範疇論 (アリストテレス)とは? わかりやすく解説

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範疇論 (アリストテレス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/13 02:47 UTC 版)

範疇論』(はんちゅうろん、古希: Κατηγορίαι: Categoriae, : Categories)とは、アリストテレスの著作であり、『オルガノン』の中の一冊。『カテゴリー論』とも。

文字通り、様々な概念・言葉の「分類」について述べられている。

題名

本書の題名は、以下のように、古代の註釈家たちによって様々な名で呼ばれてきた[1]。「十のカテゴリー」といった呼称が散見されるのは、第4章にて10の分類が挙げられていることに因む。

  • 『諸カテゴリーについて』
  • 『十のカテゴリー』
  • 『十のカテゴリーについて』
  • 『十の類について』
  • 『あるものの類について』
  • 『諸カテゴリー、あるいは十の最も類的な類について』
  • 『普遍的な言葉について』

構成

15の章から成り、それらは内容上、

  • 1章 - 後で用いられる「同名異義的」「同名同義的」「派生名的」が説明される。
  • 2章-9章 - 本編。
  • 10章-15章 - 「対立」「反対」「より先」「運動」「同時に」「持つ」といった詞が使われる色々な場合の区別。

の3つに分けることができる[2]

この内、「post-praedicamenta」と総称される3番目の10章-15章は、アリストテレスの作でなく、後世の挿入(ただし、紀元前200年以前のわりと早い時期)ということが、定説となっている[3]

内容

第1章

  • 同名異義的(ホモーニュモン、古希: ὁμώνυμον, homōnymon) - 名称だけが共通で、本質的定義が異なるもの。(例:「動物」という名称で呼ばれる「人間」と「像」[4]
  • 同名同義的(シュノーニュモン、古希: συνώνυμον, synōnymon) - 名称も本質的義も同じもの。(例:「動物」という名称で呼ばれる「人間」と「牛」)
  • 派生名的(パローニュモン、古希: παρώνυμον, parōnymon) - 語尾変化によって生じたもの。(例:「文法学」(古希: γραμματική)から「文法家」(古希: γραμματικός)、「勇気」(古希: ανδρεία)から「勇者」(古希: ανδρείος))

第2章
表現方法には、

  • 結合無し(単語)による表現 (例:「人間」「牛」「走る」「勝つ」)
  • 結合()による表現 (例:「人間は走る」「人間は勝つ」)

の2種類がある。

概念の内、あるものは、

  1. ある「基体」(主語)についての述語になるが、いかなる「基体」(主語)の内にも無い。(例:「人間」は、「特定の人間」(基体)の述語となるが、どの「基体」の内にも無い)
  2. ある「基体」(主語)についての述語にはならないが、「基体」(主語)の内にある。(例1:「特定の文法知識」は、「霊魂」(基体)の内にあるが、いかなる「基体」(主語)の述語にもならない、例2:「ある特定の白」は、「物体」(基体)の内にあるが、いかなる「基体」(主語)の述語にもならない)
  3. ある「基体」(主語)についての述語になると共に、「基体」(主語)の内にある。(例:「知識」は、「霊魂」(基体)の内にあり、「文法的知識」(基体)の述語となる)
  4. ある「基体」(主語)についての述語にならず、「基体」の内にも無い。(例:「特定の人間」「特定の馬」)

(なお、上記の話は要するに、

  • 「ある「基体」の述語になるか否か」によって、「種・類」と「個」が、
  • 「なんからの「基体」の内にあるか否か」によって、「実体」と「非実体」(性質・量)が、

それぞれ振り分けられ、その組み合わせで作られた4分類であり、分かりやすくまとめると、

  1. 実体」のカテゴリーにおける「種・類
  2. 「実体」以外のカテゴリーにおける「
  3. 「実体」以外のカテゴリーにおける「種・類
  4. 実体」のカテゴリーにおける「

ということになる[5]。)

第3章

  • 「あるもの(A)が、基体(主語)としてのあるもの(B)についての述語となる関係にある」場合、その述語となるあるもの(A)について言われるものは、全て基体(B)に対してもあてはまる。(例:「特定の人間」(基体・主語、A)と「人間」(述語、B)の場合、「動物」は「人間」(述語、B)の述語となるので、「特定の人間」(基体・主語、A)の述語ともなる。)
  • 「異なった「」で、互いに他の下に配されない関係にある」場合、その「種差」も異なっている。(例:「動物」と「知識」の場合、「動物」の「種差」は、「陸棲的」「有翼的」「水棲的」「二足的」などによって表されるが、それらは「知識」の「種差」とはならない。)

第4章
単語表現が意味するものは、

  1. 実体」(例:人間、馬)
  2. 」(例:2ペーキュス、3ペーキュス)
  3. 」(例:白い、文法的)
  4. 関係」(例:二倍、半分、より大きい)
  5. 場所」(例:リュケイオン、市場)
  6. 」(例:昨日、昨年)
  7. 体位」(例:横たわっている、坐っている)
  8. 所持」(例:靴を履いている、武装している)
  9. 能動」(例:切る、焼く)
  10. 受動」(例:切られる、焼かれる)

のいずれかである。

第5章
「実体」について。

  • 第一実体」 - (第2章の4) (例:「特定の人間」、「特定の馬」)
  • 第二実体」 - (第2章の1) (例:「人間」「馬」)

第6章
「量」について。

第7章
「関係」について。

第8章
「質」について。

第9章
「能動」「受動」について。

訳書

脚注・出典

  1. ^ 『アリストテレス全集1』岩波書店 p152
  2. ^ 『アリストテレス全集』岩波書店 p153
  3. ^ 『アリストテレス全集』岩波書店 pp153-156
  4. ^ 「銅像」「偶像」「画像」の「像」。ギリシア語ではそれらも「ゾーオン」(古希: ζῶον, zōon、動物)と呼ばれた。
  5. ^ 『アリストテレス全集1』岩波書店 p61

関連項目




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