マイゼンハイマー錯体とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 自然 > 物質 > 化合物 > 反応中間体 > マイゼンハイマー錯体の意味・解説 

マイゼンハイマー錯体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/02 01:25 UTC 版)

マイゼンハイマー錯体(マイゼンハイマーさくたい、: Meisenheimer complex)とは有機反応化学で扱われる反応中間体のひとつで、電子求引基を持つ芳香環に求核剤が 1:1 の比で付加して生じるアニオン芳香族求核置換反応の SNAr 反応で中間体とされる。また、安定なが単離された例もある[1][2][3]。マイゼンハイマー付加体、ジャクソン・マイゼンハイマー錯体 (Jackson-Meisenheimer complex) とも呼ばれる。

歴史的背景

このタイプの付加体が知られるようになったのは1900年前後である。1886年にヤノフスキ Janovski はm-ジニトロベンゼンアルコールアルカリ溶液を混ぜたときに鮮やかな紫色を観察した。ロブリ・デ・ブロイン((Cornelis Adriaan) Lobry (van Troostenburg) de Bruyn)は1895年に、トリニトロベンゼン水酸化カリウムメタノール中で反応させたときに作られる赤色の物質を調べた。1900年にはJacksonとGazzoloは、トリニトロアニソールナトリウムメトキシドを反応させたときに得られる生成物がキノイド構造を持つと予想した。その生成物についてヤーコプ・マイゼンハイマー(Jakob Meisenheimer)は1902年、を加えるともとの基質に戻ることを見出した[4]

Scheme 1. マイゼンハイマー錯体

上式のように、3個の電子求引基によりマイゼンハイマー錯体の負電荷は非局在化し安定となる。

双性イオン

電子不足のベンゼン環を持つ4,6-ジニトロベンゾフロキサンは電子豊富な1,3,5-トリス(N-ピロリジニル)ベンゼンと反応し、Meisenheimer-Wheland錯体というべき双性イオンの付加体を得た。この付加体はNMRにより同定した[5]

Meisenheimer-Wheland錯体


脚注

  1. ^ G. A. Artamkina, M. P. Egorov, I. P. Beletskaya (1982). “Some aspects of anionic σ-complexes”. Chem. Rev. 82 (4): 427–459. doi:10.1021/cr00050a004. 
  2. ^ Francois Terrier (1982). “Rate and equilibrium studies in Jackson-Meisenheimer complexes”. Chem. Rev. 82 (2): 77–152. doi:10.1021/cr00048a001. 
  3. ^ IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book") (1997). オンライン版:  (2006-) "Meisenheimer complex".
  4. ^ Jakob Meisenheimer (1902). “Ueber Reactionen aromatischer Nitrokörper”. Liebigs Ann. 323 (2): 205–246. doi:10.1002/jlac.19023230205. 
  5. ^ C. Boga, E. Del Vecchio, L. Forlani, A. Mazzanti, P. E. Todesco (2005). “Evidence for Carbon-Carbon Meisenheimer-Wheland Complexes between Superelectrophilic and Supernucleophilic Carbon Reagents”. Angew. Chem., Int. Ed. 117 (21): 3349–3353. doi:10.1002/ange.200500238. 




マイゼンハイマー錯体と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「マイゼンハイマー錯体」の関連用語

マイゼンハイマー錯体のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



マイゼンハイマー錯体のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのマイゼンハイマー錯体 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS