カーダー-パリージ-ザン方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/06/28 21:31 UTC 版)
カーダー-パリージ-ザン方程式 (Kardar-Parisi-Zhang equation) は、メヘラーン・カールダール (Mehran Kardar)、ジョルジオ・パリージ (Giorgio Parisi)、イー・チャン・ジャン (Yi-Cheng Zhang) らによって提案された[1]、ランジュバン型の非線形の確率偏微分方程式 (stochastic partial differential equation, SPDE) であり、結晶の界面成長を記述する。しばしば提案した三人の頭文字を取って、KPZ 方程式と略記される。
は、時刻
での
における界面の高さを表し、
は表面張力、
は非線形効果の強さ、
は確率的なノイズを表す。 また、ノイズ項
は次の条件を満たす白色ガウスノイズ (Gaussian noise) であるとし、界面の高さ
は、オーバーハングを無視するため、
に対する一価関数であることを仮定する。
ここで は角括弧で囲まれた物理量の配位空間での平均を表し、
はディラックのデルタを表す。また
はノイズの強さである。
目次
方程式の構成
右辺第二項の非線形項 がなければ、方程式はエドワーズ-ウィルキンソン方程式 (Edwards-Wilkinson equation, EW eq.)[2] になる。 界面の傾きを
とし、その方向に速度
で界面が成長すると考えると、微小時間
の間に、界面の高さは
だけ変化する。
と置き換えられることに注意すれば、
とテイラー展開することができる。展開の第一項は座標変換によって消去することができるので、最も主要な項は第二項の非線形項であり、これが KPZ 方程式の非線形項を与える。
方程式の変形
コール-ホップ変換 (Cole-Hopf transformation)
高さの関数 を関数
を用いて、
と変換すると、KPZ 方程式は以下のように書き直される (対数の微分
を計算してから
を両辺に掛ける)。
これは時間依存するランダム・ポテンシャル中での拡散方程式になっている。 この方程式の解は形式的に、以下の形に書ける。
上記の経路積分より、 は、
と
を結ぶ、
次元空間上の方向付きの高分子 (directed polymer, DP) のすべての配位に対するボルツマン因子の和であると見なせる[3][4]。
バーガース方程式 (Burgers' equation)
別の有用な変換として、ベクトル場 を用いて、界面の高さ
を
で書き換えると、方程式は以下の形になる (KPZ 方程式の各項について
を左から掛ける)。
ここで と置けば、これは
を渦なしの速度場としたときの、バーガース方程式にノイズを加えたものになっている。 あるいは
を改めて
に置き換えてもバーガース方程式の形に変形できる。
スケーリング
[要出典] KPZ 方程式をバーガース方程式へ変換した後、時間と空間に対し適当なスケール変換を施すと、
ノイズ について、
の関係を仮定したことに注意すれば、デルタ関数について、
と変換されるので、バーガース方程式は、
となる。ここで の項はスケール変換に対して不変であるとすると、指数
,
について、
が成り立つことになる。
参考文献
- ^ M. Kardar, G. Parisi, and Y.-C. Zhang, Dynamic Scaling of Growing Interfaces, Physical Review Letters, Vol. 56, 889 - 892 (1986). APS
- ^ S. F. Edwards, D. R. Wilkinson, The surface statistics of a granular aggregate, Proceedings of the Royal Society Series A 381, 17–31(1982). RSPA
- ^ David A. Huse, Christopher L. Henley, and Daniel S. Fisher, Physical Review Letters, Vol. 55, 2924 (1985). APS
- ^ Mehran Kardar and Yi-Cheng Zhang, Scaling of Directed Polymers in Random Media , Physical Review Letters, Vol. 58, 2087-2090, (1987). APS
カーダー・パリージ・ザン方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/30 07:16 UTC 版)
カーダー・パリージ・ザン方程式(英: Kardar–Parisi–Zhang equation) は、メヘラーン・カールダール、ジョルジョ・パリージ、イー・チャン・ジャン (Yi-Cheng Zhang) らによって提案された[1]、ランジュバン型の非線形の確率偏微分方程式であり、結晶の界面成長を記述する。しばしば提案した三人の頭文字を取って、KPZ方程式と略記される。
は、時刻 での における界面の高さを表し、 は界面張力、 は非線形効果の強さ、 は確率的なノイズを表す。ノイズ項 は、
を満たすホワイトノイズ、特にガウシアンノイズであるとする。ここで は角括弧で囲まれた物理量の配位空間での平均を表し、 はディラックのデルタを表す。また はノイズの強さである。
界面の高さ は、 に対する一価関数であることを仮定する。この仮定により、KPZ方程式で記述される界面は巨視的にはオーバーハングを持たない。
方程式の構成
右辺第2項の非線形項 がなければ、方程式はエドワーズ・ウィルキンソン方程式 (Edwards–Wilkinson equation; EW eq.)[2] になる。 界面の傾きを とし、その方向に速度 で界面が成長すると考えると、微小時間 の間に、界面の高さは だけ変化する。 と置き換えられることに注意すれば、
とテイラー展開することができる。展開の第1項は座標変換によって消去することができるので、最も主要な項は第2項の非線形項であり、これが KPZ方程式の非線形項を与える。
方程式の変形
コール・ホップ変換
高さの関数 を関数 を用いて、 と変換すると、KPZ方程式は以下のように書き直される[注釈 1]。この変換をコール・ホップ変換という。
これは時間依存するランダム・ポテンシャル中での拡散方程式になっている。 この方程式の解は形式的に、以下の形に書ける。
上記の経路積分より、 は、 と を結ぶ、 次元空間上の方向付きの高分子 (directed polymer; DP) のすべての配位に対するボルツマン因子の和であると見なせる[3][4]。
バーガース方程式への変換
別の有用な変換として、ベクトル場 を用いて、界面の高さ を で書き換えると、方程式は以下の形になる[注釈 2]。
ここで と置けば、これは を渦なしの速度場としたときの、バーガース方程式にノイズを加えたものになっている。 あるいは を改めて に置き換えてもバーガース方程式の形に変形できる。
スケーリング
[要出典] KPZ方程式をバーガース方程式へ変換した後、時間と空間に対し適当なスケール変換を施すと、
ノイズ について、 の関係を仮定したことに注意すれば、デルタ関数について、
と変換されるので、バーガース方程式は、
となる。ここで の項はスケール変換に対して不変であるとすると、指数 , について、 が成り立つことになる。
注釈
出典
参考文献
- Kardar, M.; Parisi, G.; Zhang, Y.-C. (1986-3-3). “Dynamic Scaling of Growing Interfaces”. Physical Review Letters (American Physical Society) 56: 889–892. doi:10.1103/PhysRevLett.56.889.
- Edwards, S. F.; Wilkinson, D. R. (1982-5-8). “The surface statistics of a granular aggregate”. Proceedings of the Royal Society Series A (the Royal Society) 381: 17–31. doi:10.1098/rspa.1982.0056.
- Huse, David A.; Henley, Christopher L.; Fisher, Daniel S. (1985-12-8). “Huse, Henley, and Fisher respond”. Physical Review Letters (American Physical Society) 55: 2924. doi:10.1103/PhysRevLett.55.2924.
- Kardar, Mehran; Zhang, Yi-Cheng (1987-5-18). “Scaling of Directed Polymers in Random Media”. Physical Review Letters (American Physical Society) 58: 2087–2090. doi:10.1103/PhysRevLett.58.2087.
関連項目
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