新時代の『日本的経営』
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新時代の「日本的経営」(しんじだいの「にほんてきけいえい」)は、1995年(平成7年)5月に日本経営者団体連盟(日経連、現:経団連)が発表した報告書(提言)である。
- 正式名称:新時代の「日本的経営」―挑戦すべき課題とその方向
- 発表組織:日本経営者団体連盟(日経連、現:日本経済団体連合会・経団連)
- 発表日:1995年(平成7年)5月
- 目的:バブル崩壊後の構造変化に対応するための、雇用・賃金システムの見直し
- 関連概念:雇用の複線化、能力主義、非正規雇用の拡大
バブル崩壊後の経済環境の激変とグローバル競争への対応を目的とし、従来の画一的な終身雇用・年功序列といった日本的経営システムを抜本的に見直し、企業競争力を回復させるための具体的な雇用戦略が示された[1]。
提言の主な内容
この報告書は、雇用者(労働者)を役割、能力、雇用管理の方法に応じて三つに類型化し、企業が雇用管理を複線化することを提案した点が最大の特徴である。
労働者3類型
提言では、以下の3つのグループを設け、それぞれ異なる雇用管理を行うべきとした。
- 1. 長期蓄積能力活用型グループ
- 企業の経営の中核や高度な技能を担う基幹的労働者(総合職、管理職など)。長期的な雇用を前提とし、手厚い教育訓練やキャリア開発が行われる層。従来の「終身雇用」の恩恵を継続して受けることが想定された。
- 2. 高度専門能力活用型グループ
- 特定の分野で高い専門能力を持つ労働者(研究開発、企画、専門営業など)。ジョブ(職務)に基づいて処遇され、労働市場における流動性も想定される層。
- 3. 雇用柔軟型グループ
- 定型的・補助的な業務に従事する労働者(一般事務、販売、パートなど)。景気の変動や業務量の増減に応じて、雇用調整(解雇、雇い止め)の対象となりやすい、「柔軟な」雇用形態(非正規雇用)が中心とされた層。
賃金・人事制度
賃金体系についても、年功序列から職務遂行能力や成果を重視する能力主義・職務主義への転換を志向し、人件費の抑制と生産性向上を図る方向性が示された。
検証と影響
提言発表から30年が経過した2025年時点で、提言が日本経済・社会に与えた影響については、賛否両論から多くの議論がある。特に「雇用柔軟型グループ」の拡大が、その後の日本の構造的な問題に繋がったとする批判的検証が多い[2][3]。
経済・雇用の変化
提言の目指した雇用複線化は、データ上、以下の形で進行した。
- 非正規雇用の割合の急増:
- 1995年に約20%であった雇用者に占める非正規雇用の割合は、2020年代にかけて約37%にまで増加し[4]、雇用柔軟型グループが日本の労働市場の大きな部分を占める結果となった。
- 平均賃金の停滞と国際競争力の低下:
- 提言以降、日本の実質賃金は長期的に停滞する一方、欧米主要国や韓国の賃金は上昇を続けた。その結果、1990年代には高水準だった日本の平均賃金は、2020年代にはOECD加盟国の中で相対的に低い水準に位置づけられることとなった[5]。
社会的影響(少子化との関連)
雇用柔軟型グループの拡大と平均賃金の停滞は、特に若年層の経済的基盤を不安定化させ、以下の社会問題の要因の一つとして指摘されている。
- 婚姻率の低下と少子化の進行:
- 経済基盤の不安定化は、若年層の非婚化・晩婚化を招き、出生数の減少に拍車をかけたという分析がある。提言発表後に日本の年間出生数は減少し続け、2024年には68万6,061人となり、過去最少を更新した[6]。
- 社会学者や少子化対策を専門とする研究者からは、特に「雇用柔軟型」の増加が、将来への経済的な不安を増大させ、少子化を加速させた主要因の一つであるとの指摘もある。
- ^ “『新時代の「日本的経営」』から20年”. 連合総合生活開発研究所(連合総研) (2015年8月). 2025年10月28日閲覧。
- ^ 荒川和久 (2015). 非婚社会. ディスカヴァー・トゥエンティワン
- ^ 大内伸哉. “日本的雇用システムの変容と労働法の役割”. 日本労働研究雑誌 560 (2007年3月) 2025年10月28日閲覧。.
- ^ “非正規の職員・従業員の推移”. 総務省統計局 (2024年). 2025年10月28日閲覧。
- ^ “OECD Average wages data”. OECD (2024年). 2025年10月28日閲覧。
- ^ “令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況”. 厚生労働省 (2025年10月). 2025年10月28日閲覧。
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