余目町個室付浴場事件とは? わかりやすく解説

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余目町個室付浴場事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/28 04:55 UTC 版)

余目町個室付浴場事件(あまるめまちこしつつきよくじょうじけん)とは、山形県余目町(現:庄内町)で起きた、個室付浴場 (いわゆるソープランド) の営業について、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)違反に問われた事件[1][2]

概要

山形県知事が、個室付浴場 (いわゆるソープランド) の開業阻止のためにおこなった、児童遊園設置認可の違法性が争われた[1][2]

事案

訴訟に至るまでの経緯

1968年3月頃、被告会社の代表者は、個室付浴場の開業を目的として、同社の設立前に先立って、用地を購入した。

また、同年5月頃、山形県土木部建設課から建築確認を受けて、工事に着手した。

しかし、周辺住民による反対運動が起こり、山形県議会でも営業反対の議論がなされた。

若竹児童遊園

これを受けて、町及び県の当局も、個室付浴場の阻止を図ることとした。具体的に、同県は、児童福祉法上の児童福祉施設の周辺200 mのエリア内での営業を禁じる風営法4条の4の規定によって、個室付浴場の営業を阻止する方針を立てた。 同年6月、当該方針に基づいて、同町は個室付浴場の建設予定地から134.5 m離れた町有地(旧・余目町立常万小学校跡地)を児童遊園施設(若竹児童遊園)とする設置認可申請を行い、同県知事は認可を行った。

児童遊園施設の設置後、同年7月に、被告会社が設立され、同社は、同県知事から、公衆浴場法に基づく公衆浴場経営許可[注釈 1]を受けた。8月8日、被告会社は、個室付浴場を開業した。

翌8月9日、山形県公安委員会は、被告会社に対し、風営法4条の4違反を理由として60日間の営業停止処分を下した。また、被告会社は、風営法4条の4違反の罪で起訴された[2]

訴訟の経過

第一審(酒田簡易裁判所)は、被告会社を罰金7000円に処する判決を下した。

控訴審(仙台高等裁判所秋田支部)も、被告会社を有罪とした[2]

上告審(最高裁判所第二小法廷)は、原判決を破棄し、被告会社を無罪とした[1][2]

その後、被告会社は、県に対し、国家賠償請求訴訟を提起し、勝訴した[2]

上告審判決

最高裁判所判例
事件名

風俗営業等取締法違反事件

(余目町個室付浴場事件)
事件番号  昭和50(あ)24
1978年(昭和53年)6月16日
判例集 刑集第32巻4号605頁
裁判要旨
個室付浴場業(いわゆるトルコぶろ営業)の規制を主たる動機、目的とする知事の本件児童遊園設置認可処分(判文参照)は、行政権の濫用に相当する違法性があり、個室付浴場業を規制しうる効力を有しない。
第二小法廷
裁判長 栗本一夫
陪席裁判官 大塚喜一郎吉田豊本林譲
意見
多数意見 全会一致
意見 なし
反対意見 なし
参照法条
風営法4条の4第1項、風営法4条の4第3項、風営法4条の7第2項、風営法4条の8、児福法35条、児福法40条
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1978年6月16日、最高裁判所第二小法廷(裁判長:栗本一夫)は、原判決を破棄し、被告会社を無罪とする判決を下した。

最高裁判所は、「本来、児童遊園は、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操をゆたかにすることを目的とする施設(児童福祉法40条参照)なのであるから、児童遊園設置の認可申請、同認可処分もその趣旨に沿つてなされるべきものであ」るとし、被告会社による個室付浴場の営業の規制を主たる動機、目的とする、児童遊園施設の設置認可処分は、「行政権の濫用に相当する違法性があ」るとして、無効であると判示した[1]

脚注

注釈

  1. ^ 個室付浴場も、公衆浴場法に定める「公衆浴場」に当たるため、同法2条に基づく経営許可が必要となる。

出典

  1. ^ a b c d 最高裁判所第二小法廷判決 1978年(昭和53年)6月16日 刑集第32巻4号605頁、昭和50(あ)24、『風俗営業等取締法違反事件』。
  2. ^ a b c d e f 野呂, 充、康史, 下井、茂樹, 中原 ほか 編『ケースブック行政法』弘文堂、2022年4月15日、129-131頁。ISBN 9784335305207 



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