民族解放軍 (コロンビア)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 民族解放軍 (コロンビア)の意味・解説 

民族解放軍 (コロンビア)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/20 21:58 UTC 版)

民族解放軍
Ejército de Liberación Nacional
コロンビア内戦に参加
党旗
活動期間 1964年-
活動目的 マルクス・レーニン主義社会主義革命政権樹立
活動地域 コロンビア東北部
前身 ホセ・アントニオ・ガラン解放旅団
関連勢力 コロンビア革命軍
敵対勢力 コロンビア政府軍
コロンビア自警軍連合
テンプレートを表示
ELNの旗を掲げる若者。

民族解放軍(みんぞくかいほうぐん スペイン語: Ejército de Liberación Nacional、略称ELN)は、コロンビア国内に展開する反政府極左武装組織マルクス・レーニン主義による親キューバ、反アメリカ路線を標榜し都市部のインテリ、中間層が構成員の中心である。

概要

1963年にキューバ革命の影響を受けた大学生たちがキューバに渡って訓練を受け「ホセ・アントニオ・ガラン解放旅団」を結成した。

翌年、民族解放軍に改組されゲリラ活動を開始。軍、警察への直接攻撃よりも石油地帯を攻撃することによって体制に間接的に打撃を与えた。カリブ海へ石油を送る油送管を狙って破壊活動を繰り返し石油産業を脅して金の巻き上げ、麻薬や誘拐も資金源としていた。一時は、約5,000人から6,000人の勢力を有し、コロンビア国内の反政府勢力としてはコロンビア革命軍(FARC)に次ぐ、2番目の規模に成長した[1]ものの、冷戦の終了や2000年代以降のコロンビア政府軍の巻き返し、コロンビア自警軍連合の攻撃で徐々に勢力は衰退。このためコロンビア革命軍と共闘するようになり依存を深めていったが、2010年頃には2,500人程度となった[2]

この頃から政府側は、コロンビア革命軍と進めていた和平交渉と平行して、民族解放軍側へも接触を開始。2013年8月には、サントス大統領自らが和平交渉を開始する用意があると発表。これに対応するように2015年1月、民族解放軍側も政府との正式な和平交渉に臨む用意があるとの声明を発表している[3]

2017年9月、コロンビア政府はELNと2017年10月1日~2018年1月12日の停戦で合意したと発表した。ローマ法王フランシスコの同国訪問に対応して、和平ムードを盛り上げる狙いがある[4]。しかしELNは、和平交渉は継続するが停戦は延長しない旨主張し、停戦期間終了直後には、石油パイプラインに対する爆弾テロを実行した[1]

その後、2018年5月にはキューバ政府の仲介による和平交渉も開始されたが、同年9月、ドゥケ大統領が和平交渉再開のために提示した条件(人質の全員解放、「犯罪活動」の停止)について、ELNは受け入れられないとする声明を発表。その後も、ELNは紛争の政治的解決を求める声明を発出する一方で、軍や警察、石油インフラなどを標的としたテロを引き続き行っている。なお、ドゥケ大統領は、2018年9月にベネズエラがゲリラを支援していると非難した[1]

2019年1月17日、ELNは首都ボゴタ警察学校を爆破し、22人が死亡、89人が負傷した事件で犯行声明を出した。これを受けて、コロンビア政府はキューバ政府に同国滞在中のELN幹部の身柄引き渡しを要請した。

2022年11月17日、コロンビア政府はELNとの和平交渉を21日からベネズエラの首都カラカスで再開すると発表した。ELNは1964年結成の親キューバ系左翼ゲリラ組織。21年9月時点の構成員は約2400人[5]

2023年1月1日までに、コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は、民族解放軍(ELN)との停戦で合意したと発表した。期間は1月1日から6月30日まで。交渉に応じて延長可能で、他の反政府武装勢力も停戦に応じた[6]

2023年6月9日、コロンビア政府はELNと6ヵ月間の停戦で合意したと発表した。8月3日から正式な停戦に入る。ペトロ大統領は「数十年にわたり武器で相互に殺し合うという世界は、終わりにしなければならない」と述べた[7]

2025年1月17日、ELNはコロンビア政府との和平交渉を打ち切り、ベネズエラとの国境に近いノルテ・デ・サンタンデール県カタトゥンボで攻撃を開始した。同県知事によれば、ELNの攻撃で20人近くが負傷した。コロンビア政府のオンブズマン機関が18日に発表した報告では、ELNとの和平交渉に関与した自治体の首長を含む7人が死亡した。また、ELNはカタトゥンボの複数の町を襲撃、和平交渉に関係した3人を誘拐した。ELNは2016年に武装解除したコロンビア革命軍(FARC)の残党とコカイン生産地を巡り抗争を続けており、19日までに民間人を含む少なくとも80人以上が死亡、数千人が避難した。ELNは18日、声明で「FARC残党が民間人への攻撃を続ければ、武力以外に解決方法はない」と述べた。ELNとコロンビア政府の和平交渉は、過去5回すべて失敗に終わっている[8]

関連人物

出典

  1. ^ a b c “「民族解放軍」(ELN)Ejercito de Liberacion Nacional,National Liberation Army”. 公安調査庁 (公安調査庁). https://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/N_MS-america/ELN.html 2020年2月21日閲覧。 
  2. ^ “左翼ゲリラ「FARC」司令官を殺害、コロンビア軍作戦で”. AFPBBNews (フランス通信社). (2010年9月24日). https://www.afpbb.com/articles/-/2759009 2015年1月9日閲覧。 
  3. ^ “コロンビア第2の左翼ゲリラ、和平交渉へ”. AFPBBNews (フランス通信社). (2015年1月8日). http://www.afpbb.com/articles/-/3035997 2015年1月9日閲覧。 
  4. ^ “コロンビア政府と左翼ゲリラELN、一時停戦で合意”. 日本経済新聞ニュース. (2017年9月5日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM05H02_V00C17A9EAF000/ 
  5. ^ “コロンビア政府、左翼ゲリラと和平交渉再開へ 2019年以降停滞”. 毎日新聞. (2022年11月18日). https://mainichi.jp/articles/20221118/k00/00m/030/086000c 
  6. ^ “左翼ゲリラとの停戦で合意 コロンビア政府”. 産経新聞. (2023年1月2日). https://www.sankei.com/article/20230102-CC5TN5XRY5ILNJ2YEHZ5GSBVYU/ 
  7. ^ “最大ゲリラと停戦合意=8月から正式実施―コロンビア”. 時事通信社. (2023年6月10日). https://equity.jiji.com/oversea_economies/2023061000250 
  8. ^ “コロンビアで三つ巴の争い 政府軍とELNに加えFARC残党”. AP通信社. (2025年1月20日). https://news.yahoo.co.jp/articles/f1bf03e56b56807a53130b0afc694974637a1e1a 

「民族解放軍 (コロンビア)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「民族解放軍 (コロンビア)」の関連用語

民族解放軍 (コロンビア)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



民族解放軍 (コロンビア)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの民族解放軍 (コロンビア) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS