磁性細菌とは? わかりやすく解説

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磁性細菌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/18 23:35 UTC 版)

磁性細菌(じせいさいきん。英語、Magnetotactic bacteria)とは、磁力に反応して移動を行う細菌の総称で、1975年 Richard Blakemoreにより見出された[1]。菌体内にはマグネトソームと呼ばれる磁性体を保持した細胞内小器官が見られ、磁性体にはマグネタイト(Fe3O4) [2]鉄硫黄タンパク質の単結晶グレガイト(Fe3S4)[3]が利用されている。

走磁性細菌

磁性細菌の中には走磁性細菌(そうじせいさいきん)と呼ばれる者も含まれる。走磁性細菌とは、地磁気に沿って鞭毛で移動する磁性細菌の事である[4][5]。この菌は自身の増殖の為には鉄イオンが必須で、ほぼ100%の利用効率で鉄イオンを利用しマグネタイトを生合成している[6]

例えば、アクアスピリルム属Aquaspirillum magnetotacticumマグネトスピリルム属Magnetospirillum gryphiswaldense などが知られている。

ヒトによる利用

磁性細菌はマグネトソームの中に、自身が外部から取り込んだ鉄などの元素を代謝して生合成した微小な磁石を持っている[4]。そのために磁性細菌の菌体は、充分な強さの磁力を持った磁石が存在すると、そこに吸い寄せられて付着する[7]

そこで、何らかの金属元素で汚染された排水などの中で磁性細菌を培養し、菌体に金属元素を吸着させ、その後、磁石で磁性細菌を回収する事で、排水中の金属元素も同時に除去できる事が確認された[8]。 また、ニッケルが溶存した溶液で磁性細菌を培養すると、ニッケルが磁性細菌に取り込まれただけでなく、金属ではないテルルが溶存した溶液で磁性細菌を培養した場合には、テルルが磁性細菌に取り込まれた[7][注釈 1]

もちろん、こうした元素を取り込んだ磁性細菌も磁石で溶液中から回収できる。この性質を利用する事で、磁性細菌を利用したバイオレメディエーションが可能である[7]

脚注

注釈

  1. ^ 例えば、テルルがヒトに摂取された場合、約0.25 mgで中毒症状が現れ、致死量は約2 gと見られている。

出典

  1. ^ Richard Blakemore (1975). “Magnetotactic bacteria”. Science 190 (4212): 377-379. doi:10.1126/science.170679. https://doi.org/10.1126/science.170679. 
  2. ^ 松田強, 有井達夫, 遠藤潤二, 長我部信行, 外村彰「28a-HJ-1 走磁性細菌の電子顕微鏡的観察」『年会講演予稿集』第38.3巻、日本物理学会、1983年、372頁、doi:10.11316/jpsgaiyod.38.3.0_372_2NAID 110002211229 
  3. ^ 松永是「磁性細菌」『日本農薬学会誌』第21巻第4号、日本農薬学会、1996年、468-472頁、doi:10.1584/jpestics.21.468ISSN 1348-589XNAID 130004093232 
  4. ^ a b 中西 貴之 『人を助ける へんな細菌 すごい細菌』 p.142 技術評論社 2007年10月25日発行 ISBN 978-4-7741-3220-4
  5. ^ 堀石七生「マグネタイト微粒子 : 磁気の効用を探る(話題を探る)」『化学と教育』第40巻第11号、日本化学会、1992年、768-772頁、doi:10.20665/kakyoshi.40.11_768ISSN 0386-2151NAID 110001801834 
  6. ^ 松永是「磁性細菌の利用」『BME』第3巻第11号、日本生体医工学会、1989年、40-46頁、doi:10.11239/jsmbe1987.3.11_40ISSN 0913-7556NAID 130004308981 
  7. ^ a b c 中西 貴之 『人を助ける へんな細菌 すごい細菌』 p.144 技術評論社 2007年10月25日発行 ISBN 978-4-7741-3220-4
  8. ^ 中西 貴之 『人を助ける へんな細菌 すごい細菌』 p.144、p.145 技術評論社 2007年10月25日発行 ISBN 978-4-7741-3220-4






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