重心 (軍事)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/09/22 00:16 UTC 版)
重心(Schwerpunkt, Center of gravity)とは、軍事学においては、戦場における力と運動の中心を指す概念である。
概要
重心はドイツにおける歴史的な軍事教義において用いられ、現代ではアメリカの軍事教義にも採用されている軍事理論の概念である。研究者クラウゼヴィッツは重心の概念を初めて理論的に位置づけようとしていたが、彼はいくつかの文章で微妙に異なる意味合いで重心を定義している。例えば戦略的な局面において、重心とはそれを打倒することにより決定的な影響を与えることができる戦力の配置と関係していることを説明している一方で、重心とは敵国が単一の戦役によって打破されうる場合にのみ認められるとも説明していた。さらにマイケル・ハワードとピーター・パレットによる翻訳によって、重心の概念はその理解をめぐっていくつかの見解が分かれることになった。
伝統的なドイツにおける解釈によれば、重心とは様々な状況における主要な戦力の焦点を意味するものとして捉えられていた。つまり重心とは指揮官が作戦を立案する上で自ら設定するものであって、敵の内在的な関係とは無関係であると考えられていた。したがって、重心とは目標の明確化や戦力の集中といった軍事作戦を考える上で不可欠な事項を考えるための概念であり、例えばゼークトは攻撃を考える上で重心を定めることが重要であると考えていた。また第一次世界大戦後に発表されたドイツ陸軍の教範類でも主たる戦力は常に決定的な地点に配置すること、そしてすべての攻撃には重心が含まれていることが述べられている。一方でクラウゼヴィッツの重心の概念は歴史的な文脈から解釈する学説もある。それは物理学の概念としての重心の概念を軍事的に置き直したものであり、戦闘における決定的な地点に集中したあらゆる戦力を意味すると考える立場である。つまりクラウゼヴィッツが強調しようとしていたことは戦闘における戦力の集中と理解する立場であり、その意味において決勝点の概念に近いと考えることができる。
関連項目
参考文献
- Baentsch, L. T. C. 1938. Der Motor in der Durchbruchschlacht. Militarwissenschaftliche Rundschau 3:82-99.
- Balack, W. 1920. Entwicklung der Taktik der Infanterie. In Militarische Lehren des Grossen Krieges, ed. M. Schwarte. Berlin: E. S. Mitter.
- Clausewitz, C. von. 1976. On war. Ed. and trans. M. Howard and P. Paret. Princeton, N.J.: Princeton Univ. Press.
- 清水多吉訳 『戦争論 上下』中公文庫、2001年
- Foertsch, H. 1939. Kriegskunst Heute und Morgen. Berlin: Zeitgeschichtlicher Berlag Wilhelm Andermann.
- German War Ministry. 1921. Fuhrung und Gefecht der verbundeten Waffen. Berlin: E. S. Mittler.
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- Schlichting, S.von. 1898. Taktische und strategische Grundlagen der Gegenwart. 3 vols. Berlin: E. S. Mittler.
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- U.S. Department of the Army. 1986. Field Manual 100-5: Operations. Washington, D.C.: Government Printing Office.
「重心 (軍事)」の例文・使い方・用例・文例
- 重心
- 重心と剛心が一致すると偏心は0になる。
- 低重心ヘッド
- それは重心の位置が低い。
- 平衡[重心]を保つ[失う]; 平静を保つ[失う].
- 重心.
- 【物理学】 浮心 《浮体の重心》.
- 【物理学】 重心.
- 彼は重心を片方の足からもう一方の足に移した.
- 重心をとる
- 重心を保つ
- 重心を失う
- 低い重心を持つさま
- 風と海は3本の直交軸に沿って船の重心を動かすかもしれない
- 重心(特にまたは重心の通過)の、あるいは、重心(特にまたは重心の通過)に関する
- 浮いている物の重心
- 体の重心をを一方の側に寄せて射切ること
- 船舶の重心を定める傾斜試験という試験
- 平面図形の重心
- 人口面でみた,地域の重心
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