ジェーン・リムーバーとは? わかりやすく解説

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ジェーン・リムーバー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/14 15:36 UTC 版)

ジェーン・リムーバー
Jane Remover
2025年4月
基本情報
別名
  • H8P8GE
  • High Zoey
  • dltzk[注釈 1]
  • leroy
  • venturing
生誕 (2003-09-26) 2003年9月26日(21歳)[1] アメリカ合衆国ニュージャージー州ニューアーク[2]
学歴 ニュージャージー大学英語版中退
ジャンル
活動期間 2017 – 現在
レーベル deadAir英語版
署名
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ジェーン・リムーバー: Jane Remover, 2003年9月26日 - )は、アメリカ合衆国ミュージシャンDJ音楽プロデューサー。2021年にデビューアルバムFrailty英語版』、2023年にセカンドアルバム『Census Designated英語版』、2025年にサードアルバム『Revengeseekerz英語版』をリリースした。

以前にはdltzkの名義で活動していたが、2022年に自身がトランス女性であることを公表した際、前名義をデッドネームとして取り消して、現在の名義を発表した(→詳細[3]。2024年9月には「私はこれといって代名詞にこだわらない[注釈 2]。」と語り[4]、2025年5月のInstagram上の投稿では自身をノンバイナリーと表現している[5]

ジェーンがleroy名義でリリースしたアルバム『Dariacore英語版』とその後の一連のリリースは、SoundCloud上のアーティストらに影響を与え、マイクロジャンル英語版を形成した。このマイクロジャンルは、アルバム名と同じく「dariacore英語版」と呼ばれている[6]

また、venturingの名義でも、2025年にアルバム『Ghostholding英語版』をリリースしている。[7]

略歴

双子の姉妹と共にニュージャージー州ニューアークで生まれ、幼少期を過ごした後、2011年頃にニュージャージー州クラーク英語版へ転居した[8][9]ニュージャージー大学英語版に1学期の間通っていたが、音楽活動に専念するために退学した[10]

活動

初期からdltzkまで

ジェーンの音楽制作への関心は2011年に遡る。当時はスクリレックスキル・ザ・ノイズ英語版ヴァーチャル・ライオット英語版など、ダブステップジャンルのアーティストらに影響を受け、『iMaschine』などのアプリを使ってスマートフォン上で音楽制作を楽しんでいた[11]。2010年代半ばにはGarageBandで様々なエレクトロニック・ダンス・ミュージックを制作するようになり、ポーター・ロビンソンなどのアーティストにも影響を受けた[12]。そして、2018年頃にFL Studioを入手し、トリッピー・レッドアール・スウェットシャツタイラー・ザ・クリエイターといったアーティストに影響を受けて、単なる電子音楽というよりはトラップ中心の音楽性へと転換する[12]。その後には楽曲提供を行うようになり、PlanetZeroやGraveem1ndといった複数のSoundCloudコレクティブの一員として活動する。この時、制作スタイルは徐々にデジコア英語版の志向を強めていった[12]

2019年後半、ジェーンはSoundCloudにおいてインディーズとしてのリリースをはじめた。ソロとして最初のリリースの1つである「What's My Age Again?」はTwitter上で注目を集めた[12]。デビューEPである『Teen Week英語版』は、dltzk[注釈 3]の名義で2021年2月26日にリリースされた[13]。同アルバムの楽曲「Homeswitcher」はkmoeをフィーチャリングしており、SoundCloudにおいてリリース後2週間以内に10万再生を達成した[6]

アルバム未収録のシングルがいくつかリリースされたのちに、2021年6月、デビュー・スタジオ・アルバム『Frailty』のリリースが発表された。「How to Lie」、「Pretender」、「Search Party」のシングルリリースの後、アルバム全体は2021年11月12日にdeadAir Records英語版からリリースされた[14]。同アルバムはPitchforkなどの様々なメディアから称賛され、同誌は『2021年のベスト・アルバム50選』において、47位にこのアルバムを選出している[15]

Jane Removerへの改名以降

2022年6月27日、シングル「Royal Blue Walls」のリリースに際し、ジェーンは「dltzkという名義は、私にとってしっくりきたことがない。」「それは私に、人生の忘れてしまいたいような時期のことを思い出させる。」と語り、新たな名義として『Jane Remover』を名乗った。また、1年前にリリースした『Teen Week』の内容について自身が違和感を覚えはじめたために、数週間以内にいくつかの楽曲を撤回するとも発表した[16][17]。この変更は2022年10月10日に行われ、EPから4曲が削除された。[13] Jane Remover名義での2枚目のシングル「Contingency Song英語版」は、2022年11月16日にリリースされた[18]

ジェーンは2022年11月26日から12月20日までBrakence英語版のHypochondriac Tourのオープニングアクトを務めた[19]。また、2023年3月から2024年12月まで、NTS Radio英語版の公式なレジデントDJ英語版として月1回・1時間のDJセット「Wait Watch This」を同局のセカンドチャンネルにおいて披露していた。[20]

2023年8月23日、ジェーンは同年10月20日にリリースされたセカンドアルバム『Census Designated』からのシングル「Lips」をリリースした[21]。9月20日には、アルバムの表題曲「Census Designated」がQuadeca英語版監督のミュージックビデオと共にリリースされた[22]Pitchforkは、ジェーンが以前『Teen Week』で行ったようなビットクラッシング英語版サンプリングの手法からこのアルバムは遠ざかっており、「シューゲイザーベッドルーム・ポップが熱狂的に突然変異」したかのような「ゆっくりとしたビルドアップと耳をつんざくようなノイズのクライマックスが特徴的なエクスペリメンタル・ロック」へと方向転換したと評し、またその変遷をエセル・ケイン英語版マイ・ブラッディ・ヴァレンタインスロウダイヴyeule英語版といったミュージシャンたちと比較した[23]

2024年2月、ジェーンは同じレーベルに所属するQuannnic英語版と共同ヘッドライナーでの「Designated Dreams」ツアーを開始した。アメリカ国内で全12公演を行い、前年にリリースされたジェーンの『Census Designated』とQuannnicの『Stepdream』という両アーティストのアルバムを互いにプロモーションした[24]

2024年8月から9月にかけて、ジェーンはJPEGMafia英語版Lay Down My Lifeツアー英語版のオープニングアクトを務めた[25]

2024年12月、ジェーンは初の単独ヘッドライナーツアーとなる「Turn Up or Die」ツアーを発表した。このツアーにはDazegxd、そして特別ゲストとしてd0llywood1とLucy Bedroqueが出演した[26]

2025年1月1日、3枚目のスタジオアルバム『Revengeseekerz』が、リードシングル英語版である「JRJRJR英語版」のリリースと共に発表された。2月26日にはシングル「Dancing with your eyes closed」がリリースされた。アルバムは2025年4月4日にリリースされ、ダニー・ブラウンのフィーチャリングを含む12曲が収録されている。

2025年5月16日、同年7月26日に開催を予定しているフジロックフェスティバル'25の2日目に出演・来日することが発表された[27]

leroy

leroyはジェーンの別のプロジェクトであり、この名義ではサンプリングを多用したEDMのマッシュアップ楽曲がリリースされていた。楽曲には2010年代のポピュラー音楽バイラル・ビデオ、さらにはジェーン自身の楽曲まで幅広いサウンドがサンプリングされていた。『Dariacore』という名前にナンバリングを加えたタイトルで複数のアルバムが制作され、その最初のアルバム英語版は2021年5月14日にリリースされている。

アルバムの名前はテレビアニメ『ダリア英語版』に由来するが、楽曲との関連性は、カバーアートにそのアニメのスクリーンショットが使われていることのみである。しかしこれによってか、一連の楽曲でジェーンが用いた個性的なサウンドに影響を受けた新しいアーティストたちは、別の子供向けアニメ[注釈 4]をカバーアートにして「dariacore」のハッシュタグを使い楽曲を投稿しはじめた[6]。このジャンルは、『The Fader英語版』のラファエル・ヘルファンドによって「ハイパーポップのばかげた風潮を、論理的な解決へと導いた」と評された[28]。2020年12月から2022年5月にかけて3枚のアルバムがリリースされた後[29]、2022年6月に『leroy & dltzk Memorial Service(leroyとdltzkの告別式)』と名付けられたDJミックスをリリースし、その終了を示唆した[30]

2023年7月21日、leroy名義で4枚目のアルバム『Grave Robbing』がリリースされ、アルバムはNTS Radioで初公開された[31]

2025年6月2日、シングル『XO TOUR LLIF3』がSoundCloud上でリリースされた。[32]

2025年6月18日、シングル『I DID THIS FOR US』がSoundCloud上でリリースされた[33]

venturing

venturingはジェーンの別のプロジェクトであり、それは当初、架空のインディー・ロック・バンドというコンセプトだった[34][35]。2022年から2023年にかけていくつかのトラックがSoundCloud上でリリースされたのち、2023年5月19日にデビューEPである『Arizona』を各音楽ストリーミングサービス上でリリースされた[36][37]

2024年12月5日、デビューアルバムとして『Ghostholding』が発表され、2025年2月14日にリリースされた[34][35]

ツアー

ヘッドライナー

  • Designated Dreams Tour (with Quannnic英語版) (2024)[24]
  • Turn Up or Die Tour (with Dazegxd, D0llywood1, and Lucy Bedroque) (2025)[26]

オープニングアクト

ディスコグラフィー

スタジオアルバム

  • 『Frailty』(2021年)
  • 『Census Designated』(2023年)
  • 『Revengeseekerz』(2025年)

脚注

  1. ^ 2022年に名義としての使用を停止。
  2. ^ ノンバイナリーを自認する人物を代名詞で記述する際、一人であってもthey/themとして表現することがある。(→en:Preferred gender pronoun
  3. ^ 「delete zeke(デリート ジーク)」の意。
  4. ^ おかしなガムボールローリー・ポーリー・オーリーなど[6]

参考文献

  1. ^ Jane Remover [@janeremover] (22 March 2021). “i share a birthday with serena williams”. 2023年2月12日時点のオリジナルよりアーカイブ. X(旧Twitter)より2023年2月12日閲覧.
  2. ^ Introducing: Jane Remover on her sophomore album 'Census Designated'.”. Coup De Main (2023年11月10日). 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月12日閲覧。
  3. ^ a b c d e f dltzk: Frailty Album Review” (英語). Pitchfork. 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月27日閲覧。
  4. ^ @janeremover”. Twitter. 2024年9月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月9日閲覧。
  5. ^ WOMEN OF THE UNDERGROUND PART 1”. Instagram. 2025年5月20日閲覧。
  6. ^ a b c d An 18-year-old invented a new genre of meme-heavy music called 'dariacore' that's like 'pop music on steroids'”. Insider. 2024年1月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月5日閲覧。
  7. ^ Jane Remover Announces New Venturing Album 'Ghostholding'” (2024年12月5日). 2024年12月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月13日閲覧。
  8. ^ Digicore Hero dltzk Is So Online It Hurts”. Pitchfork (2022年1月25日). 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月26日閲覧。
  9. ^ Dawson, Madelyn (2023年10月26日). “Jane Remover Reconstructs Herself Through Trust”. Paste. 2024年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年11月26日閲覧。
  10. ^ Jane Remover's outer space”. The FADER. 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月23日閲覧。
  11. ^ 5 Fast Facts with dltzk, the teenage digicore producer with adrenaline and heart” (英語). The FADER. 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月30日閲覧。
  12. ^ a b c d dltzk: A Life Before Teen Week”. Lyrical Lemonade (2021年2月23日). 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月26日閲覧。
  13. ^ a b Teen Week” (英語). SoundCloud. 2023年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月26日閲覧。
  14. ^ Frailty”. Bandcamp. 2022年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月26日閲覧。
  15. ^ The 50 Best Albums of 2021”. Pitchfork (2021年12月7日). 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月26日閲覧。
  16. ^ Hussey, Allison (2022年6月27日). “Jane Remover Shares New Songs: Listen” (英語). Pitchfork. 2025年2月12日閲覧。
  17. ^ DeVille, Chris (2022年6月27日). “Jane Remover – 'Royal Blue Walls' & 'Cage Girl'” (英語). ステレオガム. 2025年2月12日閲覧。
  18. ^ Helfand, Raphael (2022年11月17日). “Song You Need: Jane Remover's soaring shoegaze sadness” (英語). The Fader英語版. 2025年2月12日閲覧。
  19. ^ a b @brakence (12 September 2022). “The Hypochondriac Tour. My first headline. [...]”. 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ. X(旧Twitter)より2025年5月26日閲覧.
  20. ^ Radio, N. T. S.. “MEET OUR NEW RESIDENTS FOR 2023 | NTS” (英語). NTS Radio. 2024年12月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月10日閲覧。
  21. ^ Jane Remover Announces Album, Shares New Song "Lips": Listen”. Pitchfork (2023年8月23日). 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月23日閲覧。
  22. ^ Minsker, Evan (2023年9月20日). “Jane Remover Shares Video for New Song "Census Designated": Watch”. Pitchfork. オリジナルの2024年1月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20240108125607/https://pitchfork.com/news/jane-remover-shares-video-for-new-song-census-designated-watch/ 2023年9月20日閲覧。 
  23. ^ Press-Reynolds, Kieran (October 20, 2023). “Census Designated”. Pitchfork. オリジナルのOctober 20, 2023時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231020152734/https://pitchfork.com/reviews/albums/jane-remover-census-designated/ 2024年6月6日閲覧。. 
  24. ^ a b Minsker, Evan (October 31, 2023). “Jane Remover Announces 2024 U.S. Tour”. Pitchfork. オリジナルのOctober 31, 2023時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231031174445/https://pitchfork.com/news/jane-remover-announces-2024-us-tour/ 2024年6月6日閲覧。. 
  25. ^ a b Tour news: Bob Dylan, Bobby Weir & Wolf Bros, Goose, Eagles @ Sphere, JPEGMAFIA, Don Toliver, Nicole Atkins, more”. BrooklynVegan英語版 (2024年7月15日). 2024年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月11日閲覧。
  26. ^ a b Jane Remover Is Taking Her Eclectic Sound On The Road With Tour Dates” (英語). UPROXX (2024年12月10日). 2024年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月10日閲覧。
  27. ^ FUJI ROCK FESTIVAL’25|NEWS”. FUJI ROCK FESTIVAL '25. 2025年5月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月26日閲覧。
  28. ^ Listen to leroy's final mix” (英語). The FADER. 2024年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月28日閲覧。
  29. ^ Music | Jane Remover” (英語). Bandcamp. 2023年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月15日閲覧。
  30. ^ Jane Remover — leroy & dltzk Memorial Service (for Goop Week - 6/26/22)” (英語). YouTube. 2023年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月15日閲覧。
  31. ^ Wait Watch This w/ Jane Remover: Leroy Grave Robbing Special” (英語). NTS. 2023年8月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月30日閲覧。
  32. ^ XO TOUR LLIF3” (2025年6月2日). 2025年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月3日閲覧。
  33. ^ (英語) I DID THIS FOR US, https://soundcloud.com/c0ncernn/i-did-this-for-us 2025年6月24日閲覧。 
  34. ^ a b Jones, Abby (2024年12月5日). “Jane Remover Announces New Venturing Album Ghostholding”. ステレオガム. 2024年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月7日閲覧。
  35. ^ a b Sacher, Andrew (2024年12月5日). “Jane Remover announces debut album by fictional band Venturing”. BrooklynVegan英語版. 2024年12月7日閲覧。
  36. ^ venturing” (英語). SoundCloud. 2025年1月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月9日閲覧。
  37. ^ Arizona EP - Album by venturing”. Apple Music (2023年5月19日). 2025年1月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月9日閲覧。



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