令和の日本列島改造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/24 14:54 UTC 版)
令和の日本列島改造(れいわのにほんれっとうかいぞう)は、自民党政権による政策。
概要
2025年1月6日に三重県伊勢市で行われた年頭記者会見で石破茂首相によって表明された。これにより地方創生を通じて東京一極集中を打破することを目指す。政府機関の地方移転を推し進めて、政府の職員は都市と地方の2拠点で活動する制度を設けるとのこと。首相は令和の日本列島改造とは、自身が師と仰ぐ田中角栄が唱えた日本列島改造論と対比させる。そして人口減少時代に合う令和の日本列島改造の必要性を訴える。首相自身は令和の日本列島改造を成功させなければ日本に将来は無いと言う危機感を強く持って進めるとしていた[1]。
2025年1月24日の通常国会で行われる演説で、令和の日本列島改造の実現に向けた5本柱が示される。ここでは産官学の地方への移転を推進するなどで、多極分散型の多様な経済・社会を構築することが訴えられる。5本柱の中では、男女の賃金格差是正に向けた法整備、デジタル技術を活用した生活拠点の整備なども掲げられる[2]。
令和の日本列島改造の看板政策の1つに2地域居住というのがある。これは東京などの都市部に住みながら地方にも拠点を置くという暮らし方である。これは発想の転換からであり、都市と地方という二項対立ではなく、都市に住む人も地方に住む人も相互につながり高めあうという考え方からである。人口減少と向き合って、地域間で人口を争奪するのではなく、人口を共有するという方向に舵を切ったということである[3]。
令和の日本列島改造で一番重要視されていたことは、東京一極集中を是正させるということであった。東京圏から地方への若者の流れを倍増させるということが目標として掲げられていたのであるが、この時代に人口を分散させるということには専門家からの批判が少なくなかった[4]。
野口悠紀雄によって1月29日の記事で令和の日本列島改造は批判される。野口は石破がこれからの日本は今後20年間で生産年齢人口が2割以上減少するため、従来の経済社会システムを見直して、中長期的に自走可能なシステムへの転換が必要としたことには賛同するものの、どのように変化させていくかに問題があるとする。石破はハードよりもソフトに重点を置いて日本列島を改造するとしていた。だが野口は石破の計画には日本が抱える社会的インフラが危機的な状況になっていることへの危機感が薄いとする。そして将来の日本は日本列島を改造することよりも、現在の環境を維持することが必要とする。維持するにしてもそのまま維持することは困難なために、縮小することが要求されるとする。高度経済成長の時期に整備されたインフラは耐用年数を超えており、適切な点検や補修が行われておらず老朽化が進行しているとする[5]。
朝比奈一郎は2月10日の記事で令和の日本列島改造には大きな可能性があるとしていた。石破が掲げる地方創生は、まさに朝比奈自身がこれまでに何度も論考を出して雑誌に寄稿していたことであった。朝比奈は2025年1月に石破と朝食をご一緒させていただく機会があり、その時に朝比奈は石破は真剣に地方創生に取り組もうとされており、真摯に議論をして良いものを実現させようとしているという姿勢を感じることができたとしていた[6]。
大前研一は、令和の日本列島改造では地方創生は実現できないと批判する[7]。
2025年4月には河合雅司が『「令和の日本列島改造」 に向けて』を発表する[8]。
脚注
- ^ “石破首相が「令和の日本列島改造」表明、地方創生で東京一極集中打破…「大連立」には慎重姿勢”. 読売新聞オンライン (2025年1月6日). 2025年9月24日閲覧。
- ^ “石破首相、「令和の日本列島改造」実現へ5本柱…施政方針演説の原案判明”. 読売新聞オンライン (2025年1月22日). 2025年9月24日閲覧。
- ^ “「今度失敗すると大変なことになる」…石破首相が地方創生「楽しい日本」作りでにじませた危機感”. 読売新聞オンライン (2025年2月17日). 2025年9月24日閲覧。
- ^ “【地方創生2.0】人口減少に伴う地方消滅を避けるための「集約政策」がなぜ打ち出されないのか? 政治的タブーと有識者会議の限界”. マネーポストWEB (2025年6月26日). 2025年9月24日閲覧。
- ^ “令和の列島改造?石破首相は老朽化した「日本の惨状」が分かっているか…地方の道路ガタガタ、都内でも水道管破裂、橋やトンネルもボロボロ”. 現代ビジネス (2025年1月28日). 2025年9月24日閲覧。
- ^ “石破総理の「令和の列島改造」、渋沢栄一の「合本主義」的発想で日本全国に令和流の企業城下町を作ることを期待 | JBpress (ジェイビープレス)”. JBpress(日本ビジネスプレス). 2025年9月24日閲覧。
- ^ “大前研一氏が嘆く“二番煎じ”だらけの石破首相の政策 地方創生は「夢のまた夢」、防災庁も「まともに機能しない」と考える理由”. マネーポストWEB (2025年2月13日). 2025年9月24日閲覧。
- ^ “[https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_chihousousei/yusikishakaigi/dai7/01_kawai.pdf 「令和の日本列島改造」 に向けて]”. 2025年9月24日閲覧。
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