固体メーザーとは? わかりやすく解説

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こたい‐メーザー【固体メーザー】

読み方:こたいめーざー

誘導放出起こす媒体として固体用いメーザー多く場合常磁性共鳴利用しマイクロ波増幅発振する。


固体メーザー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/16 07:18 UTC 版)

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固体メーザー英語: solid-state maser)とは、固体の利得媒質で発振するメーザー

概要

従来の固体メーザー発振には高真空と希釈冷凍機を必要とする4Kの極低温を必要としていたため装置が大掛かりなため後に開発されたレーザーと比較して応用範囲が限られ普及が進んでいなかった。

2002年に日本の研究者達によってレーザーでペンタセンを添加した有機結晶を励起することによりメーザー発振する可能性が提案された[1][2]

2007年にダイヤモンド窒素-空孔中心を利用した常温でのメーザーが提案された[3]

2012年にペンタセンを添加したP-テルフェニルの結晶を緑色レーザーで励起してパルスモードで発振する室温メーザーが開発された[4]。熱的特性と機械的特性が比較的劣り、パルスモードでしか動作できなかった[4]。2015年には量子ドットメーザーの発振が発表された[5][6]

2018年3月にインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが半導体メーザーの室温での連続発振に成功した[7][8]

原理

レーザーダイヤモンド結晶内の空孔中心を励起することにより発振させる。

応用例

従来は絶対零度付近での発振だったが、室温での連続発振が可能になったことにより、広範囲での応用が期待される。従来はX線を使用していたトモグラフィ非破壊検査や医療診断への適用や禁止薬物地雷等の爆発物の検出への適用が想定される。

半導体メーザー

固体メーザーの一種である半導体メーザーは渡辺寧西澤潤一によって半導体レーザーよりも早くから着想されていたにもかかわらず[9]、室温での連続発振に成功したのは2018年になってからであった[7]。 1960年代初頭の半導体レーザーの黎明期には半導体レーザーを半導体メーザーと呼んでいた時期があったため、当時の文献には半導体メーザーの記述が散見される[10][11][12]

現時点ではキャリア注入による直接発振ではなくダイヤモンド窒素-空孔中心を緑色半導体レーザーで励起することによって間接的に発振させているもので、かつて特公昭35-13787に記載されていたのはキャリア注入型の半導体メーザー発振器であり、これは2018年現在、室温での連続発振には至っていない。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ Takeda, Kazuyuki, K. Takegoshi, and Takehiko Terao. "Zero-field electron spin resonance and theoretical studies of light penetration into single crystal and polycrystalline material doped with molecules photoexcitable to the triplet state via intersystem crossing." The Journal of chemical physics 117.10 (2002): 4940-4946.
  2. ^ Room-temperature cavity quantum electrodynamics with strongly-coupled Dicke states (PDF)”. 2018年12月23日閲覧。
  3. ^ Poklonski, N. A., et al. "Nitrogen-doped chemical vapour deposited diamond: a new material for room-temperature solid state maser." Chinese Physics Letters 24.7 (2007): 2088.
  4. ^ a b Oxborrow, Mark, Jonathan D. Breeze, and Neil M. Alford. "Room-temperature solid-state maser." Nature 488.7411 (2012): 353.
  5. ^ Gullans, M. J., et al. "Phonon-assisted gain in a semiconductor double quantum dot maser." Physical review letters 114.19 (2015): 196802.
  6. ^ Liu, Y-Y., et al. "Semiconductor double quantum dot micromaser." Science 347.6219 (2015): 285-287.
  7. ^ a b World's first room temperature maser using diamond developed” (2018年3月21日). 2018年12月23日閲覧。
  8. ^ Breeze, Jonathan D., et al. "Continuous-wave room-temperature diamond maser." Nature 555.7697 (2018): 493.
  9. ^ 特公昭35-13787
  10. ^ Quist, Ted M., et al. "Semiconductor maser of GaAs." Applied Physics Letters 1.4 (1962): 91-92.
  11. ^ Melngailis, I., A. J. Strauss, and R. H. Rediker. "Semiconductor diode masers of (In x Ga 1-x) As." Proceedings of the IEEE 51.8 (1963): 1154-1155.
  12. ^ Johnson, L. F., et al. "Continuous operation of a solid-state optical maser." Physical Review 126.4 (1962): 1406.

参考文献

書籍

  • The Solid State Maser: The Commonwealth and International Library: Selected Readings in Physics J. W. Orton, D. H. Paxman, J. C. Walling ISBN 9781483159270

特許

関連項目


固体メーザー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:54 UTC 版)

日本の発明・発見の一覧」の記事における「固体メーザー」の解説

1955年西澤潤一によって発明された。

※この「固体メーザー」の解説は、「日本の発明・発見の一覧」の解説の一部です。
「固体メーザー」を含む「日本の発明・発見の一覧」の記事については、「日本の発明・発見の一覧」の概要を参照ください。

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