万年丸とは? わかりやすく解説

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万年丸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/04 18:00 UTC 版)

万年丸萬年丸薩摩藩および広島藩幕末に保有した蒸気船

概要

1864年にイギリスで建造された鉄製蒸気スクリュー船で、1865年に薩摩藩が購入した[1]。原名は「キンリン[2](Kim Lin[1])」。代価は10万ドル(または7万5000ドル[2])で、購入元はグラバー商会であった[3]。1865年10月に薩摩藩が琉球貿易のため「キンリン」を購入する[4]とした際、トーマス・ブレーク・グラバーは3万ドルを融資した[5]。1866年5月、「キンリン」は「スコットランド」とともに薩摩藩の債務の担保とされた[5][6]

慶応2年6月11日1866年7月22日)、広島藩が薩摩藩より金5万両で購入した[7]}。

「万年丸」はトン数270トンで機関は80馬力であった[7][1]。大砲は4門[1]

慶応2年11月上旬(1866年11月 - 12月)、洋学修得のため江戸へ派遣される者50名ほどを運んだ[8]

慶応3年10月中旬(1867年11月)、「万年丸」は京都警備のため派遣される応変隊の乗る「八幡丸」を宇品から大坂へ曳航した[8]。次いで、討幕の密勅を携えた大久保利通らを大坂から三田尻まで運んだ[9]。11月下旬(1867年12月)には発機隊を宇品から大坂へ運んだ[10]

戊辰戦争時は輸送任務に従事した[9]。慶応4年3月26日1868年4月18日)には天保山沖観艦式に参加した[11]

脚注

  1. ^ a b c d 杉山伸也 1985, p. 431.
  2. ^ a b 『薩藩海軍史 中巻』826ページ
  3. ^ 杉山伸也 1985, p. 431, 439.
  4. ^ 杉山伸也「グラバー商会」456ページには「5万6000ドルで」とある。
  5. ^ a b 杉山伸也『明治維新とイギリス商人』129ページ
  6. ^ 杉山伸也「グラバー商会」457ページでは、この担保の話のところで「キリ・リン号(購入価格六万ドル)」とある。また、同460ページには1869年1月にジャーディン・マセソン商会が「キリ・リン」を引き取り、負債を解消した、とある。
  7. ^ a b 坂本卓也 2022, p. 41.
  8. ^ a b 坂本卓也 2022, p. 47.
  9. ^ a b 坂本卓也 2022, p. 48.
  10. ^ 坂本卓也 2022, p. 49.
  11. ^ 『日本海軍史 第1巻』pp.56 - 57

参考文献

  • 海軍歴史保存会(編)『日本海軍史 第1巻 通史第一・二編』海軍歴史保存会、1995年
  • 公爵島津家編纂所(編)『薩藩海軍史 中巻』原書房、1968年
  • 坂本卓也『幕末維新期大名家における蒸気船の導入と運用』佛教大学〈佛教大学研究叢書〉、2022年4月20日。ISBN 978-4-7924-1499-3 
  • 杉山伸也『明治維新とイギリス商人 トマス・グラバーの生涯』岩波書店、1993年、ISBN 4-00-430290-0
  • 杉山伸也 著「グラバー商会」、藤野保 編『九州と外交・貿易・キリシタン II』国書刊行会〈九州近世史研究叢書〉、1985年2月1日、401-540頁。 



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