P. D. Q. バッハ 音楽作品

P. D. Q. バッハ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 23:55 UTC 版)

音楽作品

ピーター・シックリー「教授」は、P. D. Q. バッハについて、「ヨハン・クリスティアン・バッハの独自性、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの尊大さ、ヨハン・クリストフ・フリードリヒ・バッハの無名さを兼ね備えている」と述べている。そして最も顕著な特徴は「躁病盗作」であると述べている。これは、P. D. Q. バッハがオリジナルの作品をほとんど作っておらず、他の作曲家の作品を盗用し、主に滑稽な形で編曲していることによる。オーケストラ編成で奏される楽曲においても、通常オーケストラで用いられないトロンブーン(後述)、スライドホイッスル、ハードアート、ラッソ・ダモーレ、カズーといった楽器を用いる傾向があり、さらには風船自転車といった、楽器ではないようなものまで楽器として扱っている。また、ブルックリンのイフィゲニアにおいて、ホルンを組み立て途中のままの段階で吹奏させるといった、伝統的楽器に対する尋常ではない奏法も要求している。声楽パートに対しても、歌う以外に、咳きこんだり、いびきをかいたり、めそめそしたり、笑ったり、叫んだりすることが求められている。大序曲『1712年』においては、曲の後半(9分30秒付近)で管楽器パートが一斉に「ブレス」(息継ぎを更に声付きで誇張)をする、といった手法まで登場する。

バロックや古典派の音楽に対する揶揄以外にも、P. D. Q. バッハはロマン派や近代の作曲に対しても揶揄しており、時にはカントリー・ミュージックエディプス・テックス)やラップクラシックのラップ)に及ぶこともある。フリッツの上のアインシュタインへの序曲においては、ミニマル音楽の語法で曲が進行する間、1人の男性にいびきをかくように指示している。

ピーター・シックリーは、P. D. Q. バッハの作曲様式を3期に分けて分析している。それぞれ、初期飛び込み期(Initial Plunge)、ずぶ濡れ期(Soused Period)、後悔期(Contrition)である。

初期飛び込み期

  • ピアノ独奏のためのトラウマライ[注釈 2]
  • 敵対する2つの楽器グループのためのエコー・ソナタ
  • 潜水夫のフルートと2本のトランペットと弦楽器のための大協奏曲

ずぶ濡れ期

  • ホルンとハードアートのための協奏曲
  • 協奏交響曲
  • 倒錯曲(ペルヴェルティメント)
  • セレヌード
  • ピアノとオーケストラの対決協奏曲
  • エロティカ変奏曲
  • 不自然な一幕物オペラ『ヘンゼルとグレーテルとテッドとアリス
  • グラウンド一周の芸術
  • バスーンとオーケストラの対決協奏曲
  • ぞっとするほどの数の管楽器と打楽器のための大セレナーデ

後悔期

その他

また、教会からの破門状とともに発見された爆笑ミサ曲(Missa Hilarios, S. N2O)[注釈 4]や、J.S.バッハのお忍び新大陸紀行を題材とした大序曲『1712年』などの作品も発見されている。

これらの作品には、シックリー作品番号S. が付されているが、作曲年代の順番にという訳ではなく、作品に見合った番号を付ける習慣がある、とされる。例を挙げると、『爆笑ミサ曲』の作品番号(S. N2O)は、「笑気ガス」の化学式となっている、といったものである。

使用楽器

トロンブーン英語: Tromboon)は、ダブルリード木管楽器の一種である。木管楽器であるファゴット(バスーン)のリードおよびボーカルを、金管楽器であるトロンボーンに取り付けたものである。名前の由来は、「trombone」(トロンボーン) + 「bassoon」(バスーン)である。コミカルな音がする。


注釈

  1. ^ ドイツの実在都市「バーデン=バーデン」のもじり。
  2. ^ 妻の名を付けた『ベティー・スー・バッハの音楽帳』("NOTEBOOK FOR BETTY-SUE BACH" S.13 going on 14)の一曲。『音楽帳』にはクーラントならぬ「Corrate」などがある
  3. ^ タイトルはハイドンの『四季』から、音楽はヘンデルのオラトリオのパロディ
  4. ^ 「バーゲン・カウンターテナー、バッソ・ブロット(酔いどれバス)と合唱と管弦楽のための」と明記されており、アンドルー・ロイド・ウェバーミュージカルのパロディーとなっている。ミサ曲の典礼文は申し訳程度で、タイトル通りの滑稽なオリジナルの英語の歌詞と楽器法が特徴。Rice University's Digital Scholarship Archiveで全曲が視聴可能。

出典

  1. ^ Schickele, Peter. The Definitive Biography of P.D.Q. Bach, page 3: "the night of the 31st of March, 1742," "giving birth to his twenty-first child," "at one minute after midnight"
  2. ^ Schickele, Peter. The Definitive Biography of P.D.Q. Bach, page 110
  3. ^ 岡林典子, ガハプカ奈美 & 山野てるひ 2012, p. 141.
  4. ^ 岡林典子, ガハプカ奈美 & 山野てるひ 2012, p. 142.


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