クルチウス転位とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 化学 > 化学反応 > 転位 > クルチウス転位の意味・解説 

クルチウス転位

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/06 15:21 UTC 版)

クルチウス転位 (クルチウスてんい、Curtius rearrangement) は有機化学における転位反応の一つで、酸アジドを加熱することにより、窒素の発生を伴いながらイソシアネートを生成する反応である[1][2]テオドール・クルチウスが1890年に報告した。

かつては酸アジドの合成法として酸塩化物アジ化ナトリウムとの反応、酸ヒドラジドと亜硝酸誘導体との反応などが用いられていた。近年ではジフェニルリン酸アジド(DPPA)の開発により、単にカルボン酸とDPPAを混合して加熱するだけでよく、実験操作の安全性・簡便性は大幅に向上した。

クルチウス転位の生成物は反応性に富んだイソシアネートであり、これを酸で処理すれば一級アミンに、tert-ブチルアルコールベンジルアルコールを加えればそれぞれBoc基Z基で保護されたアミンがワンポットで得られてくる[3][4][5]


カルボン酸としては一級・二級・三級アルキルカルボン酸、アリールカルボン酸などが使用できる。この時立体化学は完全に保持され、カルボン酸から一炭素減少したアミンが得られることになる[6][7][8]。他の方法では作りにくいアミンが合成できるため、合成法としての価値が高い。

クルチウス反応の機構は一般に、窒素分子 (N2) が脱離してニトレンが発生し、置換基(R)が転位する二段階機構、あるいは窒素分子の脱離と転位が協奏的に起こる一段階機構のいずれかである。

脚注

  1. ^ Curtius, T. (1890), Ber. 23: 3023 
  2. ^ Curtius, Th. (1894). “20. Hydrazide und Azide organischer Säuren I. Abhandlung”. Journal für Praktische Chemie 50 (1): 275–294. doi:10.1002/prac.18940500125. ISSN 00218383. 
  3. ^ am Ende, David J.; DeVries, Keith M.; Clifford, Pamela J.; Brenek, Steven J. (1998). “A Calorimetric Investigation To Safely Scale-Up a Curtius Rearrangement of Acryloyl Azide”. Organic Process Research & Development 2 (6): 382–392. doi:10.1021/op970115w. ISSN 1083-6160. 
  4. ^ Lebel, Hélène; Leogane, Olivier (2005). “Boc-Protected Amines via a Mild and Efficient One-Pot Curtius Rearrangement”. Organic Letters 7 (19): 4107–4110. doi:10.1021/ol051428b. ISSN 1523-7060. 
  5. ^ Jessup, P. J.; Petty, C. B.; Roos, J.; Overman, L. E. (1988). "1-N-Acylamino-1,3-dienes from 2,4-pentadienoic acids by the Curtius rearrangement: benzyl trans-1,3-butadiene-1-carbamate". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, 6, p. 95
  6. ^ Shioiri, T.; Yamada, S. (1990). "Diphenyl phosphorazidate". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, 7, p. 206
  7. ^ Shioiri, Takayuki; Ninomiya, Kunihiro; Yamada, Shunichi (1972). “Diphenylphosphoryl azide. New convenient reagent for a modified Curtius reaction and for peptide synthesis”. Journal of the American Chemical Society 94 (17): 6203–6205. doi:10.1021/ja00772a052. ISSN 0002-7863. 
  8. ^ Ninomiya, K.; Shioiri, T.; Yamada, S. (1974). “Phosphorus in organic synthesis—VII”. Tetrahedron 30 (14): 2151–2157. doi:10.1016/S0040-4020(01)97352-1. ISSN 00404020. 

外部リンク

関連項目


クルチウス転位

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/14 02:36 UTC 版)

ジフェニルリン酸アジド」の記事における「クルチウス転位」の解説

「クルチウス転位」を参照 カルボン酸混合して生成したアジド加熱する転位起こしイソシアネート得られる。項目クルチウス転位に詳しい。

※この「クルチウス転位」の解説は、「ジフェニルリン酸アジド」の解説の一部です。
「クルチウス転位」を含む「ジフェニルリン酸アジド」の記事については、「ジフェニルリン酸アジド」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「クルチウス転位」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



クルチウス転位と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「クルチウス転位」の関連用語

クルチウス転位のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



クルチウス転位のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのクルチウス転位 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのジフェニルリン酸アジド (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS