1986年オーストラリアグランプリとは? わかりやすく解説

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1986年オーストラリアグランプリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/26 17:37 UTC 版)

 1986年オーストラリアグランプリ
レース詳細
日程 1986年シーズン第16戦
決勝開催日 10月26日
開催地 アデレード市街地コース
オーストラリア アデレード
コース長 3.779km
レース距離 82周(309.878km)
決勝日天候 ドライ
ポールポジション
ドライバー
タイム 1:18.403
ファステストラップ
ドライバー ネルソン・ピケ
タイム 1'20.787(Lap 82)
決勝順位
優勝
2位
3位

1986年オーストラリアグランプリは、1986年F1世界選手権の第16戦として、1986年10月26日アデレード市街地コースで開催された。

概要

1986年シーズン最終戦で、前戦メキシコGPを終え、この段階でのランキングトップは有効ポイント70のナイジェル・マンセル(本レースで4位以上だと実際の獲得ポイントから2ポイントマイナスされ、5位以下だとポイント数は相殺され、70ポイントのまま)、2位は有効ポイント64のアラン・プロスト(本レースで5位以上だと実際の獲得ポイントから1ポイントマイナスされ、6位だとポイント数は相殺され、64ポイントのまま)、3位は63ポイントのネルソン・ピケだった。プロストとピケがタイトルを獲得するための条件は、二人とも「自身が優勝して、かつマンセルが4位以下になる」というものだった(逆にマンセルは自身が3位以上に入れば、プロストとピケの結果に関係なくタイトルを獲得できる)。プロストが優勝(9ポイント獲得、1ポイントマイナス)してマンセルが3位(4ポイント獲得、2ポイントマイナス)の場合は両者とも有効ポイント72で並ぶものの、優勝回数の差でマンセルがタイトルを獲得する計算で(メキシコGPまでの段階でマンセル5勝、プロスト3勝。プロストは本レースに優勝しても4勝となるため)、タイトル獲得の可能性という意味ではマンセルが極めて有利な状態で本レースを迎えていた。

予選

金曜日の予選セッションは途中で雨が降り始めたため、実質的なタイム争いは土曜日に行われた。土曜日の予選ではマンセルがトップタイムを記録し、シーズン2度目のポールポジションを獲得した。タイトルを争うピケは2位、プロストは4位となった。プロストのチームメイト、ケケ・ロズベルグは初日にはグリップが突然失われると訴え、予選は7位に終わった。

決勝

マンセルはスタートに失敗してアイルトン・セナネルソン・ピケに抜かれ、オープニングラップのバックストレートでケケ・ロズベルグにも抜かれ4位に後退した。

間もなくロズベルグはトップに立ち、後続を引き離し始めた。プロストはセナとマンセルを抜き3位に上がると、ピケのスピンによりロズベルグに続く2位に上がり、マクラーレンが1-2を占めた。

32周目、プロストがゲルハルト・ベルガーをラップしようとしたときに両者が接触した。パンクに見舞われたプロストはピットに入りタイヤを交換した。レース前、グッドイヤーのエンジニアは各チームにタイヤ交換を推奨していたが、取り外されたプロストのタイヤを確認するとタイヤ交換の必要は無いと見解を変更した[1]

63周目にロズベルグがタイヤトラブルでストップし、タイトルを争う3人が上位3台を占めた。これでタイヤ交換をしていないウィリアムズの1-2となったが、次の周にはマンセルもタイヤトラブルに見舞われた。マンセルのウィリアムズは最高速を記録するバックストレートでリアタイヤがバーストしたが、マンセルはマシンをコントロールし、どこにもクラッシュすることなくランオフエリアに停車することに成功した。ただし、マンセルはこれでレースをリタイヤした。

ロズベルグとマンセルのタイヤトラブルの直後、ウィリアムズチームは再度見解を変更したグッドイヤーのアドバイスに従い[1]、1位を走行するピケをピットに呼び寄せタイヤ交換を行った[2]

17周を残してトップはプロストのものとなったが、プロストは燃費に問題を抱えていた。プロストは「残り15周の間、ずっと燃料が5リットル不足すると残量計が示していたが、どうしても勝たなければならなかったので、コンピュータが間違っていると自分に言い聞かせてプッシュし続けた。ゴールしたとき、コンピュータはまだ5リットル不足と表示していた」という[3]。プロストはピケの猛追をかわし4秒差をつけて優勝し、2年連続のドライバーズタイトルを獲得した。ピケは最終周にファステストラップを記録し、これは前年の記録を3秒縮めるものだった。

この勝利でプロストの通算勝利数は25となり、前年までのチームメイトニキ・ラウダの記録に並んだ。

結果

予選結果

順位 No ドライバー コンストラクタ 1回目 2回目
1 5 ナイジェル・マンセル ウィリアムズホンダ 1'19.255 1'18.403
2 6 ネルソン・ピケ ウィリアムズホンダ 1'20.088 1'18.714
3 12 アイルトン・セナ ロータスルノー 1'21.302 1'18.906
4 1 アラン・プロスト マクラーレンTAG 1'19.785 1'19.654
5 25 ルネ・アルヌー リジェルノー 1'20.491 1'19.976
6 20 ゲルハルト・ベルガー ベネトンBMW 1'22.260 1'20.554
7 2 ケケ・ロズベルグ マクラーレンTAG 1'21.295 1'20.778
8 26 フィリップ・アリオー リジェルノー 1'22.765 1'20.981
9 27 ミケーレ・アルボレート フェラーリ 1'21.709 1'21.747
10 4 フィリップ・ストレイフ ティレルルノー 1'23.262 1'21.720
11 23 アンドレア・デ・チェザリス ミナルディモトーリ・モデルニ 1'23.476 1'22.012
12 28 ステファン・ヨハンソン フェラーリ 1'22.050 1'22.309
13 19 テオ・ファビ ベネトンBMW 1'22.584 1'22.129
14 11 ジョニー・ダンフリーズ ロータスルノー 1'23.786 1'22.664
15 15 アラン・ジョーンズ ローラフォード - 1'22.796
16 3 マーティン・ブランドル ティレルルノー 1'24.061 1'23.004
17 16 パトリック・タンベイ ローラフォード 1'24.584 1'23.008
18 24 アレッサンドロ・ナニーニ ミナルディモトーリ・モデルニ 1'25.953 1'23.052
19 7 リカルド・パトレーゼ ブラバムBMW 1'23.396 1'23.230
20 8 デレック・ワーウィック ブラバムBMW 1'23.552 1'23.313
21 14 ジョナサン・パーマー ザクスピード 1'24.509 1'23.476
22 18 ティエリー・ブーツェン アロウズBMW 1'24.768 1'24.295
23 29 ヒューブ・ロテンガッター ザクスピード 1'25.746 1'25.181
24 17 クリスチャン・ダナー アロウズBMW 1'25.296 1'25.233
25 21 ピエルカルロ・ギンザーニ オゼッラアルファロメオ 3'03.680 1'25.257
26 22 アレン・バーグ オゼッラアルファロメオ 1'28.912 1'27.208

