アスター 30とは? わかりやすく解説

アスター (ミサイル)

(アスター 30 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/21 03:17 UTC 版)

アスター30

アスター(ASTER)は、ユーロサム(現在はMBDA)によって開発された対空ミサイル。比較的射程が短いかわりに機動性が高いアスター15と、広域防空を担うアスター30とがある[1][2]

来歴

フランス政府は、1980/81年度で、ヨーロッパ各国による対空ミサイルの共同開発に関する提案依頼書 (RFPを提示した。これに応じてアエロスパシアル社が提案したのが本ミサイルであり、1986年に、マトラ社のSAMATを下して選定された。1987年6月17日からは、フランスのCEL射場において試射が開始された[1]

1988年10月には、本ミサイルの共同開発についてフランスとイタリアの国防大臣が合意し、1989年12月にはイギリス海軍も次期防空システムとして本ミサイルを選定した。1995年8月には、アスター30による誘導飛行(シーカーではなくアップリンク指令)が開始された[1]。1997年12月には、標的への実射試験を成功させた[3]

設計

SAAMのシルヴァーVLS
 
SAMP/Tの地上発射機

本ミサイルは、ダートと呼ばれるミサイル本体を共通化しつつ、装着する固体ロケットブースターの大小によってファミリー化して開発された。艦対空ミサイルとして搭載される場合は、垂直発射式のシルヴァーが用いられる[2]

ミサイルの誘導方式としては、中間航程では慣性航法と艦上多機能レーダーからのアップリンクによる指令誘導、終末航程ではアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導方式が採用されている。また終末航程での飛翔制御方式としては、従来の空力制御(Pilotage Aérodynamique Fort, PAF)に加えて、機体重心付近のサイドスラスターによる制御(Pilotage In Force, PIF)も併用されており、高旋回性の目標に対しても優れた追従性を発揮できる[2]

2018年現在では、下記の2種類が運用されている[4]

アスター15
短距離版として、個艦防空ミサイル・システムであるSAAM(Système Anti-Air Missile)で用いられる[1]
アスター30
中距離版として、艦隊防空ミサイル・システムであるSAMP/N(Système sol-air moyenne-portée naval; 後にPAAMSに発展)および地対空ミサイル・システムであるSAMP/Tフランス語版イタリア語版Système sol-air moyenne-portée terrestre)で用いられる[1]

また、長射程版のアスター45と、弾道弾迎撃ミサイルとしてのアスター60も検討されたものの、これらは実現していない[1]。ただし弾道弾迎撃ミサイルについては、アスター30を発展させたアスター30ブロック1NTとして実現した[4]。また全面的に改設計して、運動エネルギー弾に二段式ブースターを組み合わせたアスター30ブロックIIの開発も進められている[2]

諸元表

アスター15 アスター30
全長 4.2m 5.2m
直径 0.18m
重量 310kg 450kg
弾頭 調整破片弾頭
射程 1.7-30 km 3-120 km
射高 10 km 20 km
推進方式 2段式固体燃料ロケット
誘導方式 中途航程:慣性航法指令誘導
終末航程:アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導
飛翔速度 マッハ3 マッハ4.5

採用国

艦載型

 イギリス海軍

 イタリア海軍

 フランス海軍

 ギリシャ海軍

 サウジアラビア海軍

 シンガポール海軍

 アルジェリア海軍

 モロッコ海軍

 エジプト海軍

 カタール海軍

地上型(SAMP/T)

脚注

出典

  1. ^ a b c d e f Friedman 1997, pp. 399–401.
  2. ^ a b c d 多田 2015, p. 72.
  3. ^ GlobalSecurity.org 2019.
  4. ^ a b 井上 2018.
  5. ^ 『世界の艦船増刊 第1016集 世界の海軍 2024-2025』海人社、2024年3月14日、116頁。 
  6. ^ Commodore Stephen Saunders RN, ed (2015) (英語). Jane's Fighting Ships 2015-2016. Jane's Information Group. p. 7. ISBN 978-071063143-5 
  7. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 350. ISBN 978-1-032-50895-5 
  8. ^ IISS 2024, p. 94.
  9. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 288. ISBN 978-1-032-50895-5 

参考文献

  • Friedman, Norman (1997), The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems 1997-1998, Naval Institute Press, ISBN 978-1557502681 
  • The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) (英語). The Military Balance 2024. Routledge. ISBN 978-1-032-78004-7 
  • 井上孝司「欧州諸国 (特集 最新の洋上防空システム)」『世界の艦船』第889号、海人社、86-91頁、2018年12月。 NAID 40021712978 
  • 多田智彦「世界の艦載兵器」『世界の艦船』第811号、海人社、2015年1月。 NAID 40020297435 
  • 多田智彦「現代の艦載兵器(第2回)対空ミサイル(その2)日米以外の西側諸国」『世界の艦船』第917号、海人社、141-147頁、2020年2月。 NAID 40022100632 
  • GlobalSecurity.org (2019年). “Aster 15 / Aster 30”. 2019年1月8日閲覧。

外部リンク


アスター30

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/13 09:37 UTC 版)

アスター (ミサイル)」の記事における「アスター30」の解説

中距離版として、艦隊防空ミサイル・システムであるSAMP/N(Système sol-air moyenne-portée naval; 後にPAAMS発展)および地対空ミサイル・システムであるSAMP/T(Système sol-air moyenne-portée terrestre)で用いられる

※この「アスター30」の解説は、「アスター (ミサイル)」の解説の一部です。
「アスター30」を含む「アスター (ミサイル)」の記事については、「アスター (ミサイル)」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「アスター 30」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「アスター 30」の関連用語

アスター 30のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



アスター 30のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアスター (ミサイル) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのアスター (ミサイル) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS