6600の廉価版)を採用したが、1969年には終了となった[2]。
プロジェクトのメンバーはUCBを離れ、Berkeley Computer Corporation (BCC) を設立し、試作機BCC-500を製作した[3]。同社が倒産したときBCC-500はハワイ大学に送られ、1970年代を通して利用された[4]。そしてALOHAnetのノードとなった[5]。
BCC従業員の一部(ランプソン、サッカーら)は1970年にパロアルト研究所の研究員となった。Lichtenbergerはハワイ大学へ移り、その後シスコシステムズに入社した[6]。
PirtleはNASAエイムズ研究センターでILLIAC IVプロジェクトの技術ディレクターとなった[7]。
脚注
- ^ Paul Spinrad and Patti Meagher. “Project Genie: Berkeley’s piece of the computer revolution”. University of California, Berkeley Engineering. 2011年4月16日閲覧。
- ^ Butler Lampson (1969年10月). “An Overview of the CAL Time-Sharing System”. University of California. 2011年4月20日閲覧。
- ^ Butler Lampson. “Berkeley Computer Corporation”. Microsoft Research. 2011年4月16日閲覧。
- ^ Charles F. Wall (1974年1月3日). “Design Features of the BCC 500 CPU”. Technical Report R-1. University of Hawaii. 2013年2月1日閲覧。
- ^ Frank F. Kuo (January 1995). “The ALOHA system”. ACM Computer Communication Review 25 .
- ^ Shawn Adderly (2010年11月29日). “ECE alumnus Wayne Lichtenberger donates a piece of computing history to the University”. University of Illinois Engineering. 2011年4月16日閲覧。
- ^ Interviewed by Al Kossow (2007年8月29日). “Oral History of Charles (Chuck) Thacker”. Reference no: X4148.2008. Computer History Museum. 2011年4月20日閲覧。
関連項目
外部リンク
- Project GENIEのページへのリンク