聖母子 (モラレス、エルミタージュ美術館)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/26 01:39 UTC 版)
ロシア語: Богоматерь с Младенцем 英語: The Virgin and Child |
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作者 | ルイス・デ・モラレス |
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製作年 | 1570年代 |
種類 | 板上に油彩 |
寸法 | 71.5 cm × 52 cm (28.1 in × 20 in) |
所蔵 | エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク |
『聖母子』(せいぼし、露: Богоматерь с Младенцем、英: The Virgin and Child)は、スペインの画家ルイス・デ・モラレスが1570年代に板上に油彩で制作した絵画で、モラレスが好んだ「聖母子」の主題を扱っている[1]。1845年にD・P・タティシュチェフ (D.P. Tatishchev) 氏から遺贈されて以来[2]、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に所蔵されている[1][2][3]。
作品
エル・グレコと同時代人であったモラレスは、スペインのマニエリスム様式を代表する画家の1人である。彼は、聖書の物語と聖人の描写、神聖な主題により[4]「聖なるモラレス」と呼ばれた[3][4]。
モラレスの描く人物はマニエリスム特有の長く引き伸ばされた形態を持ち、劇的な緊張感が漂っている。また、イタリアの画家たちの聖母子が人生への限りない愛を伝えているのに対し、モラレスの聖母子はどことなく悲劇的な調子を帯びている[5]。本作の幼子イエス・キリストが手に持つ糸巻棒は受胎告知の場面の聖母マリアとともに描かれるが、この糸巻棒はイエスがいずれ磔になる十字架を暗示している。すなわち、イエスは将来の受難を予感しており、それがマリアに憂いをもたらしているのである[3]。
画面に見られる繊細で筆痕を残さない描法は、レオナルド・ダ・ヴィンチのスフマートを想起させる。一方、マリアの頭部から肩に掛かるベールの描写は北方的である。モラレスの芸術形成には不明な部分が多いが、レオナルドとミケランジェロの間接的な影響やデューラーの版画との類似が指摘されてきた[3]。
なお、モラレスは本作以外にも糸巻棒を持つイエスが登場する図像で『糸巻棒の聖母子』 (プラド美術館、マドリード) を描いているが、この図像の原型は疑いもなくレオナルドが1501年に描いたスケッチである (それを弟子たちが複製した複数の『糸車の聖母』がスコットランドのバクルー公爵家、米国の個人などに所蔵されている)[6]。
ギャラリー
脚注
- ^ a b “Madonna with the Child”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2025年9月17日閲覧。
- ^ a b “The Virgin and Child”. エルミタージュ美術館公式サイト (英語). 2025年9月17日閲覧。
- ^ a b c d NHK エルミタージュ美術館 3 近代絵画の世界、1989年、153頁。
- ^ a b “The Virgin Mourning (Mater Dolorosa)”. エルミタージュ美術館公式サイト (英語). 2025年9月17日閲覧。
- ^ NHK エルミタージュ美術館 3 近代絵画の世界、1989年、151頁。
- ^ “The Virgin and Child with a Spindle”. プラド美術館公式サイト (英語). 2025年9月17日閲覧。
参考文献
- 五木寛之編著『NHK エルミタージュ美術館 3 近代絵画の世界』、日本放送出版協会、1989年刊行 ISBN 4-14-008625-4
外部リンク
- 聖母子 (モラレス、エルミタージュ美術館)のページへのリンク