Aether clock OC 020
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/29 06:04 UTC 版)
Aether clock OC 020(イーサクロック OC 020)は2024年に東京大学(東大)、理化学研究所(理研)、島津製作所、日本電子によって開発され[1]、2025年に島津製作所から発売された18桁精度に相当するストロンチウム光格子時計である。光格子時計としては世界初の商用機である。[2]命名は香取秀俊[3]。
概要
2001年に東京大学の香取秀俊は光格子時計の理論を発表し、2014年に精度18桁の光格子時計を開発した。2018年に科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」(JPMJMI18A1)の支援を受けて産学官(東大、理研、島津製作所、日本電子)での共同研究を開始[4]。2017年から香取との共同作業を開始した[5]。
2025年に京都市精華町の島津製作所みらい共創ラボで本機の販売開始を発表した[6]。
小型化
従来の光格子時計は920 Lの体積があったが、本製品は約1/4にあたる250 L(幅と高さは約110 cm、奥行きは約65 cm、重量は約200 kg[6])まで小型化されている。溶接手法や冷却方法、コネクターの配置も改良され、レーザー光の生成や制御をする「レーザー/制御システム」も小型化し、250 Lの体積を達成した。各機器は取り外し可能で、40 cm×80 cm程度のラック2つに収まる。また、空間的な均一磁場を発生させるコイルや黒体輻射シールドをコンパクトにまとめ、原子を捉える光格子を生み出す「物理パッケージ」部分を小さくした[7]。コネクター類はフロント部に集約し、メンテナンス性、運用性を向上させている[4]。
評価
島津製作所の広報担当者は本機について「ノーベル賞級の製品だ」と語っているという[8]。また、同社の西本尚弘基盤技術研究所長は「ひとつの歴史的事業になる」「将来の社会基盤の核になる可能性を秘めた製品だ」「光格子時計は、地震予知に役立つなど大きな可能性を秘めている。引き続き、科学技術の発展に貢献していきたい[3]」と評した[5][9]。
香取秀俊は「最先端の時計の量産体制を世界に先駆けて整えた意義は大きく、社会実装の第一歩を踏み出せたことは非常に感慨深い。世界各国で活用が大きく進むきっかけになると思っている」と評した[6]。
脚注
出典
- ^ “世界初、装置容量250リットルの小型・堅牢な 超高精度光格子時計の開発に成功 ~光格子時計の社会基盤実装へ大きく前進~” (PDF). 科学技術振興機構 (2024年11月21日). 2025年8月28日閲覧。
 - ^ 宇都宮充 (2025年3月6日). “100億年で誤差1秒の光格子時計、価格は5億円。島津製作所が開発”. PC Watch. インプレス. 2025年8月27日閲覧。
 - ^ a b 日比野容子 (2025年3月5日). “世界で最も正確な「光格子時計」小型化 島津製作所が販売開始へ:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社. 2025年9月7日閲覧。
 - ^ a b “【光格子時計】島津製作所、世界初、小型化に成功した「Aether clock OC 020」発売”. 加工技術研究会 (2025年3月5日). 2025年10月17日閲覧。
 - ^ a b “島津製作所、小型化した光格子時計の受注開始 100億年で1秒程度の誤差”. 電波新聞デジタル. 電波新聞社 (2025年3月7日). 2025年9月7日閲覧。
 - ^ a b c “世界で最も正確な「光格子時計」を島津製作所が発売へ…誤差は100億年で1秒、1台5億円”. 読売新聞オンライン. 読売新聞社 (2025年3月6日). 2025年10月17日閲覧。
 - ^ “超高精度で1秒を刻む「光格子時計」を小型化、東大など 「秒」の再定義へ”. Science Portal. 科学技術振興機構 (2024年12月11日). 2025年8月31日閲覧。
 - ^ 石川陽一 (2025年3月27日). “島津製作所が「ノーベル賞級」と豪語する新型時計、1台5億円で世界初の光格子時計を発売、2030年に再定義される次世代“秒”の有力候補か”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社. 2025年8月28日閲覧。
 - ^ “誤差「100億年に1秒」 世界初、高精度の光格子時計発売―島津製作所:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2025年3月5日). 2025年10月17日閲覧。
 
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