決勝結果

順位 No. ドライバー コンストラクタ 周回 タイム/リタイヤ グリッド ポイント
1 1 アラン・プロスト マクラーレンTAG 82 1:54'20.388 4 9
2 6 ネルソン・ピケ ウィリアムズホンダ 82 + 4.205 2 6
3 28 ステファン・ヨハンソン フェラーリ 81 +1 Lap 12 4
4 3 マーティン・ブランドル ティレルルノー 81 +1 Lap 16 3
5 4 フィリップ・ストレイフ ティレルルノー 80 燃料切れ 10 2
6 11 ジョニー・ダンフリーズ ロータスルノー 80 +2 Laps 14 1
7 25 ルネ・アルヌー リジェルノー 79 +3 Laps 5  
8 26 フィリップ・アリオー リジェルノー 79 +3 Laps 8  
9 14 ジョナサン・パーマー ザクスピード 77 +5 Laps 21  
10 19 テオ・ファビ ベネトンBMW 77 +5 Laps 13  
NC 16 パトリック・タンベイ ローラフォード 70 規定周回数不足 17  
リタイヤ 5 ナイジェル・マンセル ウィリアムズホンダ 63 タイヤ 1  
リタイヤ 7 リカルド・パトレーゼ ブラバムBMW 63 電気系 19  
リタイヤ 2 ケケ・ロズベルグ マクラーレンTAG 62 タイヤ 7  
NC 22 アレン・バーグ オゼッラアルファロメオ 61 規定周回数不足 26  
リタイヤ 8 デレック・ワーウィック ブラバムBMW 57 ブレーキ 20  
リタイヤ 17 クリスチャン・ダナー アロウズBMW 52 エンジン 24  
リタイヤ 18 ティエリー・ブーツェン アロウズBMW 50 エンジン 22  
リタイヤ 12 アイルトン・セナ ロータスルノー 43 エンジン 3  
リタイヤ 23 アンドレア・デ・チェザリス ミナルディモトーリ・モデルニ 40 メカニカル 11  
リタイヤ 20 ゲルハルト・ベルガー ベネトンBMW 40 エンジン 6  
リタイヤ 29 ヒューブ・ロテンガッター ザクスピード 29 サスペンション 23  
リタイヤ 15 アラン・ジョーンズ ローラフォード 16 エンジン 15  
リタイヤ 24 アレッサンドロ・ナニーニ ミナルディモトーリ・モデルニ 10 アクシデント 18  
リタイヤ 21 ピエルカルロ・ギンザーニ オゼッラアルファロメオ 2 トランスミッション 25  
リタイヤ 27 ミケーレ・アルボレート フェラーリ 0 アクシデント 9  
  • 予選、決勝順位は、公式サイト[4]および AUTOCOURSE 1986-1987[5] より。

記録

  • 最終F1グランプリ:アラン・ジョーンズ、パトリック・タンベイ、ケケ・ロズベルグ、ジョニー・ダンフリーズ、ヒューブ・ロテンガッター、アレン・バーグ

トピック

  • ミナルディが日本製のエンケイアルミホイールの使用をこのグランプリから開始した。エンケイとミナルディのコンビはF2参戦時代もパートナーであった。F1ホイールの主流はマグネシウム製ワンピース構造に移りつつあったが、エンケイはアルミとマグネシウムディスクによる3ピース構造でチャレンジし、F1用ホイールとしてトップの軽さであった[6]

脚注

  1. ^ a b Hamilton, Maurice (ed.) (1986). AUTOCOURSE 1986-87. Hazleton Publishing. pp. pp.190-191. ISBN 0-905138-44-9 
  2. ^ ホンダF1現地監督の後藤治がレース後、「プロストはツイてましたよ。ピケのタイヤ交換はグッドイヤーが交換しないと安全を保障できないと言うので…人命には代えられませんからね。」と述べた。 '86 ROUND-16 AUSTRALIAN GP ホンダ無念”2冠”のがす Racing On No.008 79頁 1986年12月1日発行
  3. ^ AUTOCOURSE 1986-87. pp. p.186 
  4. ^ 1986 Australian Grand Prix”. 2008年8月25日閲覧。
  5. ^ Hamilton, Maurice (ed.) (1986). AUTOCOURSE 1986-87. Hazleton Publishing. pp. p260. ISBN 0-905138-44-9 
  6. ^ 小倉茂徳 F1商品学「株式会社エンケイ」強度と放熱性がタイヤ性能を決する F1グランプリ特集 vol.60 90-91頁 ソニーマガジンズ 1994年6月16日

関連項目

前戦
1986年メキシコグランプリ
FIA F1世界選手権
1986年シーズン
前回開催
1985年オーストラリアグランプリ
オーストラリアグランプリ 次回開催
1987年オーストラリアグランプリ



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