Elementary Calculus: An Infinitesimal Approachとは? わかりやすく解説

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Elementary Calculus: An Infinitesimal Approach

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/28 19:25 UTC 版)

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Elementary Calculus: An Infinitesimal Approach
著者 H. Jerome Keisler
言語 English
題材 Mathematics
出版社 Dover

H. J. キースラー英語版Elementary Calculus: An Infinitesimal approach(『無限小解析の基礎―微積分の新手法』)は、大学初年度級向けの初等解析学(微分積分学)用の教科書として書かれた。副題は An approach using infinitesimals とされることもあり、アブラハム・ロビンソン超実数の意味での無限小の利用を仄めかすものになっている。本書は、著者による無償オンライン版(CC BY-NC-SA)と、ドーヴァー出版からの書籍版[1]が、利用可能である。

教科書としての配慮

当教科書は、ロビンソンによる超実数の構成に基礎をおくものである。キースラーはより深く基本資料をカバーする指導者向けに傍用図書として Foundations of Infinitesimal Calculus(「無限小解析の基礎」)も著している。

連続性微分積分などの初等解析学における基本概念が、無限小をもとに定義される。ε–δ を用いてこれらを定義する通常の手法も第5章の最後に書かれているので、これら定石に則ったアプローチへの読み替えも可能である。

本書においてキースラーは、互いに無限に近い超実数を区別することを視覚的に表すために、教育学的手段として「無限に拡大できる顕微鏡」を用いた。同様に、無限大超実数を表すのに「無限に解像度のある望遠鏡」を用いている。

「標準部分」は有限超実数をそのもっとも近い実数へ「丸める」ものである。「無限小顕微鏡」は標準実数の無限に近くを見ることに用いる。

曲線(具体的には函数 f のグラフ)を拡大鏡を通して調べるとき曲率がレンズの倍率に比例して減少するように、「無限に拡大できる顕微鏡」は f のグラフの無限に小さい弧を(無限に小さい誤差を除いて)直線にする(実際に視覚化できるのは非常に高解像度の「顕微鏡」ということにはなるが)。そうして f の微分(微分係数)はそうやって得られた直線の傾き(の標準部分英語版)を言うのであった。

つまり、この「顕微鏡」は微分の説明のための道具として用いられたわけである。

世間の反応

本書を最初にレビューしたのは、構成的数学における業績で知られるエレット・ビショップ英語版であった。ビショップのレビューは甚く批判的である(超準解析への批判英語版の項へ譲る)。すぐ後に、マーチン・デイヴィス英語版とハウスナーが好意的な詳細レビュー[2]を著し、アンドレアス・ブラス英語版[3]キース・ストロイヤン英語版[4]も同様に好意的であった。キースラーに師事していた キャスリーン・サリバン[5]は自身の博士論文の一部として、5つの学校を対象とする対照実験を行い、本書 Elementary Calculus が微分積分学の標準的な指導方法と比べて優位な点を発見した[6][7]。サリバンによって述べられた利点があるにも拘らず、非常に大多数の数学者は、その教育において無限小に基づく手法を適当としなかった[8]。近年では、Katz & Katz (2010) がキースラーの著書に基づく微分積分学の教程について肯定的な扱いをしている。オドンヴァンも微積分を無限小を用いて教えた経験を記述しており、最初は肯定的であった[9]が、のちには本書(あるいは別の本での)超準的微分積分学へアプローチすることの教育学的困難を発見している[10]

G. R. Blackley は Prindle, Weber & Schmidt への書簡で、本書 Elementary Calculus: An Approach Using Infinitesimals について "Such problems as might arise with the book will be political. It is revolutionary. Revolutions are seldom welcomed by the established party, although revolutionaries often are."(試訳:「この本から生じるかもしれないそのような問題というのは、政治的なものであるのでしょう。それは革命的です。革命的なものは数あれど、それが既得権益に歓迎されることなどめったにない。」)と所見を述べた[11]

Hrbacek は、ε–δ 論法なしに超準的微分積分学がなされるという希望は完全には実現できないと主張することで、連続性、微分、積分の定義が—定義に超準的入力値を含めるように拡張するために—ロビンソンの理論的枠組みにおける ε–δ 論法に暗黙的に従わざるを得ないと記した[12]。 Błaszczyk らは、一様連続性の透明性の高い定義を展開する中で、microcontinuity英語版の有効性を詳述し、Hrbacek の批判を「疑わしき嘆き」("dubious lament") と位置付けた[13]

移行原理

本書第一版と第二版の間で、超準解析の理論的下地を含む理論的資料の大部分が第一章から巻末の最終章へ移された。

第二版においてキースラーは、延長原理 (extension principle) および移行原理 (transfer principle) を以下のような形で導入した:

Every real statement that holds for one or more particular real functions holds for the hyperreal natural extensions of these functions.(試訳: ひとつまたはそれ以上の特定の実函数に対して成立する実数に関する任意の主張は、それら函数の超実数への自然延長に対しても成立する。)

そしてこの原理を適用できる「実数に関する主張」のいくつかの例を与えた:



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