糸を紡ぐ女とは? わかりやすく解説

糸を紡ぐ女

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/18 02:58 UTC 版)

『糸を紡ぐ女』
オランダ語: De spinster
英語: The Spinner
作者 ニコラース・マース
製作年 1655年
素材 板上に油彩
寸法 41.5 cm × 33.5 cm (16.3 in × 13.2 in)
所蔵 アムステルダム国立美術館

糸を紡ぐ女』(いとをつむぐおんな、: De Spinster: The Spinner)は、オランダ黄金時代の画家ニコラース・マースが1655年に板上に油彩で制作した絵画である。画面右下の水差しに画家の署名がある[1][2]。マースが若かったころ、独立した画家としてドルドレヒトで名をあげようとしていた時代に描かれた[1]。作品は、アムステルダム市から貸与されてアムステルダム国立美術館に所蔵されている[1][2]

作品

マースはレンブラントに師事しており、その影響は本作の効果的なキアロスクーロ[1][2]、そして茶、黒、白色の濃淡やアクセントになっている赤色、さらに全体の筆遣いに浸透している[1]。しかし、主題選択において、マースはレンブラントがけっして描かなかった親密で家庭的な風俗画[2]を集中的に制作するようになり、しばしば家事をしている婦人や召使の単身像を描いた[1]

ニコラース・マース『レースを編む老女』 (1655年ごろ)、マウリッツハイス美術館デン・ハーグ

本作の画面では、老女が糸車の前に座り、鼻眼鏡をかけてウール[2]を紡ぐ作業に没頭している[1]。強い光が彼女と糸車の上にある糸巻き棒、そして壁に掛かった巻き取り機のかせとり棒を集中的に照らしている。この場面の平和な印象は、主題と構図によって生み出されている。糸車、女性、そして水差しは三角形構図を形成し、車輪の形は丸い水差しとわずかに呼応している[1]

17世紀の鑑賞者は、静かな部屋の片隅で糸を紡いだり、レースを編んだりする女性を家庭の美徳として直ちに認識することができたであろう。一方で、マースは、好ましくないモデル、たとえば家事をしていたり聖書を読んでいたりする途中で眠ってしまった女性や、家事の務めを果たさない女性を描くこともあった。こうした道徳的メッセージは、17世紀の美術においては非常に一般的なものである[1]

平穏な室内の情景によって、マースはこうした形式の絵画を主導する画家の1人になり、ヨハネス・フェルメールなどの画家たちに少なからぬ影響を与えた。マースの風俗画とフェルメールの初期作品における類似は、フェルメールがマースらドルドレヒトの画家たちの作品に精通していたことをうかがわせる[1]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j 『Making the Difference: Vermeer and Dutch Art』、2018年刊行、114頁。
  2. ^ a b c d e De spinster”. アムステルダム国立美術館公式サイト (オランダ語の英訳). 2025年6月18日閲覧。

参考文献

外部リンク


糸を紡ぐ女(Fileuse)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 02:12 UTC 版)

ペレアスとメリザンド (フォーレ)」の記事における「糸を紡ぐ女(Fileuse)」の解説

ト長調3/4拍子Andantino quasi allegretto劇付随音楽では第10曲第3幕メリザンドが糸を紡ぐ場面音楽。弦による6連音の細かい音型に乗ってオーボエ可憐な歌を歌う。後の歌劇ペネロープ第1幕最初の糸紡ぎ女たち場面で、よく似た音楽聴かれる。

※この「糸を紡ぐ女(Fileuse)」の解説は、「ペレアスとメリザンド (フォーレ)」の解説の一部です。
「糸を紡ぐ女(Fileuse)」を含む「ペレアスとメリザンド (フォーレ)」の記事については、「ペレアスとメリザンド (フォーレ)」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「糸を紡ぐ女」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「糸を紡ぐ女」の関連用語

糸を紡ぐ女のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



糸を紡ぐ女のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの糸を紡ぐ女 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのペレアスとメリザンド (フォーレ) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS