正利とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 正利の意味・解説 

正利

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/26 13:30 UTC 版)

Jump to navigation Jump to search

正利(まさとし、生年は1477年から1498年の間[注 1])は、美濃坂倉(現在の岐阜県加茂郡坂祝町酒倉)を中心に活動した坂倉関派の刀工。およびその一派の名、その刀の名。良業物

初代正利は楠木正成子孫伊勢楠木氏第5代当主川俣正充の次男であり、千子派(村正派)の正重の親族、弟子[1]

概要

良業物に位列される[2][3]。 藤代義雄の評価では末古刀中上作[3]。 作風は「直刃又は五ノ目尖刃崩れる」[3]、全体として末関物の典型だが[2][4]、銘の「正」が村正に酷似している[2][3]

坂倉関に分類されるが、「正」字から村正の一派との強い関係が指摘されてきた[2][3]。事実、伊勢楠木氏の家系図『全休庵楠系図』では、第5代当主の川俣[注 2]正充の次男とされ、千子派の三代正重(伊勢楠木氏としては第4代当主)から見て系図上の孫にあたる(正充は伊勢楠木氏の傍系だが三代正重の養子になった)[1]。弟は第6代当主楠木正忠、甥は石山合戦顕如の客将となり討死した第7代当主楠木正具[1]。この家系図には、「住勢州鹿伏兎、為正重弟子、矢根鍛冶」とあり、どの代の正重かは不明だが正重門下であったことがわかる[1]。 勢州鹿伏兎は現在の三重県亀山市加太市場の辺り。矢根とは矢尻のことで、矢尻鍛冶は刀工が兼任することもあり、備中貞次や豊後行平などは矢根鍛冶としても名工で知られる[5]

なお、一般の刀剣書では、同じ坂倉関の正吉(永正=1504-1521ごろに活躍)の子とするものが多く[2][3]、他に正広の子、兼年の子、蜂屋正次の弟子とするなどの説がある[2]。 正吉も「正」の字が村正とほぼ同じであるから、実際に何らかの関わりがあったことが推察される[6]

正利の活動時期は永正(1504-1521年)[2]享禄(1528-1532年)[2]弘治(1555-1558年)[3]の頃とされる。 かなり遡って寛正(1461-1466年)の頃の作刀もあるという説がある[2]が、『全休庵楠系図』の説とも坂倉関正吉の息子説とも矛盾している。 また、「濃州赤坂住正利 永禄六年」の銘を切る正利があり、1563年ごろの代の正利は坂倉ではなく岐阜県大垣市赤坂町に住んでいたらしい[2]。 赤坂は、関派や千手院派が集っていたこともある鍛冶町で[7]、また一説に千子派の祖である初代村正が生まれたとされる地でもある[8]

丹羽氏次の愛槍「岩突(いわつき)」は「正利」の二字銘、とある戦(おそらく小牧・長久手の戦い)の時に敵兵を一突きしたところ甲冑を貫いて背後の岩に突き刺さったためこの号があり、その後、子孫重代の家宝となったという[9]。『教育画報』(大正11年第14巻1号)によると、靖国神社遊就館の新館完成直後にこの槍は一時展示されていた[10]。 「正利 大和守安定上之 寛文元年閏八月廿八日 貳ツ胴截断 山野加右衛門永久(花押)」の銘が残る刀剣があり、1661年に大和守安定が磨き上げて山野加右衛門永久が試し切りしたところ、二ツ胴裁断であった[11]

脚注

注釈

  1. ^ 父の第5代当主正充は大永七年(1527)2月23日に数え51歳で死去(『全休庵楠系図』)、その生年は逆算して1477年。弟の第6代当主正忠は天正2年(1574年)5月に数え77歳で死去(『全休庵楠系図』)、その生年は逆算して1498年。正利に兄もいることを考慮すれば、正利の生年は1490年代前半〜1498年に絞られると考えられる。
  2. ^ 1559年に楠木正虎が朝廷から勅免を得るまで、朝敵である楠木氏を公に名乗ることは許されていなかった。

出典

  1. ^ a b c d 藤田 1938, pp. 31–37.
  2. ^ a b c d e f g h i j 福永 1993, 5巻, p. 83.
  3. ^ a b c d e f g 藤代, pp. 273-274.
  4. ^ 福永 1993, 2巻, p. 304.
  5. ^ 福永 1993, 5巻, pp. 214–215.
  6. ^ 藤代, pp. 274-275.
  7. ^ 福永 1993, 1巻, p. 18.
  8. ^ 福永 1993, 5巻, pp. 166–169.
  9. ^ 福永 1993, 1巻, pp. 120–121.
  10. ^ 探検コム. “靖国神社「遊就館」の誕生”. 2018年8月27日閲覧。
  11. ^ TAISEIDO. “特別保存刀剣『正利 大和守安定上之 寛文元年閏八月廿八日 貳ツ胴截断 山野加右衛門永久(花押)』 特別保存刀装具『青貝朱微塵塗鞘打刀拵』”. 2018年8月27日閲覧。

参考文献


「正利」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「正利」の関連用語

正利のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



正利のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの正利 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS