マニプリとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > マニプリの意味・解説 

マニプリ【Manipuri】

読み方:まにぷり

インド東部マニプル地方伝承される舞踊題材としてはクリシュナラーダ物語が多い。


マニプリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 01:09 UTC 版)

広く信仰されているヒンドゥー教の神クリシュナとその恋人ラーダーと牛飼い達に扮して踊るマニプリ。

マニプリ英語: Manipuriマニプリ語: Jagoi Raas, Raas Jagoi)とは18世紀のマニプル王国の王、バギャチャンドラ英語版によって創作されたインド古典舞踊英語版のひとつである[1]。インド北東部のマニプル州で発展を遂げたヒンドゥー教ヴィシュヌ派に根差した舞踊であり、主にジャゴイ(円形の動き)、チョロム(雄叫び)、フェン・ラングロンインド武術英語版のひとつ)の動きで構成されている[2][3][4][5]

マニプリはマニプル語宝石を意味する語源の通り、乱反射する鏡や宝石を散りばめた円筒形の特徴的なスカートを身に着けた牛飼いたちとラーダー役の女性ダンサーと孔雀の羽や花飾りなどを身に着けたクリシュナ役の女性ダンサーがヴィシュヌの詩歌に合わせて華美に踊る舞踊である[1][6]

バラタナティヤムカタックカタカリと並ぶ4大インド古典舞踊のひとつとされているが[7]オディシを含めた5つに分類しているものや[8]クチプディ英語版サットリヤ英語版モヒニアッタム英語版を含めた8大インド古典舞踊として言及する場合もある[9]インド政府文化省英語版は、さらにチョウ英語版を加えた9つの舞踊をインドの文化として取り上げている[2]ノーベル文学賞を受賞したインドの詩人ラビンドラナート・タゴールによって紹介され、世界的に知られるようになった[10][11]

歴史

マニプリのルーツは他のインド古典舞踊同様、バラタ・ムニ英語版によって3世紀ごろに執筆されたとされているサンスクリット語の演劇論書『ナーティヤ・シャーストラ英語版』にあるとされている[12]。『ナーティヤ・シャーストラ』で規定された楽理体系や舞踊理論などが、口伝によって受け継がれるにつれてマニプル州で受け継がれてきた文化形態の影響を受けながら、独自の古典舞踊として進化していった[13][14]。18世紀初頭にマニプリ語で記述された『Bamon Khunthok(バラモンの移動)』によって初めてマニプルの古典舞踊についての言及がなされた[15][16]。『Bamon Khunthok』によれば15世紀、マニプルの王によってヴィシュヌ派の教義が取り込まれ、1704年、ピタンバル・チャライロンバ英語版によってヴィシュヌ派の教義はマニプル王国の国教として宣言された[16]。その後、ガリブ・ニワズ英語版によって、ヒンドゥー教の神であるクリシュナを崇拝するための宗教的なパフォーマンス(歌や踊り)にチャイタニヤの表現手法が取り込まれた[16]

その後、バギャチャンドラ英語版によってマニプリ王国の踊りの様式が記録・体系化され、マニプリとして確立されることとなった[17]。また、バギャチャンドラはラスリラ英語版と呼ばれるラーダーとクリシュナの物語をテーマとした舞踊を作曲し、クミルと呼ばれる円筒形の特徴的なスカートのデザインを行った[18]。その他、インド舞踊の基礎技術を綴った『Govinda Sangeet Lila Vilasa』を製作したのもバギャチャンドラではないかとされており、マニプリの形成と発展に重要な足跡を残した[18]

1891年、マニプル王国はイギリス帝国の植民地として併合され、マニプリは他のヒンドゥー教の宗教的パフォーマンス同様、無知で不道徳なものという扱いを受け、迫害を受けるようになった[19]。マニプリの踊りと歌はインパールシュリー・ゴビンダジー寺院英語版などの寺院にてかろうじて保護された[19]。こうした文化的差別はインド独立運動を行っていた活動家らによって解放されることとなった[19]。1919年、マニプリの舞踊を観劇し感銘をうけたラビンドラナート・タゴールサンティニケタン英語版にあるインド文化研究センターにマニプリの踊り手を職員として迎え入れ、後進に指導させることでマニプリの振興と普及を図った[19]

関連項目

脚注

  1. ^ a b ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. “マニプリとは”. コトバンク. 株式会社C-POT. 2022年7月17日閲覧。
  2. ^ a b Dance”. Indiaculture.nic.in. 2022年5月27日閲覧。
  3. ^ Chowdhurie, Tapati (2014年1月2日). “Gem of a journey”. The Hindu. https://www.thehindu.com/features/friday-review/dance/gem-of-a-journey/article5530221.ece 
  4. ^ https://www.esamskriti.com/essays/pdf/14-dec-manipuri-dance-a-journey.pdf
  5. ^ Manipuri dance elbowed out by Bharat Natyam, Odissi, Kathak”. 2022年8月11日閲覧。
  6. ^ インド政府ICCR派遣 インド7大古典舞踊マニプリ公演”. ミティラー美術館. NPO法人日印交流を盛り上げる会. 2022年8月1日閲覧。
  7. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. “インド舞踊とは”. コトバンク. 株式会社C-POT. 2022年7月9日閲覧。
  8. ^ 日本大百科全書. “インド舞踊とは”. コトバンク. 株式会社C-POT. 2022年7月9日閲覧。
  9. ^ Bishnupriya Dutt; Urmimala Sarkar Munsi (2010). Engendering Performance: Indian Women Performers in Search of an Identity. SAGE Publications. p. 216. ISBN 978-81-321-0612-8. https://books.google.com/books?id=uNaGAwAAQBAJ&pg=PA216 
  10. ^ Reginald Massey 2004, pp. 186–187
  11. ^ Naorem Sanajaoba (1988). Manipur, Past and Present: The Heritage and Ordeals of a Civilization. Mittal Publications. p. 131. ISBN 978-81-7099-853-2. https://books.google.com/books?id=-CzSQKVmveUC&pg=PA131 
  12. ^ Saryu Doshi 1989, pp. xv–xviii
  13. ^ Saryu Doshi 1989, pp. ix–xii, 5–6
  14. ^ Reginald Massey 2004, p. 179
  15. ^ Reginald Massey 2004, p. 179
  16. ^ a b c K Ayyappap Panikkar (1997). Medieval Indian Literature: Surveys and selections. Sahitya Akademi. pp. 325–329. ISBN 978-81-260-0365-5. https://books.google.com/books?id=KYLpvaKJIMEC&pg=PA327 
  17. ^ Reginald Massey 2004, pp. 184–186
  18. ^ a b Shovana Narayan (2011). The Sterling Book of Indian Classical Dance. Sterling Publishers. pp. 55–58. ISBN 978-81-207-9078-0. https://books.google.com/books?id=zLOiaGDLYOAC 
  19. ^ a b c d Reginald Massey 2004, pp. 185–186

参考文献



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「マニプリ」の関連用語

マニプリのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



マニプリのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのマニプリ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS